第十七章 ㊼
文字数 1,462文字
博多、だ!!
新婚夫婦、栄夫妻は、食べ尽くす…、
つもりだ。
とにかく、「ココでしか食べれない
美味しいのは、全制覇する!!」
巨体の夫も、スタイルの良い新妻も、
燃えていた。
そう。そのために、計画していたし、
念入りな調査―これには義時も全力を
かけて協力していた―も、していた
のだから。式の前からずっと……。
なので、新婚カップル2人は、
『グルメの夜』を100いや200%
満喫し尽くすために、歩きに、歩いた。
本当なら、柳川市に行かなければよかった
かもしれない……。
でも、それは、それ!
真子の大好物の鰻!!
こっちも外せなかった!!!
だから、柳川から福岡に戻って、歩いた。
しかも、結構なスペード―早歩き―で。
まだまだ、夏だから、明るい。
でも、時計の針は、ちょうどいい時間を
指している。
それに、うっすらと汗もかいたし、
何より、鰻の影響もお腹から消え去って
いる。
真子は、切り上げることにして、夫に
合図した。
どうやら、こっちは、ずっと前から
そうだったようで、明らかに安心した
ような表情を見せた。
2人は、福岡の街歩き―早歩き―を終えて、
まず、ホテルに向かった。
もちろん、歩いて……。
念には念だから、タクシーなんか拾わない。
少しでも歩きたい、稼ぎたい、空かせたい!
歩けば、歩いた分だけ、この後の、
『グルメの夜』をさらに、存分に、
楽しめるのだから!!
それに…。
またいつ福岡に来れるか分からない
のだから、絶対に後悔したくないし……。
ホテルは、駅すぐ近くのビジネスホテル。
全国チェーンで、格安が売り。
どう考えても、新婚旅行の夫婦が泊まる
感じ、じゃないけれど……。
義時も真子もそれで良いと思った。
この3日目は、ホテルに、部屋にこだわら
ない!!
こだわるのは、とことん追求すべきは、
博多のグルメなのだから!!!
ホテル料金を安く抑えて、その分、グルメに
充てることに決めていた。
でも。2人で、部屋に入って、真子は驚いた。
こんなに狭いんだ……。
覚悟、想像していた以上に、狭く感じた。
まぁ、一泊目と2泊目がスゴすぎたから
とも言えるけど……。
それより、何より、あるトコを見て、目が
点になる。
エッ!?
声が、出た、思わず。
夫は、部屋に入って早々、トイレに入って
いたから良いけど…。
真子の目は、部屋の奥の、ベッドに釘付け
だ…。
目を疑った。
1度、閉じて、もう1度、開く。
ゆっくりと……。
でも、やはりと言うか、当然、現実は
変わらない。
「ベッドが一つしかない!?」
自分のうちでは、さすがに、安い宿とは
言え、ツインの部屋を予約した……
はずだった、けど!?
急いで、夫のいない間に、デスクの
電話をとって、フロントに確認してみる。
返ってきたのは、「ダブルのお部屋で
ご予約いただいております……」
だった。
それから、「生憎、本日、満室でして、
他のお部屋のご用意は……」と。
本当に冷汗が……。
「これで、二人で寝るの?」
確かに、寝れないサイズではないけど。
アパートでも、それから、1泊目も2泊目も
別々の布団(ベッド)で寝ているから。
イザ、ダブルベッドを目の前にすると、
戸惑う。
もう、結婚してるんだから、問題はない。
それは、分かる。
でも、異性と、一つベッドで寝る―文字
通りの睡眠―なんて、今まで、経験がない。
それに、性格上、寝るときは、自分だけの
ベッド、布団で寝たいし……。
でも、今更、どうこう言えないし、ホテルを
替えるわけにもいかない。
それに、夏といえど、どっちかが床に……
なんてことも、あり得ない!
真子は、覚悟を決めた!!
(著作権は、篠原元にあります)