第十六章 52
文字数 1,124文字
いえ、おそらく、『3度目』と『ラスト』
は、日付が変わった後の、事だったはず
ですから、その日の朝、ですね。
私は、目を開けました。
もう、カーテンの隙間からは太陽の
明かりが……。
隣では、夫が、いびきをかいていて。
幸せな気分でした。
それと、何だか、昨夜&夜の自分が、
自分でなかったような……気分。
夢のような感じ。
と言うより、思い出すと、
「本当に、アレ、私だったのかな
……」と。
否定したい気分になります。
顔が、いや、身体全体がカッと熱く
なります。
1度目と2度目は、普段のように彼が
抱いてくれたのですが…。
3度目は、ベッドの上で四つん這いに
なって、獣のように声をあげながら
彼に抱かれる自分……。
その姿をありありと思い出します。
4度目、最後は、夫に言われるまま、
彼の上になって。
もう理性も何もなく、動いていた…。
そして、全身、関節、節々、下腹部に
痛みと疼きも感じます。
不快感は全くありません。
言うならば、充実した痛み…と言うべき
でしょう。
夫を起こさないように、ソっと布団を
抜け出し、トイレに。
立ち上がると、さらに、ズキッときたの
ですが、それまで毎朝毎晩感じていた
罪責感、自責感……、そんなものとは
全く違う、『幸せ痛』でした。
その朝に飲んだ、寝起き後の1杯は、
最高でした。
私は、都内の水道水が、あんなに
美味しいのに、ビックリしました。
でも、分かります。
それまでと、心の持ち方、生き方が
変わったから、色々と周りのものも、
『違い出した』のだと。
お水も、美味しいし。
窓から見える木々の緑もキレイだし。
それで……、今。
私は、妊娠しています。
まだ、そんなに、お腹は大きくなって
いないので、言わなければ、誰も
分からないくらいですが……。
あの日。
あの愛媛県松山市で。
雪子さんと、会えたこと。
そして、真子ちゃんが言ってくれた
一言一言。
思い出します……。
全部は、絶対に、偶然ではなかったと
私は信じています。
神と言う存在なんて信じもしていなかった
ですが、今は、思います。
「雪子さんのお祈り、私の祈願が聞かれた
んだ!神様って、いる」と。
そうでなければ、ありとあらゆる条件的に
ですが、私のような女が、こんなスピードで
妊娠するなんてありえません。
と言うより、私みたいな女が、経口避妊薬を
捨てるという判断が出来たのも、全部、
神様のご介入あってのこと、だと。
私は、宗教は大嫌いです。
宗教、カルトの犯罪が世間を騒がして
います。
洗脳、リンチ、無差別殺人。
……でも、そういう宗教やカルトとは
別に、本物の、目に見えない神様がいる
んだなぁ……と実感しているわけです。
その証拠が、私のお腹の中の赤ちゃん。
「ねぇ、早く、きみに会いたいよ。
パパも楽しみに待ってるよ」
(著作権は、篠原元にあります)