第十六章 ⑭

文字数 2,466文字

新婦も泣いている。

小学校時代からの親友の話で、
まさに、あの頃のこと、そして、
あの再会の日のことが、津波のように
押し迫って来る。
どれもこれも、本当に、大切で、
今となっては愛おしい想い出だ……。
幸せな記憶だ。

それに、新婦自身が知らなかった
【大事な真実】も、不動みどりは、
『新郎新婦紹介』で明かしてくれた。

それは、新婦にとって、まさに、
記憶の中の欠けたピースが完全に
埋まった瞬間、でもあった。



~ここからは、メインテーブルに座る
       新婦に、語ってもらう~


私たちの結婚式、そして披露宴には、
葦田こしまちゃん、丸瀬やよいちゃんも、
約束通りに、列席してくれています。

あの後……、つまり、都和ちゃんの話を
初めて聞いたあの日の翌日、すぐに、
二人あての招待状を作り、手書きで
メッセージも書いて、送ったのですが
……。
それから、すぐに、二人からは、それぞれ
個性あふれる『返信はがき』が戻って
きました。
こしまちゃんは、かわいらしい
イラスト付き……。
おそらく、私と義時君の。
一瞬、「えッ?!何で、彼の顔知って
んの!?」と思いましたけど……。
考えてみれば、みどりちゃんとこしま
ちゃんのお家、つまり、葦田家と
栄家は、もともと近所だったわけで、
しかも、みどりちゃんと義時君が
『幼馴染』だったってことは、こしま
ちゃんも、義時君と面識があって当然
です。
それに、今の彼の顔は、みどりちゃんが
メールで写真を送ったのかもしれないし
……。
私は、そう考えました。

で、こしまちゃん作の『私たちの似顔絵』
を眺めながら、笑ってしまいました。
本当に、婚約者の特徴をしっかりと掴んで
いたからです。
それと、私たち2人の周りをかわいらしい
動物や花々が囲んでくれていました。
もう、式の前から、幸せにしてくれた
のです、こしまちゃん作のイラスト入り
『返信はがき』は…。
そして、実は、今も大切に、保管して
います。


やよいちゃんからも、『返信はがき』は
戻ってきました。
確か、こしまちゃんからのが戻ってきて
から2,3日後だったと思うのですが、
私は、その、やよいちゃんからのを手に
取って、見て、プッと笑ってしまい
ました。

大の仲良しである二人の『性格の違い』
が、まさに、その『返信はがき』に、
顕著に表れていたからです!

こしまちゃんのとは違って、まさに、
やよいちゃんのは、『模範的』と言う
か、そうですねぇ、「ちゃんと、本や
パソコンで調べて、書いてくれたん
だなぁ」と分かる……、そんな感じ
でした。
お祝いの言葉も、これ本当に大学生が
書いたの……って感じのものが、書かれ
ていました。
それを読んだ、婚約者が言っていたのを
思い出します。
「これ、女子大生……!?
えッ。普通に、バリバリのキャリア
ウーマンか学校の先生からかと、
思った」って。
なるほど、同感です。


と言うとこで、ちゃんと、二人からの
『返信はがき』も届き、二人が列席して
くれることが決まりました。
そして、もちろん、約束通り、それだけ
ではなく、例のモノもやってくれること
が確定して……。
あっ、まぁ、それは、また後の話に…。


それで、今……。
こしまちゃんとやよいちゃんは、どの
テーブルに座ってるかと、言うと。
もちろん、『未婚者のテーブル』です。
そして、なんと……!!
と言うか、私が、そうしたのですが、
お初とカノと一緒のテーブルです。
そう、つまり、そのテーブルの女子は、
高校生のお初と、カノ、それから、
女子大生の葦田こしまちゃんと丸瀬
やよいちゃん、です。
で、対する男子陣と言えば、夫の
従弟たち4人。
下は17歳~21歳のまさに、騒がしい
男性諸君です。
これで、女子4:男子4の構成なの
です。

さっき見ていて、思っちゃいました。
「あれは、何だったの?
猫かぶりかい……」って。
だって、栄家ブラザーズ4名、キレイな
女の子たちを前にしてメッチャ興奮
しているし、嬉しそうだし、積極的に
行ってるんですもの!
夫が、まだ婚約者時代の時ですけど、
1度、彼らと私の食事の場をセッティング
してくれたんです。
私たち2人と彼ら4人で……。
場所は、彼らが指定したという、
しゃぶしゃぶ食べ放題のお店、でした。
で、その時、彼らは、よく食べていま
した。もう、私からしたら、「1か月分
食べんの!?」って位……。
でも、どちらかと言うと、おとなしい
っていう印象でした。
4人とも……。
あんまり、私と目を合わせてくれない
し、それに、私が話しかければ、
一言二言は返してくれるけど、彼らから
積極的には……。


でも、今日の彼らは……。
まぁ、あれが『本来の姿』なんでしょう
ねぇ。
まさに、【水を得た魚】です。
同年代で、素敵な女子達と同じテーブル
になって、一緒に美味しいものを食べて
……、それだけで満足せず、超積極的に
アプローチしてる…!
「何だい!私の時は、あぁだったのに」
って思っちゃいますよね。


で、女子達も満更でもないって感じの
表情、素振りを見せています……。
女子大生のこしまちゃん、やよいちゃん、
そして、お初やカノ…、つまり4人とも。
「実は、肉食女子だったんだな、みんな」
って、さっき思っちゃいましたね。

それに、既に着替え済みの、やよいちゃん
とこしまちゃんの許には、同じテーブルの
栄家ブラザーズの他にも、たくさんの
未婚男性陣がやって来ています!
まさに、次から次へと。
ちょっと、思っちゃいますね。
「オイ!オッサン&青年たち!!
そっちの若い女子大生ばっかに、
集中しすぎじゃナイ!」。

そうです。そん位、こしまちゃんたち
のところへ行く男性陣が急増したの
です!
理由は、もうすでに、明らかです
けどね……。

それで、「あの人、未婚かな?
既婚者じゃないの?」と、さっきから
何度も考えてしまっています。
で、どう見ても既婚者の男性も……。
オイその指輪は何なんだ、ってさっき
からずっと突っ込んでいます、私は
心の中で。

これでも、右目の視力は1,5以上
ありますからね!
このメインテーブルに座りながらでも、
十分、こしまちゃんたちに寄ってく
男性陣の手元まで見えちゃうんです。

本当に、男性って……。
若い子には、目がないんだから!









(著作権は、篠原元にあります)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み