第十七章 54
文字数 883文字
見渡す。
何部屋あるのか数える……けど、
面倒くさくなった。
自分達夫婦2人だけじゃもったいない、
ってか、広すぎる。
だけど……、ここに、ほかの部外者
なんて入れたくない。
折角の新婚旅行、【邪魔者】の存在は
絶対お断りだ。
荷物の整理などが済んだので、
畳に、大の字で寝っ転がる。
妻は……。まだ、外(バルコニー)で
騒いでる。
さっき、「もうそろそろ中に入れよ」と
声をかけようとしたけど、誰かと、携帯
電話で話しながら盛り上がってたから
やめた。
ま、男じゃなければ、誰でもいい。
あの口調だと、例のラーメン好き仲間で
ラーメン屋と結婚した、しーちゃんとか
言う、結婚式にも来てくれた女の人
だろう…。
畳の香りに、心落ち着く。
それに、バルコニーから入ってくる
風も心地よい。
……うとうとしかけた。
部屋の扉をたたく音と、柔らかな
女性の声で、現実に引き戻される。
で、ドキッとした。
いつのまにか、妻が、すぐ横に座って
じっとこっちを見つめてた。
目が合って、お互い、すぐにそらす。
まだ、どこか、ぎこちない新婚
夫婦だ。
義時と真子の部屋に来てくれたのは、
女将だった。
「誰かに似てるなぁ」と思うけど、
その『誰か』が、誰なのかが、名前が
思い付かない、義時。
妻の方は、一瞬で。
大女優の名前が頭に浮かんだ。
愛川のり子さん…そっくり!!
「あと、どっかで、会ったことある
かな」。
キレイに正座して、女将さんは、
挨拶してくれた。
「この度は、新婚旅行とのことで、
まことに、おめでとうございます」
そこから、いろんな話になった。
凛としてるけれど、親しみやすくて、
話しやすい。
そう、どこか、「お義母さんにも
似てるんだ」と、真子は思った。
忙しいであろうに、女将は、長く時間を
とって、いろいろ話してくれた。
義時は、【邪魔者】と……感じなかった。
なんか、やっぱり親しみを感じる。
妻と同じことを、考えた。
(著作権は、篠原元にあります)
エブリスタ、ノベルデイズ、
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※しーちゃん&女優・愛川のり子
については、登場人物紹介を
参考してください!(ノベルデイズさんの)