第十六章 ㉙
文字数 1,212文字
時間枠が一致するので、
交互に読まれることをすすめる)
「あぁ。こういうのが本当の友達なんだ
なぁ。どんな時でも、どんな状態でも
想ってくれる……」。
しーちゃんと手をつないで歩きながら、
私は思いました。
じわっと涙が……。
そんな私に、しーちゃんが言ってくれ
ました。
前を向いたまま、自然的に。
「マコッち、泣きたい時は泣きな。
うちの前じゃ何の我慢もする必要ない
からな!」って……。
瞬時に、崩壊です…。
寒い冬道を、涙ボロボロで、姉のような
親友であるしーちゃんに手を引かれて
歩きました。
そして……。
その、駅の改札を出てすぐの大通り沿いの
歩道を4,5分歩いていたのですが、
道沿いのお洒落な1軒のお店の前で、
しーちゃんは足を止めました。
「マコッち、今日は、ここ!!
ここで、ランチだよ!!」と、お店を
指差す、しーちゃん。
変わってないなぁと思いました。
あの頃と同じだなぁ……って。
だって、薄々予想はしてましたけど、
やっぱり、そのお洒落なお店は、
カフェとか喫茶店とかイタリアンとか
じゃなくて、ラーメン屋さんでしたから
……。
人の食習慣は、どんなに時間が経っても
変わらないモノですねぇ。
「やっぱり、ラーメンだったんだ!
しーちゃんのことだから、そうだろうと
思ってたよ。
今でも、週何回かのペースで食べてんの
??」と訊こうと思った矢先に、しーちゃん
が自慢げに言うのです。
「ここ、『くるりんぱ』。
そこの……、そう上の、あの看板良いで
しょ?
私が作ったんだ!」。
????????
私が作ったって言った……?
しーちゃんが?
ど・う・い・う・こ・と?
思考がフリーズしかけましたが、
そんな私に構わず、しーちゃんは、
お店の扉を勢いよくガラッと開けて、
中に入っていきます。
「アッ!!」と……。
止めようとしましたが、もう、中に…。
『準備中』っていう札が扉に掛かってん
のに。
ここに至っても、まだ私は、事態を
読み込めていませんでした。
衝撃の事実に勘付いてもいませんでした…。
そんな私……、歩道に立ち尽くす私に、
お店の中から半身だけ出して、しーちゃんが
「マコッち、何してんの!?
早く、入って入ってッ!!」と。
「だって…、準備中になってるよ」と言う
私に、しーちゃんは、さも不思議そうな感じ
の表情を見せ……、そして、あぁと何かに
気づいたかのような顔になり、にかッと
笑います。
そして、言うのです。
「そうか、ゴメン、ゴメン!
マコッちに、最初に言っておけば良かった
よね?
ここ、旦那の……、つまりウチらでやって
いる店だから」。
えぇぇ!?
と、路上で叫んでいました。
ラーメンマニアだったしーちゃん。
その、しーちゃんは、何と、ラーメン屋
のオーナー夫人になっていたのです!!
あの頃、日本各地のラーメン店を制覇して
いた『夜の女』が、今では、ラーメンを
提供する側にいる……!?
驚きましたが、同時に、しっくりきた感
もありました。
「ヤったなぁ、しーちゃん!」って…。
(著作権は、篠原元にあります)