第十五章 ㉜

文字数 2,022文字

この時を逃せば、一生後悔すると
思いました。
このチャンスをモノにしなかったら、
絶対に、こんなチャンスは、
もう巡って来ないかもしれないと……。


だから、出し惜しみはしたくなかった。
血は繋がっていなくても、20数年前の
私と同じような赤ちゃん、そして、
その子のお母さんがいるのです。


ちなみに、結婚式だけに限れば、
私が出す分、つまり、最終契約段階で
出た合計金額の25%は、150万円に
なりました。
それは、最初に、分けておいた通帳
4冊から出すことにしたのです。
それでも、かなりの額が残りますから。

そして、都和ちゃんたちのためには…。
私は、残り4冊の通帳の残高を合算して
合計額を出しました。
さっきも言いましたが、出し惜しみは
したくありませんでした。
こんな時に、ケチケチするような人間
は、どうしようもない人間ですから。
出すべき時に出さないで、かえって
乏しくなるものです。
逆に、どんどん施し、与え、貸す人の
方が、豊かになるものです。

それで、最終的に、私は、
「100万~150万かな……」と、
自分の中で結論付けました。
4つの口座の合計額の何割かの額に
相当します。
これ位あれば……と、色々調べたりして、
その金額を出したのです。
で、色々調べるうちに、4口座分全部は
多すぎることも判明しましたし、人は、
一気に大金を得ると、ダメになるもの
です……。
急に入って来るお金って、絶対に、
乱費しちゃいますからね。

都和ちゃんより年上の人間として、
そして、色々な人間、闇の世界とかを
見て来た人間として、そういうところ
をも考えたのです、あの時の私は。

それで、100万~150万円。
皆さんは、どう思いますか?
「見ず知らずの親子のために、そこまで
すんの?」と思われるでしょうか。
それとも、「うん?さっきまで、結構、
威勢のいいこと言っといて、その額?」
と思われるでしょうか。
どんなご意見があっても良いと思う
のですが、あの時の、私は、そう決断
したのでした……。




数日後。
私は、新宿に向かいました。
人と会う約束をしていたのです。
どうしても、相談したい人がいたから……。

その相手は、警察官であり、親友でもある
不動みどりちゃん。
そして、その妹の葦田こしまちゃんと、
奈良の時からの親友の丸瀬やよいちゃん。

約束の時間は、もう暗くなり、帰宅途中
の人たちや飲み街に向かう人が多い、
午後7時……。

どうしても、この時間しか、みんなの
都合が合わなかったので、この日は、
スーパーでの仕事を終えた後、
大急ぎで、駅に向かったわけです。
当然、料理教室は、お休み。


待ち合わせ場所に、最初についたのは、
私でした。
時間を確認すると、19時01分……。
ちょっと、遅れてしまったわけです。
でも、他の3人は誰も来ていません。
ホッとしました。
と、同時に、「えッ?もしかして……。
待ち合わせ場所、ここじゃなかった?」
と不安にもなりましたが、携帯を開いて、
メールのやりとりを確認すると、
間違いはありません。

で、しばらく待ちました。
周りはガヤガヤ、ワイワイです。
今からそういう店に行くぞという感じの
オジサンたち、私と同じような待ち合わせ
しているような若い女性や男性……。
あと、ナンパ野郎もいましたね。
しかも、私の周囲に2人。
「来たら、どうしよう」と思いました。
こちとら、結婚間近、婚約者のいる身
ですから……。
なので、ちょっと身構えてしまいまし
たが、取り越し苦労でした。
ソイツら……、まぁ、別々にやってる
人間たちでしたけど、私の方には全然
来ずに、女子大生とか……、つまり、
私から見ても「若いなぁ!」って
子たちばかりに声かけてましたから。
まぁ、それはそれで、ちょっと、
ムカつきましたね。
とは言っても、声掛けられても、
絶対ムシですけど……。


それで……。
話しを戻します。
約束の時間から10分後位して、
やっと、向こうから、やって来ました!
皆さん、誰だと思います?
それは、みどりちゃん&こしまちゃん
という姉妹ペアでした。
私の部屋で、前回、散々ギャーギャー
やってたのに、肩を並べて、談笑しな
がらやってくるのです。
「あぁ、本当に、仲良しだなぁ。
何で、人の前だと、ああなるかなぁ」と
思います。
それプラス、「オイオイ。メールして
きたとは言え、ちょっとは、急げよ。
他人、待たせてんだから」とも
思っちゃいましたが、
「ゴメンね。遅れたぁ」&「すみません!
お待たせして」と謝る、似た者同士姉妹
を前にすると、文句言う気なんてゼロ
になっちゃいました……。

そして、3人で待つこと、1、2分。
やよいちゃんが、駆けてきました。
こっちは、姉妹ペアとは違って、
本当に、走ってきましたね。

必死に謝り、本気で申し訳なさそうに
する、やよいちゃんでしたが、
みんな、笑顔で迎えます。
だって、「待たされたぁ!」って感じは
全然ないのですから、現実問題…。
ただただ、再会を喜ぶ気持で、みんな
いっぱいだったのです。

新宿の夜の街、私たちは、歩き出し
ます、女子4人肩を並べて……。









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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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