第十四章 23

文字数 1,271文字

良家に生まれ、「文武両道」と言われも
したが、人知れず苦労し、中学時代には、
部活の先輩・同級生・後輩から総スカン
され、陰湿なイジメの対象となっていた
美織は、思った。
「あの人もそんなに苦しいところ通って
きたのね。
違うわ……!私以上に、大変なところ、
通ってきてる!」。
それなのに、自分は……!
最初から嫌って、敵対し、失礼な態度を
とり、【悪い報告】を姑に上げていた…。


姑が話終えた。
美織は、涙ながらに、伝えた。
「お、お義母さん。
すみませんでした……。
そんなこと、全然、知らずに…。
あ、あたし……、柳沼さんのこと嫌って、
悪い内容のメールしたりして……」。

涙を流し、顔を真っ赤にしながら、
言葉をつなごうとする嫁。
そんな嫁を前にして、定美は、胸が
熱くなった。
「義治は、本当に、良い人と一緒に
なれたなぁ」と改めて思う。
また、同時に、「義時も、真子さんと
言う、心素直で、優しい女性と結婚
できる!」と思う。
本当に、自分は恵まれていると、思った。

そして、定美にも、温かい涙が流れてきた。
嫁の手を握って、言う。
「美織さん。ありがとうね。
分かってくれて、ありがとう……」。




しばらくして、姑と嫁は、2階の洗面所で
顔を洗って-嫁の方は、化粧も直して-、
1階に降りた。
美織の心は、顔同様、スッキリしていた。
心が晴れたような、感じが、する…。
子どもたちの騒ぐ声が、聞こえる。
ずっと欲しかった、赤ちゃん。
長年、不妊で苦しんだ。
不妊治療も大変なことばっかりだったし、
ずっと結果がでない中で、夫婦間も
冷めきり、離婚の一歩手前まで行ったこと
もある。
でも、周りの協力もあり、諦めずに続け
れて、やっと長女を授かれた。
その後は、すぐに、長男までも……!!
幸せだった。
今も、何だかんだあっても、幸せ。
それに加え、妹が、できる……!!
そう言えばと、思う。
「私、小さい頃から、ずっと、妹が、
ほしかったんだっけ」と。
良い妻、良い母、良い娘、良い嫁。そして、
良い姉(義姉)になるんだと、美織は決めた。


定美は、晴れやかな表情の嫁を見て、
感謝した。
わざわざ、いすみまで、話しに来て
良かった。
「これで、義時と真子さんの結婚の
最大の妨害は、取り除かれたのね」と、
思った。
そう思っている時に、嫁が声をかけて
くれて、喜びを倍増してくれた。
「お義母さん。今度、式の前にでも、
もう一度、真子さんとお会いしたいです。
良ければ、お義母さんと真子さんと私の
3人で女子会ランチに、行きませんか?
私ももっと真子さんのこと知りたいし、
仲良くなりたいです」。




美織に打ち明けた次の日、定美は、
真子に電話をかけた。
目的は、2つ。
1つは、自分と嫁と真子の3人でのランチ
のお誘い。
そして、2つ目……。
話すのが心苦しいけれど、もう、栄の家
に嫁に来るのが決まった人だから、
話さなければならない。
このまま、なぁなぁにしておくわけには
いかないことなのだから…。

でも、本当に、正直言えば、「怖い人ね。
結婚したら嫁姑の問題が出てきそう……」
と思われたくなかった、真子に。
だから、黙っていよう、もう時効だから、
とも考えた。








(著作権は、篠原元にあります)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み