第十六章 ㉕
文字数 1,456文字
第五章③と
時間枠が一致するので、
交互に読まれることをすすめる)
そうだ……。
ここで、ぜひ、今日、私達夫婦の結婚式と
結婚披露宴に来てくれた方たちのことを
紹介させてください。
まずは、私達夫婦と、そして、みどりちゃん
にとって、『懐かしい恩師』にあたる、
管原綾子先生。
私、夫、みどりちゃんが3年生の時、
先生が担任でした。
そう、今でも思い出します…。
本当にやんちゃな子が多かった、
いすみ市立第一小の3年2組でした。
先生も本当に本当に、大変だった
ことでしょう。
しかも、それだけでなく、あの体験学習
の日に、自分の受け持ちのクラスの男子
と女子が……。
今だから言えますが、本当に、私達夫婦
は……。
先生に、多大な迷惑、心痛を!
心が痛んでいました、成人した私は…。
でも……。
みどりちゃん経由で何とか連絡を取る
ことができ、そして、私達夫婦からの
招待を喜んで、今日来てくださった、
先生は…。
すでに、結婚して、姓も武村にかわり、
何より、2児のママと言うことでした。
昔よりも大きく感じて、でも、昔と同じ
良い匂いがしました、先生からは……。
そして、嬉しかったのは、本当に幸せ
そうで、笑顔が美しくて、それで、
下の女の子と一緒に来てくださいました。
先生は、私と夫に言ってくれました。
「今もね、小学校で教えてるんだけど。
『教師が天職だなぁ』って、今日、
本当に思えたわ!栄君と、柳沼さん……
じゃなくて、栄君と栄さん……、おかしな
感じね。
でも、そう、2人のおかげでね」と。
何でですか、って訊く前に、先生が続け
てくれました。
「だってね……。私、教え子の結婚式に
招待されたの、今日が初めてなの!
感動で、式の最中なんて、ずっと泣いて
たわ。この子に、『ママ、どうしたの?』
って言われるくらいね……」。
小さな手でママの……、武村先生の手を
ギュッと握って、私をじっと見つめる
先生の娘さん。かわいいなぁと思いました。
やっぱり、どこか先生に似ています。
そして、先生は、私の目をみつめながら
言ってくれました。
「栄さん……。これから、幸せにね。」
次に夫を見つめ、
「栄君。奥さんを泣かせちゃダメだよ。
世界一幸せにしてあげてね」と。
真心からの言葉だと、分かりました。
やっぱり、恩師はいつまでも恩師ですね。
小3の時のあの事件の後、学校に行け
なくなった、つまり、不登校になって
しまった私…。
先生は、何度も家に来てくれました。
手術で入院した時も、先生は、私の
大好きな本を持って、お見舞いに来て
くれたのです。
でも、あの頃の、私は、先生の優しさ
に応えることができなかった……。
そう言うこともあって、先生が来て
くれて、私達夫婦の結婚を喜んで
くださっているのを見て、心が安らぎ
ました。荷が下りたというか……。
そして、先生は、メインテーブルから
ご自分の席に戻る前に、こう言って
くれました。
「正直言うとね、まだ、夢みたい……。
だって、まさか、あの栄君と柳沼真子
ちゃんがね……、結婚なんて。
あの当時の、3年2組の担任時代の私、
絶対に想像できなかったわ。
うん。本当に、想像もしてなかった…。
遠く遠く、まさに、世界で一番かけ離れて
しまったかのように思えた二人だもの…。
その2人が、今日結婚したんだものねぇ
……」。
感極まって声に詰まる、先生。
先生の手をギュッと握っている5歳の
女の子が、「ママ。また泣いてるの?」
と訊いていました。
私も、ハンカチで目元を拭います……。
本当に、今日、管原…、いえ、綾部先生
に来てもらえて良かった……。
心からそう思います。
(著作権は、篠原元にあります)