第十五章 ⑯
文字数 1,980文字
時間枠が一致するので、
交互に読まれることをすすめる)
フッと時計を見ると、もう、良い時間に
なっていました。
いつもより集中して、私自身、かなり没頭
していたみたいです。
何気なく呟きます。
「そろそろ終わりにして、
ご飯にしよっか……」。
それに対し、一番最初に反応したのは
退勤してすぐに来てくれた刑事さんでした。
「そうだねぇ!もう、お腹さ、ペコペコ
だよ!」。
当然でしょう。一日中、前に本人が言って
いた言葉を借りれば、『セクハラとパワハラ
の巣窟的職場・男社会の警察』で必死に
働いて、その後、そのまま駆けつけて
くれたのですから!
でも、こしまちゃんは、黙々と手を動かし
続けていました。
刑事さんの妹の方は……、やっぱり…。
「お姉ちゃん!もう少し頑張れないの!?
ソコにあるアレだけは終わらせてよ!」と。
でも、結局、社会人であるお姉ちゃんが、
学生である妹ちゃんに、今回は、勝ち
ました。
それと、やっぱり、こしまちゃんも
やよいちゃんもお腹がへっていたので
しょう。
夕食タイムに移行することが、全会一致
で決定しました。
私は、昔の馴染みで、電話帳と一緒に大切
に保管していたピザ屋さんのチラシを
女子大生2人の前に置いて言いました。
「お礼だから……。
遠慮なく、好きなピザを選んでね」。
こしまちゃんもやよいちゃんも歓喜の声を
上げてくれました!
良いですね、若い子の、歓喜の声って…。
もちろん、変な意味じゃありません
けど!
ちなみにですが、すでに、キッチンには、
3人が来る前に作っておいた、回鍋肉と
麻婆豆腐がありました。
炊飯器の中ももう準備万全のはずでした。
でも……、あまりもの大活躍です、3人
とも。
それに、やよいちゃんと再会できたの
です!!
白米は冷凍すれば、自分の分として後日
食べれますから-数日分として-、
お祝いとお礼の意味もかねて、
ここは奮発して、ピザを頼むことにした
わけです。
主食はピザ。
おかずとして、回鍋肉と麻婆豆腐。
冷蔵庫の中には、買い置きのプリンや
ゼリーもあるので、デザートの心配も
なし……。
そう思いながら、女子大生の2人の前に
ピザのチラシを持って行ったのです。
大喜びの2人を横目に、またまた缶ビール
を手にして不動刑事さんは、
「真子ちゃん。別にさ、気を遣わないで
良いのに……。
ってかさ、こしまにさ、選ばせらたら、
絶対に一番高いのチョイスするよ、
この子……」と言っていましたが、
私は、それでも良いと思いました。
遠慮なく、好きなのを頼んでほしい……と。
そして……。
しばらく、女子大生2人は、チラシを
真剣に見つめ、また、相談し合い、
2枚のピザを選び終えました。
ちなみに、ガッツリと両方ともLサイズ。
2人ともスタイル良いのに……と羨望的
感情を抱いてしまいましたね。
で、一応言っておくことにしました。
「あの……。一応ね、私が今日作った
回鍋肉と麻婆豆腐もあるんだけど……」。
「最高ですね!トピオのピザと中華料理
のおかずと、それから、お酒たち!!
今日は、女子飲み会ですね!」と、
嬉しそうに返してくるこしまちゃん。
それを聞いて、ボソッと、不動刑事
さんは、「こしまさぁ。あんたさ、
着瘦せしてるだけでしょ。
服脱いだら、ポコッとじゃん……。
少しはさ、自制しなよ。
そんなんだからさ、男できないし、
これからもさ、無理なんだよ……」と。
もちろん、それで、こしまちゃんが
黙っているわけありません。
が……、私も、正直慣れ出したので、
「はいはい、じゃ、電話してくるね」と
言って、チラシを手に、キッチンの方へ
向かうことにしました。
後ろから仲良し姉妹の叫びが聞こえて
来ますが、『単なるじゃれ合い的』な
ものだと分かっているので、逆に
微笑ましいです。
おそらく、やよいちゃんもそう感じて
いたはず……。
で、私は、ピザ屋さんへ電話をかける
のです。2人の叫びが電話の向こうに
聞こえないようにキッチンの引き戸を
閉めながら…。
で、ピザ屋さんのおそらくバイトの人
でしょうか……、彼にオーダーを
伝えながら私は幸せでした。
何故って、後輩的存在、自分より年下の
子たちにおごってあげれることが
嬉しかったんです。
それまで、ぼっちだったから、誰かと
一緒にランチとかはなかったし、当然、
誰かにおごってあげるということが、
なかったんです。
まぁ、一時期、しーちゃんと仲良くなり、
ラーメン屋に行ったり、旅行にも行った
りしましたが、おごってくれるのは、
いつも年上のしーちゃんでした。
それはそれで有難かったし、姉ができた
ような感じでしたけど……。
その日、私は、無邪気な後輩ができた
ようで、それから、その子たちに、
おごることができる……ってことが、
本当に本当に嬉しかったんです。
今思うんですけど、おごってもらうのも
当然感謝なことだし、嬉しいですけど、
おごってあげれるって言うのは、
もっと満足感があるものなんですね……。
(著作権は、篠原元にあります)