第十五章 ⑪
文字数 1,480文字
時間枠が一致するので、
交互に読まれることをすすめる)
ギブアップして、答えることにしました。
だって、そのまま、答えずに、じっと、
女と女で見つめ合ってるなんて、変な感じ
ですからね……。
「はい。かなり昔に、奈良の山奥の方に
住んでいたことは、ありますけど……。
えっと……?」。
彼女の答えを、待ちます。
すると、彼女、こしまちゃんと言う子が、
パッと顔を輝かせて、答えます。
「やっぱり!!
あぁ、スゴイ……!!
あの……!
ま、真子さん……。
私のこと、憶えていないですかっ!?
あのアパートの隣の部屋だった……」。
思わず、あぁと声が出ました。
で、手をパンと叩いていました!
一気に、記憶が、あの『奈良時代』まで
遡ります。
小さな木造建築のボロアパート……。
目の前に、小さな畑があって……。
そして、2階の私たちの部屋の隣に、
確か、3人家族がいた……。
ま……、まる……?
まるた、まるかわ、まるえ……。
ピンときました!
「あッ!!
まるせ……、丸瀬?!
思い出した!!
あの、丸瀬やよいちゃん??」と、一気に
捲し立てました。
……そして、私たち2人は……、
本当に本当に久しぶりの再会を、予想なし、
前触れとかも一切なしで果たして……、
ハイタッチしていました。
気づいた時には、みどりちゃんとこしま
ちゃんが、目を丸くしていました。
皆さん、みどりちゃんが連れて来て
くれたのは、妹のこしまちゃんです。
そして、こしまちゃんと帰り道が同じで、
一緒に帰っていて、こしまちゃんの姉に
挨拶して、みどり&こしま姉妹と離れよう
としていたのに、そこで、みどりちゃん
という強引な女性につかまり、私の
マンションに連れて来られてしまった
のが……、あの、丸瀬やよいちゃん
だったのです。
こしまちゃんの親友、やよいちゃんは、
そんな事情で、私と再会できたのでした。
丸瀬やよいちゃん。
亡き母と私が、一時期、奈良の山間の地に、
住んでいた頃、出会ったのです。
隣の部屋に住んでいました。
あの頃、本当に、本当に、やよいちゃんと、
やよいちゃんのお母さんに、私は、良くして
もらいました。
今で言う、ぼっちだった私は、やよいちゃん
の存在で、どんなに助けられていたことか
……。
楽しかった女子会のことも思い出します。
でも……。
その後、自分で言うのも何ですが、
波乱万丈過ぎる荒野の日々が続き、あっと
いう間に、私は、やよいちゃんたちの存在を
忘れます。
正直、私は、あの日、みどりちゃんが妹と
その妹の友人やよいちゃんを連れて来て
くれるまで、やよいちゃん一家のことを
本当の本当に忘れていたのです。
だけど、不思議なモノです。
いざ、再会してみると、旧知の大親友に
あったみたいに感動します。
そうです、私にとって、あの頃、丸瀬
やよいちゃんこそ、『心の友』、『唯一
の友達』だったのです。
だから、やよいちゃんとの日々が、一気に
思い出せたのです……。
あの公園にも行ったなぁ……。
あの川で水遊びしたなぁ……。
山に山菜採りに行って、迷いかけったけ
……。
女子会の時、両方の親や郵便局の人たちに
隠れて、2人で、こっそりお酒を味見して、
それで、「マズイ~」って言いながら、
ペッペッしたよね……。
幼き日の私とやよいちゃんの姿が、
甦ります……。
おそらく、やよいちゃんの方も同じだった
のでしょう。
「あのさぁ……。ちょっとさ、良いかなぁ」
と言うみどりちゃんの声で、我に返ります。
気づいて、見てみると、みどりちゃんと
こしまちゃんが、困惑したような表情で、
私とやよいちゃんを交互に見つめています。
で、やよいちゃんと私は、交代交代に、
事の次第を語ったのでした。
(著作権は、篠原元にあります)