第一章②

文字数 2,453文字

えっとね、みどりちゃんは、
あたしの大親友で、葦田みどりちゃんって
言うんだ。
1年生の時から同じクラスで、
2年生の時も、今も同じクラス。
みどりちゃんは運動神経も抜群で、
小さい子たちにも優しい、自慢のお友達。
クラスの男子で、みどりちゃんが好きって
いう子、いっぱいいるよ。

それでね、あたしとみどりちゃんが、
今ハマってるのは、公園に遊びに行って、
あたしとみどりちゃんが大好きな
『夏フェス』を2人で歌うこと。
歌いながら、踊るの。楽しいよ!
マラソンも一位で、ドッチボールも
うまいみどりちゃんは、
White appleのみんなと
ソックリに踊りながら歌うの。
あたしは、みどりちゃんを
まねしながら踊るの。
「White appleのみんなみたいに
キレイな女の子になりたいね」って、
みどりちゃんとよく話すんだ。
将来の夢は、みどりちゃんと
一緒に歌手デビューすること!
みどりちゃんの妹たちも
いれてあげていいかな。
みどりちゃんの妹たちは双子で、
すごくかわいいの!
みどりちゃんのお家に遊びに行くと、
いつも遊んであげるんだ。

そうそう、みどりちゃんのお家の隣に
住んでる変な男子がいるの!
みどりちゃんの幼馴染だって言ってるけど、
いつもあたしにちょっかい出してくるの。
義時っていうんだけど、
学校であたしとみどりちゃんが
話してると割り込んできたり、
遊ぶの邪魔するの。
あとね、あたしが生男君といると
「ヒューヒュー」とか言って
ひやかしたり、バカにしたりするの。
それからね、時々、
「おい!将来、俺と結婚しよう!」って
ふざけて言ってきたりするんだけど、
義時と結婚するなんて、
絶対にありえないし、絶対にイや! 
義時と結婚する位なら、死んだ方がマシ‼
だって、ゴリラやチンパンジーと
結婚するようなものなんだから。

しかも、義時って最悪なの‼
ペラペラ何でも人に話すんだもん。
家が銭湯で、お風呂入りに来る
おじいさんやおばあさんと
小さいころから仲良しで、よくうわさ話を
きかされてきたから、
そうなったんだよって、
みどりちゃんは言ってた。
でも、前に「俺、アイツの裸見たぜ!」って
クラスの男子とかに自慢して、
ある女の子を泣かせたの!ありえない!
あの時は、みどりちゃんが
カンカンに怒って、
義時を叱ってたけど、絶対に、
義時の家の銭湯なんか行かないから!
クラスの女の子、みんなそう言ってる。

それでね、あたしが本当に困ってるのはね、
生男君とあたしが一緒にいると、
いつもひやかしてくること。
生男君は、あたしと同じ春光保育園に
行ってた男の子で、小学校では同じクラスで
なくなっちゃったけど、3年生になって
やっと同じクラスになれた。
だから、あたし嬉しくて嬉しくて。

あたし、いっ君
―これが生男君をあたしが
呼ぶときの、あたしだけの呼び方―
 と結婚するんだ、大人になったら。
もう、いっ君と約束したの。

幼稚園の時、いっ君が
『マコを将来、お嫁さんにしてあげる。』
って言ってくれたの。
今は同じクラスだからいっ君と
いっぱい一緒にいれる。
今までは、他の女の子たちもいるし
恥ずかしくて近くにいっ君がいても
話しかけれなかったの。
あとね、いっ君の周りに知らない男子が
いっぱいいてね・・・。
でも、今は同じクラス。
いっ君ね、いつもあたしを見てる。
時々、目が合うの。
男子と一緒に遊んでもつまらないから、
遊ぶのは女子と一緒。
だから、いっ君と休憩時間に
遊んだりはしない。
でも、いっ君もあたしも赤い糸で
ちゃんと結ばれてるから、あと、ちゃんと
約束もしているから、大丈夫。



先週の月曜日、勇気だしていっ君に
言ってみたの。
「これから一緒に、学校行きたいな。」
って。
それでね、火曜日から一緒に学校に
登校してるんだ。
嬉しい、幸せ!
本当は下校も一緒がいいんだけど、
あたし今ね、お花係なの。だから
同じお花係のみどりちゃんと、放課後、
教室のお花に水あげたり、校庭のお花にも
水をあげないといけないの。
だからいっ君とは帰れないんだ。
いっ君は、塾があって、早く帰らないと
いけないから。
でもね、みどりちゃんと一緒に歌を
歌いながら、帰るの。楽しいよ。

今、学校に行くのが、本当に楽しいし、
嬉しい!
だって、いっ君と一緒に行けるし、
みどりちゃんともいっぱい
お話しできるから。
あとね、今日はあたしたちのクラス、
体験学習の日なんだ!
給食食べ終わったら、みんなで、
いすみ環境文化パークに行くの。
水の中の生き物をさがしたり、
竹とんぼを作るんだ!
すっごい楽しみなの。

さあ、もうそろそろ家をでないと……。
中央公園で、いっ君と待ち合わせてるから。

ママが、「トイレに行きなさいね。」と
言ってるわ。
何か知らないけどね、今日、
ママが不機嫌で、ちょっとイライラ
してるの。

だから、いつもこんなこと言わないのに
「トイレ行きなさい。」なんて!
でも、あたしもう小学3年生。
もうっ、子ども扱いしないでほしい……。
赤ちゃんじゃないから、
ちゃんと行くときには自分で行くんだから!

あ、そうだプールバックを忘れないで、
もっていかないとっ。
まだ7月じゃないけど、いすみ市は毎日、
すごく暑いの。
だから市営プールが今週から開いたの。
それでね、それでね、
今日は学校の帰りに、
みどりちゃんとプールへ行くことに
したんだ!
体験学習、市営プール、今日は本当に
本当に楽しみ!

少しぐらい悲しくても、我慢する。
だって、楽しいことも
いっぱいあるもん!
5月のゴールデンウイークの時、
みどりちゃんは、家族みんなで山梨の
お山の方に行って遊んできた。
いっ君は、おばあちゃんやママとバスで
東京にでかけてた。
義時のお家は超お金持ちだから、
お父さんがお船を持っていて、
そのお船でクルージングに行ったって、
みどりちゃんが言ってた。
でも、あたしはずっとお家の中か
近くの公園にいた。
みどりちゃんもいっ君もいなくて、
ちょっぴり寂しくて泣いちゃったけど、
やっぱり、いつもは優しいママと
みどりちゃん、それからいっ君がいるから、
あたし大丈夫。

じゃあ、いってきます。
あっ、今日もね、この、おばさんが
プレゼントしてくれた靴で行くよ!
みどりちゃんとおそろ!!


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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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