第十七章 ㊽

文字数 1,798文字

急ぐわけでもなし。
別に、もう夜遅くで、各店の閉店間際でも
ないし。
それに、結構、汗をかいてるから……。

と言うことで、ベッドの件で覚悟を決めた
ばかりの真子と、
そんなの露とも知らない義時は、
シャワーを浴びることにした、まず…。
汗を流してスッキリしてから『博多の
美味いもの』を食べ尽くすため、
出かけよう。
それでも、遅くない…と。

最初に、義時。
次に、真子が順番に入る。
夫の方は、結婚したばかりの妻と一緒に
シャワーを浴びたい!
「それが男のロマンだろ!普通!!」と
思うけど。
 絶対に、言えない。
断られるに決まってるし、性格上、彼女の
その後が、怖い……。
 だから、急いで、浴びる。
妻が待ってるし。
何より、こっちは、ずっと付き合わされて
腹が、彼女の、何十倍も減ってるんだ…。


で、義時を、かなり待たせた真子が浴室から
出てきて、それから、5分後、2人はホテルの
ロビーを出た。
真子が、事前に用意していたメモ(厳選した
店のリスト)を手に持っている。
何店かを厳選した……。
まずは、その店などの前に行き、雰囲気とか
客の入り……を偵察することになっている。
で、良いと思う店を『ハシゴ』するつもり。

で、2人は、一番賑やかで、外観から
「絶対にウマいと分かる」店に、その日の
第一店目として入った。
威勢のいい声が2人を迎える。

席に通され、メニューを渡されて。
数分、いや十分位、2人して迷った。
 で、そっと妻の方が夫に言う。
「ねぇ。選びきれない!
どれも美味しそうすぎて……。
ここ、オンリーにしない?」
 夫も、即座に頷く。
店内の雰囲気、店員たちのサービス態度、
次から次へ入ってくる客たち……。
「ここは絶対ハズレがない」と分かる。
だから、予定を変更して。

 この、一店目で食べ尽くす。
ここで、終わらす覚悟で、食べ尽くす。
新婚夫婦は、決めた……。



栄夫妻は、その晩。
食べて、飲んで、食べて、飲んだ!
バックヤードで店員たちが、囁くほど。
正直、店員たち、若いカップルが、
あんなに食べるのを、それまで目にした
ことがなかった……!!

もつ鍋、水炊き、明太子と唐揚げ!
ごまさば、鶏皮、餃子。
とにかく食べ尽くす。

 店員が、運んでくる。
テーブルがいっぱいになる。
で、夫婦がどんどん皿を空にしていく。
福岡で、わんこそば状態だ。


大満足の栄夫妻は、タジタジの店員一同に
見送られて、店を出た。
 食べて、飲んで、汗をかいていたけれど
―店員たちの方がある意味かいてる―、
気持ちいい風が博多の街に吹いていた。


2人は、さすがに、「食べ過ぎたねぇ」と
腹をさすりながら、1度、そう1度だ…、
ホテルへ戻る。
まだ、あと一つだけ、どうしても、
『遂行』しないといけない『ミッション』が
あるのだから!
それを、諦めては、この【3日目】を
コンプリートできない!



でも。
とりあえずは……。
ホテルに戻る。
で、狭い―1泊目、2泊目と比べたら―
部屋に入って。
腹を休めた。
さすがに、キツい……正直。
で、テレビをつけて、冷蔵庫の中の
サービスのミネラルウォーターを
飲みながら、2人で、明日のことを
話す。
 打合せだ。
明日は、明日で、結構、忙しい。
 まぁ、一生に一度の新婚旅行、
それくらいが良いのだろう。
若いんだから!!!


しばらくして。
夫の方は、大浴場に行ってくると、
言い出す。
妻は、ビックリした。
あんなに食べてすぐにお風呂!?
しかも、まだ、このあとがあるのに
……。
 それでも、夫は、「大丈夫。
風呂入った方が、また、腹も空くし」と
言って、出て行った……。

残された妻は、はぁとため息をつく。
何か、自分と全く違うなぁと思う。
自分ならあり得ない……。
 あんなに食べて、で、このあとも
あんのに…。
でも、男の人ってそうなのかもしれない、
そうも思う。
 とりあえず、ほおっておくことにした。
考えても分からないし……。


ぼぅーとしながらテレビの画面を
見つめてると、いつの間にか、ウトウトと
してしまって……。
 気づいたとき、大浴場から戻って来た
夫に、優しくだけど、肩をつんつんされて
いた。
 思った。
「あぁ、夫婦らしいなぁ」と。
 幸せだった。
それに、お腹の具合も、7,8割位になってる
感じだ……。




若い新婚夫婦は、再度、夜の街に出かけて
行く……。












(・著作権は、篠原元にあります

・いつも、読んでいただきありがとう
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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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