第十七章 ㊹
文字数 1,260文字
決めていた、店が、前方に見えてくる…。
義時は、目を疑った。
行列……いや大行列、長蛇の列が……!
ハイ、これダメですね。
彼は、並ぶのが大嫌いな人間だ。
何であれ、どんな名店であれ、並ぶことに
なるなら、その時点で、「さよなら~」と
言うタイプだ。
一方、新妻の方は。
美味しいなら、何時間でも、並べるタイプ。
現に、独身時代、しーちゃんこと志与と、
ラーメンの名店に通いまくり、1,2時間
並ぶっていうのはザラだった!!
だから、柳川市の名店の前の大行列を
見た時、配偶者とは全く違うことを考えて
いた。
「うわぁぁ!並び甲斐あるなぁ!!」
「ここ、絶対、美味しいなぁ!
来て、良かったぁ!!」
即並ぶ気マンマンになった。
戦闘モードだ。
一方。義時は、「あり得ん、この行列。
どん位、待つことになるんだ!?」と思い、
妻に言う。
「いや、これ、ダメっしょ!
近くにも、ほかにも、店あるでしょ。
どっか、別の店、入ろう」と……。
即否定された。超強く……。
で、結局。
義時と真子は、公平にするため、
じゃんけんをして。
2人とも本気で。
そして、色々と考えて……。
なので、あいこでしょを3回やって、
結果、真子に軍配が上がった!
ちなみに、これは、結婚後初の
真剣勝負だった。
そして、結婚前の…、新婚旅行先を
国内か海外に決めるあのバトルのことを、
2人とも思い出していた。
その上での、真子の勝利だった…。
なので。
義時も男だ。
負けた以上は、しょうがないから、
並ぶ真子に、付き合うことにした。
「俺一人なら、絶対に、こんなの、一目で
終わりだよ。本当……」と言ってやっては
やるけれど…。
でも、妻は、ふ~んとスルー。
もう、ウナギのことしか頭にないことが、
分かる……。
だけど実際問題どうしようか。
「うなぎかぁ……」
義時は憂鬱な気分になってしまう。
そんなこと知らない妻の方は。
勝利の余韻と、これから堪能できる
美味への大きな大きな期待を胸に、
列の先の方の店入口を眺める。
大好物のうなぎ……。
うなぎのせいろ蒸しが、もう、自分達の
目の前にあるのだも。ウキウキしない方が
おかしい、絶対!!
……しばらくして……。
義時が、「こんなに待たしやがって!
少しは、客の回転をよくするため、
店側が何かしろよ!!」とキレかかって
いた頃。
で、一方の真子は、「え?こんなに早く
入れるの……!?予想の半分も、まだ
待ってないじゃん!」と、感動した!
若い、日に焼けた店員が、ムスッとして
いる男性と、超ご機嫌の女性という
カップルを席に案内していく……。
古い作りの店内は、鰻のにおいで
いっぱいだった…。
それはそれは、『幸せな空間』だった、
新妻にとって。
本当、ここにいるだけで白米2杯はいける
と、真子は思いながら、店員の後について
いく…。
(・著作権は、篠原元にあります
・いつも読んでいただきありがとう
ございます!
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お待ちしています♬
・長崎→福岡の順で、2人は新婚旅行を
楽しんで(?)います。このあとは、どこか
予想をどうぞ~! )