第十七章 52
文字数 898文字
見るからに歴史がある木造の旅館が
あった。
ありがたいことに、足湯があって、
「ご自由にどうぞ」と書かれてあったので、
真子は、足湯に浸らせてもらった。
これくらいの時間は大目に見る……。
自分には結構あまい、真子なのだ。
でも、旦那は、周りの目を気にして。
「ここに泊まる客じゃないんだから
……」と言っている。
恥ずかしがりや……というより、男性は、
こういう時、周囲の視線が気になる生き物
なのだ。
けれど、新婚の夫は、やはり、妻に合わせて
あげた、最終的には。
妻よりかなり遅れて、足湯に、足を浸す。
そして、気持ちよさそうに……している
妻に向けて、シャッターを切る。
ちょっと、呆れるけれど、それよりも、
気持ち良さで、真子は、いっぱいなので。
何も言わない…。
普段なら、「女優じゃないんだから!
そんなに撮んないで、恥ずかしい!!」と
言うかもしれない。
しばらく、本日の宿でない旅館の足湯で
リラックスした新婚夫婦は、
また、歩きだす。
真子の大きなバッグの中のタオルが
役に立った……。
一番最初の地獄スポット『湖地獄』は、
観光客でいっぱいだった。
大きな大きな駐車場を歩いたけど、
車やタクシー、バイクの往き来が激しい。
それに、大型バスも数えきれないほど
駐まっている。
地獄の熱だけが、熱気の理由じゃないな
と、真子は思った。
ふと、隣の旦那を見上げる。
やっぱり、予想通り、写真撮影に夢中だ。
自分を撮られると、恥ずかしいし、
何だかんだ言ってしまうのだけど……。
逆に、自分以外に熱中されるのも、
ちょっと…。
女心は微妙だ。
2つの地獄スポットを観終えて、
バス停に向かいながら、義時が言った。
「いやぁ、さっき思ったんだけどさ、
実際問題、あんな地獄みたいなところ
……、まぁ、実際は、もっと熱くて、
苦しいんだろうけどさ。
そういうとこ、
行かないで良いなんて最高に幸せだな!
俺ら、天国だもんな、夫婦そろって!!」
100%同感だ。
真子は、大きく、頷いた。
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