第十五章 ㉚
文字数 1,990文字
そんな【愛の巣】なんて言葉、女子だけの
空間でも、口からは出せないじゃないです
か……!
それに、そこには、こしまちゃんもいる
のです。
そんなこと、私が言ったら、さらに、
こしまちゃんも追従して、お姉ちゃんを
イジるでしょうからね……。
だから、私は、黙っていることに
決めました。
でも、「絶対、旦那さんと連絡して
るな。間違いないな」という自身は
ありました。
まぁ、これが、【女の勘】ってモノ
ですね。
こしまちゃんとやよいちゃんが
キャーキャー騒いでいる横で、
私は、みどりちゃんが淹れてくれた
紅茶を飲みながら、人妻、既婚者で
あるみどりちゃんを眺めます。
唇を気にしたり、携帯を忙しくなく
操作していたり……。
「結婚するとこうなるんだぁ」って、
思いました。
自分もあと少しで、こんな風になる
のか……って、不思議な感じもしたもの
です。
みどりちゃんの左手の薬指には、
特別な指輪も輝いていました…。
そして、帰り際……。
ちなみに、私が、予想していた以上に、
一行は早く帰ることになりました。
「真子ちゃんも、忙しいだろうからさ。
そろそろ、お暇しよう。
こしまとやよいちゃんもさ、大学の授業
とかさ、あるでしょ」と、
みどりちゃんが言ったから……。
私は、本当は、大丈夫でした。
内心、もっと、ゆっくりしてって
もらいたい位でしたから。
で、こしまちゃんも、「いや……。
うちらは、今日は、必修……、午後
からだから」と言っていました。
でも、やよいちゃんは、ちゃんと、
察したんでしょうね。
人妻みどりちゃんの気持ちとかを。
偉い、さすがッ!!
それで、「ねぇ!こしま。あのさ、
ちょっと、こしまと1対1で話したい
事あるからさ……。大学のことで。
だから、このあと、どっかカフェとか
で、話せないかな」と。
「分かった。じゃあ、行く?」と、
こしまちゃん。
それで、帰り際ですね。
こしまちゃんが、まず、丁寧に頭を下げて
お礼を伝えてくれました。
助かったのは、楽しませてもらったのは、
私の方なのに……。
だから、思いましたね。
「あッ!この子、絶対モテるわ。
こんな良い子、絶対、男の子が放っておく
わけないもの。
みどりちゃん、結構、私たちの前じゃ、
色々言ってたけど、姉妹2人とも
そろって、美人だし、女子力も高い!」
って。
それに、私、聞いちゃったんですよね。
やよいちゃんがトイレに、私が、ベランダ
に行っている間の【姉妹の会話】の
一部を……。
ベランダからリビングに戻ろうとしてた
時、聞こえてきたんです。
「こしまさ……。今度、予定合う時、こっち
に来な。少しはさ、簡単な料理とか教えて
あげるからさ……。
あと、大学で、変な男に騙されたり、
変態野郎にツイていくんじゃないよ!
あんたさ、そこそこカワイイ顔立ちしてん
だからさ!」。
「ウン。大丈夫!そこは、お母さんの
言いつけ、ちゃんと守ってる!
あと、ありがと。今度電話するね」。
「了解」。
短い時間でしたが、姉妹だけの空間…。
ちょっと、入っていくのが躊躇われ
ましたね。
それで、みどりちゃんもこしまちゃんも
お互いのことを真に想っていること、
そして、何だかんだ言う姉だけど、
現役女子大生の妹のことを心配している
のが、よ~く分かりました。
それで……、話を戻します。
玄関で、丁寧な挨拶をしてくれた、
こしまちゃん。
アッと思い出した感じで、
「真子さん。あの……。結婚式の披露宴
のこと、部長に話してみますね!」と。
私も、アッと思い出しました。
あれ夢じゃなかったんだ……。
本当に良いの……と心の中で考えます。
だって、私は、明慈大学のОGでもなん
でもないし、明慈と何のかかわりもない
のですから。
「えッ!?本当に、やってくれるの?」
と口を開こうとした瞬間……。
今度は、やよいちゃんが、私に。
「ウチらの親友の結婚式って言うこと
なら、絶対に、部長も大丈夫です!」と。
親友と言ってくれたのが、本当に
嬉しかった……。
そんな私たち3人を、みどりちゃんが
優しげな表情で見守ってくれていました
……。
しばらく、玄関で、別れを惜しむ
女子4人。
最初に、エレベーターホールへと向かった
のは、唯一の既婚者である不動みどり
ちゃんでした。
「じゃあさ……。真子ちゃん、また」と
言って、早足で……。
彼女の脳裏にはもう1人の男性のことしか
ないんだろうなぁ、って思いました。
その、みどりちゃんに、女子大生2人も
追従していきます。
2人は、何度もこっちを振り向き、手を
振りながら……。
部屋に戻ると、急に、静かになって
しまい、寂しくなりました。
だけど、余韻に浸っているヒマはない!
はぁ~と大きく息を吐き、動き出し
ます。
やらないといけないことは山ほどあり
ますから。
それで、式の準備の作業をしている時、
フッと思い出したのです。
夜、決めたこと。
そう……。都和ちゃんのことです。
気が変わらないうちにと、私は、金庫を
置いてある部屋へと向かいます…。
(著作権は、篠原元にあります)