第十六章 ④

文字数 1,682文字

(ここでは、第七章①と第七章②と
時間枠が一致するので、
交互に読まれることをすすめる)




新婦控室で、真子は、真正面に座る
久世小羽を見つめた。
かかってきた電話に出て、誰かと話して
いる。
「多分、旦那さんだろうなぁ」と、
真子は思った。


自分たちより、ちょっと早く式を挙げた
先輩。
そして、同じ中学校出身。
中1、中3の時に同じクラスだった。
3年生の時は、生徒会の副会長をやって
いた。
卒業式の日、声をかけたかったん
だけど、勇気がなくて、結局、話かける
ことはできなかった、のに……。
「今、こうやって、私の結婚式に来て
くれてるなんて……!」。
真子の胸が熱くなる。



真子は、それまでのことを
振り返る。


あの夜。
結局は、小滝先生が、全員分のを
払ってくれた。
先に帰ったカップルは、自分たちの
分のお金を置いていったけど、最後
まで残った、私たちの分は、小滝先生が
「良いんです、良いんです!皆さん、
私の話をよく聞いてくださったので、
お礼ですよ!」と言って……。


それで、そうだ……。
お開きになるまで、結局、ずっと、
小滝先生は、男性2人にいろいろと
話してた。
そのうちに、なぜか、義時と、
もう1人の男性もうるさいほどに
なってて……。
男性3人がすごく盛り上がってるから、
苦情が来るんじゃないかと……、
ひやひやしたっけ…。

で、自分と小羽ちゃんの2人は…。
静かに、話したんだよね。
そう。
最初に、気づいたのは小羽ちゃん。
「あの、もしかして……。
柳沼さんって、奈良の出身ですか?
いえ、その……。間違ってたら、
すみませんが、中学の時に一緒だった
奥中真子さん……?」。


あの時は、まさに、デジャブ……。
やよいちゃんと再会した日のことを
思い出した。


それで、すぐに、思い出したんだ。
「あの小羽ちゃん!?」。
中学の校門を出ながら、
もう2度と会えないんだろうなぁと
考えてた、あの小羽ちゃん!!


それからは、男性陣が盛り上がる
横で、思い出話に花を咲かせたよね。
小羽ちゃんは、「こんな再会って、
あるんだね!映画みたい……」と
言ってた。
同感だったなぁ。





って言うか、私って、そういうの
多くない……?
そろそろ通話が終わりそうな、
小羽を見つめて、真子は、そう思った。


新婦控室で、真子と小羽は、
『ウエディング・セミナー』の4回目
の日のことを振り返って話した。
で、約束した。
「また、2人だけで……、あっ、
ゆずちゃんも誘って、同期3人女子
だけで、お寿司屋行こうね!」と。

ちなみに、ゆずちゃんと言うのは、
真子と小羽と一緒に受講していた
女性の名前。
つまり、あのレストランで、急用
のため早く帰った女の子だ。


話を戻す。
『ウェディング・セミナー』の4回目。
その日、義時は、仕事のトラブルで、
どうしても参加できなくなった。
義時から連絡を受け、それを、小滝
牧師に伝える真子。
小滝牧師は、「わかりました。
彼には、あとで、罰として、
補習を受けてもらいます」と言った
けど、顔は笑っていた。

で、真子だけは、カップルじゃなく、
一人で、その日参加した。
正直、寂しい。
気まずい……。

でも、それも最初のうちだけだった。
だんだんと、気にならなくなった。
小滝牧師のさりげない気遣いも
嬉しかった。

すべてのプログラムが終わって…。
真子が、一人で帰ろうとしていた時
だった。
後ろから声をかけられた。

振り返ると、小羽だった……。
小羽が言う。
「柳沼さん。
このあと、どっか行きません?
うちの彼、このあと、夜勤だから、
すぐに職場に行かないといけないの。
そっちも一人でしょ。
だから、女二人で、夕食行かない?」。

その彼が、真子に会釈して、一足早く
教会を出て行った。
もう1組のカップル―ゆずちゃん達―は、
教会の中で、まだ、小滝牧師と、
話している。
相談か何かか……?


嬉しくて、真子は、即答した!
「いいね!行く!!」。


で、女子2人は、夜の街に出て行った
のだ。
入ったのが、回転寿司店。
慣れた感じで店内を歩きながら小羽が
振り向く。
「ここね、よく、彼とくる店なんだ。
値段の割に、味も鮮度もネタの大きさ
も抜群だよ!」。

『ウェディング・セミナー』帰りの
未婚女子二人、食べる気満々であった
……。










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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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