第十六章 ㉞

文字数 2,591文字

(ここでは、第十六章⑫参照です)





言ってやり…あげました。
「あのさ、2人とも、ゴメン!
2人の席次表だけさ、ちょっと、細工
したの。
だからさ、2人のだけは、このテーブルの
人の名前だけ、姓だけでしょ。
他のテーブルは、みんなフルネーム
なのに」。

再び「エッ!?」と声を上げ、同時に、
テーブルの上、また、ハンドバッグの
中から、席次表を手にする2人…。

「本当だ。今、気づいた…」と、
しーちゃん。
「え?何で、こんなことをさ。
確かにさ、他のテーブルの人は、全員
フルネームだね。……で、これ、ウチら
だけなの?この人達のは……」と、
刑事のみどりちゃん。

正直に、答えてあげました。
「うん。そうだよ。2人以外の皆さん、
それと、この披露宴会場の中にいる
皆の席次表、ちゃんとしたモノだよ。
2人のだけ、ちっと、細工したんだ!」。


「はぁぁ」と驚いたような感じの声を
出すママしーちゃん。
「え?いやさ、何でさ、そんな面倒な
ことしてんの?」と当然の質問を、
刑事のみどりちゃん。

「2人にドッキリしたくてさ!
でさ、2人とも、まだ、本当に、
気づかない?
どこかで会ったことないかな?」。

完全に忘れている、つまりは、
他人同士のしーちゃんとみどり
ちゃんが、お互いを見合っています。
まだ、どこか……、まぁ当然ですけど、
よそよそしい態度です。
早く、昔の2人に戻してあげないと!!
ちなみにですけど、2人の席次だけは、
『新婦の通う料理教室主催 前先生』、
『料理教室の同班、友人 氏家様』、
『本日【新郎新婦紹介】をしてくれる
新郎新婦の幼馴染  不動様』、
『新婦の前職場での先輩 新名様、
ご令嬢 かなちゃん♡』
って表記にしたのです。
男性陣もそんな感じで……。
でも、もちろん、前先生のにも、
新婚さんのにも、他の皆さんのも、
ちゃんと、『本日【新郎新婦紹介】を
してくれる新郎新婦の幼馴染  
不動みどり様』、
『新婦の前職場での先輩 新名志与様、
ご令嬢 かなちゃん♡』って、
なっているわけです。

しーちゃんも、みどりちゃんも、さすがに、
分かっていた……はずです。
皆さんと同じ席次表だったら。
でも、私と婚約者は、あえて、細工した
のです。






……で、2人が全く見当がつかないようで、
しかも、しーちゃんが、「あの、どこかで
……」と、みどりちゃんに訊こうとする
ので、私は、大急ぎで、遮って…。
答えました。
教えてあげました。

「不動さん。新名さん。あのね」と。
2人ともキョトンとしています。
当然ですね。普段、私は、彼女たちを
ファーストネームで呼びますから。
でも、わざとなのです。
で、続けます。
「新名さん。不動さんの名前は、みどり。
不動みどりって言うの。
で、みどりちゃん。新名さんの名前は、
しよ。新名志与っていう名前なの」。

そこまで、言ってあげました。
でも、まだ、しーちゃんは、何が何だか
分かんないような表情。
けど……!みどりちゃんが、うーんと
唸りだします。
「真子ちゃん。ちょい、待って!何かさ、
かなりずっと昔さ、どっかで……」って。


でも、ここで、みどりちゃんに答えられ
たくありませんでした(笑)
私が、「どんなもんだ~い!」って感じで
威張って、2人に教えてあげたかった。
だから、私は、みどりちゃんの要請を
即時却下して、つまり無視して、口を
開きました。
「もう1つ、2人にヒントね。
しーちゃん。このね、不動みどりさんの
旧姓は、葦田だよ。
で、みどりちゃん!耳塞がないで、
聞いてよッ!!……うん。聞いて。
ここにいる、かなちゃんのお母さんの
旧姓は、長谷島だ…」。
最後まで、言わせてもらえませんでした。
2人が、同時に、「アッ!!」、「あぁぁ
ぁぁぁぁ!!」と叫んだものですから。
一気に集中……、私たち3人に集結する
同じテーブルの皆さんの視線+両隣の
テーブルからの訝しむような視線の数々…。

これは、さすがに想定していません
でした。
「まずかった!?」って一瞬思いましたが
……。
しーちゃんが大人な対応をしてくれたので、
それも一瞬でした…。
すぐに、皆さん、それぞれ談笑に戻られ
ます。


で、私達3人は…。
と言うより、しーちゃんとみどりちゃんは。
お互いにお互いを指差しあって……。

「えッ!?あの、葦田三姉妹……、
下はたしか双子ちゃんだったっけ。
え、あそこの長女のみどり!
ホントに、あのお転婆みどりなの?」。
「ウソ、信じらんない……。
しよ姉ちゃん?郵便局の隣の家の?!」。


お互い、まるで、幽霊を見ているかの
ようでした。
ま、それほど、驚いたのでしょうね!
まさか、今日、ここで…、栄真子の結婚
披露宴で再会するとは、想像もして
いなかったでしょうから。
まぁ、それが当然でしょうけど…。

でも。
すぐに、2人とも、ま、私も入れると3人
とも、『昔の小学生時代』に戻れました。
しーちゃんは、盛んに、「あの、みどり
…、や、みどりちゃんが、今は刑事かぁ
……」って口にしてましたね。
で、みどりちゃんが何か恥ずかしそうな
表情して。
いやぁ、本当に、良かった、です。
いろいろな意味で。
ドッキリも成功しましたし、ね。
これで、2人のだけ、手間暇かけて細工
した意味もあったってことになりました。



で……。
居村さんからの視線に気づいていたの
ですけど、無視していた私は…。
「もう、ムリかな。これ以上いたら、
言いに来るな」と思ったので、
2人に、じゃあと言い、立ち上がります。
「あっち戻るね。2人とも、まだ、時間
あるから、楽しんでネ!」と。


でも、ここで、しーちゃんが待ったを
かけて……って言うか、提案してくれて…。
私たちは3人で、いや違うな、かなちゃんも
いれると4人で、『記念写真』を撮って
もらうことになりました。
私は、控室に置いたままだったので
持ち合わせていなかったのですが、
しーちゃん、みどりちゃんがそれぞれ
携帯電話、カメラを同じテーブルの
男性陣に渡して、お願いしています。
みどりちゃんに頼みます。
「現像したら、ちょうだいね!」と。
「了解!!」。
でも、絶妙のタイミングで……、まぁ、
後で知ったのですが、居村さんの手配で
なのですが、栄家のお抱えのカメラマン
さんが来てくれたので、助かりました。

男性陣2名とカメラマンさんに、私たち
4人は写真を撮ってもらって…。
大切な大切な『想い出写真』となること
でしょう…。
あとで、カメラマンさんとみどりちゃん
からもらえるのですが。
届くのが楽しみです……。
一生ものの写真になる、のですから。











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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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