第十七章 53
文字数 1,413文字
制服姿の学生が多い。
おそらく、中学生か。
男子は、おとなしい。
各自、読書したり、車窓から外を
眺めたり、眠ってたり……。
「立派だぞ、男子諸君!」と思う。
その反面、コイツらは……、と
苦々しく思う、義時。
まさに、『ピーチクパーチク』、だ。
いっそのこと降りて、次のバスに
……とも考えたけれど、次のバスも
コレと変わらなければ、何の意味もない。
それに、時間も無駄になるし、何より
妻に、一々説明するのが面倒くさい。
だから、我慢することにした。
案の定隣を見ると、妻は平然としてる。
理由なんて100%決まってる。
「同類だから、平気なんだ…」。
もちろん、口には出さないし、出せない
けれど。
心底、子どもは、男の子が良いなぁと、
義時は、本気で思った。
将来、家族旅行で、車で出かけるって
ことになった時、妻と、女の子たち
―娘ばかり―だけだと、車内は、
東京駅のホーム以上の【喧騒】だろう!
やっと。
本当に、やっと。
解放された……!
バスから―おそろしく騒がしい空間から―
飛び降りた、義時は、大きく伸びをする。
田舎だから、というより、静かな環境
だから……空気が、いつもの千倍もうまい
感じがする。
遠ざかって行く、自分を苦しめてた存在が
【満載の】バスに向かって、
「じゃあな、もう2度と乗らないぜ」と、
手を振った。
高校卒業の時も、そうだったか。
クソ怖い、暴力教師と2度と会わないぜ
という意味で、校舎に向かって、手を
振った……。
そんな感じで、一瞬、懐かしさに
浸ってたら、隣の妻に、笑われた。
「何やってんの。
え…?今、誰にやったの?」。
答えに窮する、夫。
数分後。
バス車内とは雲泥の差の、
上品な空間・敷地を新婚夫婦は
歩いていた。
高級・老舗旅館の庭園。
どこかから、鹿威しの音が聞こえて
きて、落ち着く。
そこは、義時の母・定美が、特別な
ルートで予約し、また、事前に会計も
済ませてくれている、由緒ある宿。
高台にあり、別府湾を見渡せ、芸能人も
お忍びで来るという旅館だった。
フロント前で、二人はチェックインの
手続きをした。
冷たい抹茶、そして、案内の女性が
出してくれた、地元の銘菓。
疲れた体に、ジーンと来る。
もう今日は、絶対に、この旅館の中から
一歩も出たくない……、真子は、
そう思った。
30代半ば位の仲居さんに導かれ、
入った部屋は、純和風で、まるで
陛下たちが泊まるような大きさで、
目を見張った。
エレベーターの中で、「本日のお部屋は、
最上階にありまして、別府湾、そして、
別府市の湯煙をお部屋のどこからでも
眺めていただけます」と教えてもらって
たけど、まさに、その通り。
本当に、完全なオーシャンビュー!!!
一通りの説明や、食事の時間の案内を
終えて、担当の仲居さんが、部屋を出て
行った。
真子が、仲居さんが去ったのを確認して、
大きな声を出して、バルコニーに駆けて
行き、別府湾を眺めだす。
荷物とかは……そのまんまだ。
子どものように騒ぎながら、別府湾や
市街を見つめている妻を、微笑ましく
見つめながら、義時は、荷物の整理とかを
始めた。
案外子どもぽっいところがある、それと、
片付けとかはあまり得意じゃない……、
結婚後に知った―気づいた―ことだけど、
そんなとこも含めて、彼女―妻―が、
大好きだ!!
(著作権は、篠原元にあります)
エブリスタ、ノベルデイズ、
アルファポリス、なろう、に掲載中
無断転載などは固くお断りします
コメント、感想、高評価、シェアとか
大歓迎です!