第十七章  栄真子の新婚、新居生活  ~すべてが初めてな新妻!~ ①

文字数 1,493文字

6月24日、柳沼真子は、栄という姓に
変わった。
これで、二度目。
奥中から、母の死後、大伯母に引き取られ
柳沼姓。
そして……。
最愛の男性と一緒になって、幸せな家庭を
築いていくにあたり、栄姓。

「栄、真子……」とつぶやいてみる。
不思議な感じだった。
そして……。それだけじゃないし。
今まで身につけていなかったもの。
結婚指輪をかざす。
改めて、「結婚したんだなぁ」と。
「もう独身じゃなく、妻なんだ」と
感慨深い…。


隣で、まだ、眠っている夫。
新しい家族。
それに、下の階には、夫の家族たちも
泊っている。
1日で、一気に、7人……いやそれ以上の
『家族』ができた。
それに、早ければ、来年には、夫婦で
赤ちゃんをあやしてるかも。



妻、真子は、早く起き過ぎたけれど、
「ラッキー!」と思った。
夫の寝顔を見れるんだから。
しばらく、このまま、そっとしておこう
……、と言うより、ジッとして、眺めて
おこう。
「このままにしておけば、当分起きない
だろうから」


昨夜―結婚式、披露宴当日―は、
ずっとドタバタしまくりだった……。
『猫の手も借りたい』の意味が、花嫁で
ある真子には、本当に、分かった。
しかも……!!
披露宴後…。夫と2人になりたい、ちょっと
休みたい……って言うのに、まだ、ある!
二次会、そして、進路新婦と未婚男女だけ
の三次会まで!?

全てが終わって、深夜。
疲れ果てて、2人で、部屋に戻った。
半分酔っている夫を抱えて。
その後は、……。





真子は、じっと見つめた。
いくらでも見ていられるな、と思う。
それに、意外といびきも小さい…。
で、「私、どうだったんだろう?」と気に
なる……。


「この人と一つになれたんだ…」
感動が溢れてくる。
初めて、男性と寝た。
1つは、男女の交わりの意味で。
もう1つは、文字通り…。
父もなく、祖父も見たことがない。
母は1人子だったから伯父、叔父も
いなかった。
だから、文字通り、『男性と寝た』
ことがなかった。
母と寝たこと、大伯母である雪子と
寝たこと、それから、志与やみどり、
こしまややよいと一緒に寝たことは
あるけれど、本当に、男性とは…、
1度も……。

自分のすぐ横で、スヤスヤと眠る
夫を見つめながら、そう考える。
不思議な感じ。
今までの自分じゃなくなった感。


しばらく、夫の寝顔を見続け…。
満足した奥方。
静かに、自分も、再び、身体を横たえる。

それに…と思う。
「別に、今日だけじゃなくて、これから、
いつでも、いっぱい見れるんだから」と。

まだまだ、時間は早い。
目をつぶる。
すぐ近くに、夫。
そして、夫の匂い…。

手をちょっと伸ばしてみる。
そっとだけど、夫の浅黒い腕に、
触れてみた、一瞬。
筋肉質な体…。
それに、思ったより、熱かい。

「男の人って、体が冷たいっていう
イメージだったけど……」と思った。


そして、昨夜のことを一気に思い出す。
ありありと浮かんでくる、昨夜の、『初夜』
の出来事……。
顔だけじゃなく、体全身がカッと熱く
なった、燃えるように…。


しばし……。
冷静になって、真子は思った。
「もう、本当に女なんだよね」
「昨日、初めてを、やったんだ」

下半身に……、自分の女性そのものに
手をあててみた。
少し、痛み、違和感がある…。

「そっか、やったんだぁ!
ちゃんと、出来たんだぁ!!」
喜びが溢れてくる……。
そして、感動で、泣き出してしまい。
隣の夫を起こさないようにと、必死に
声は抑えながら、…そして、妻は、
反対方向に、身体を向ける。
それでも、夫の身体の熱さは感じられて
……。
幸せであった。
一生、これから、添い遂げていくんだ、
この人と……、改めて、心の中で誓った。






















(・著作権は、篠原元にあります

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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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