第十七章 ㊲
文字数 1,092文字
その向こうに、彼が座る。
最愛の人……。
心の中で、思う。
「今日も、カッコいいなぁ!」
そして、ウキウキする。
このあと、九州で良いよ、と伝えて
あげたら、どんな反応するのかな……と。
注文したコーヒーとジュースが
やってくる前に、ケリをつけてしまおう
と、真子は、話し出す。
もう、単刀直入に、言うことにした。
「ねぇ。これ、私の推理なんだけど…。
九州にこだわるのって、ご両親と、あと、
おじいちゃんおばあちゃんが、九州に行った
からでしょ?」と。
そしたら……。
目の前に座る婚約者は。
目を真ん丸にして―今までにないほど
目を大きくして―、驚いた。
「何で知ってんの!?」と、顔に書いて
ある。
正直に言う。
「ちょっと、最近、定美さんと、電話で
お話して、ね。
アッ!でも、別に、定美さんが、このこと
言ったわけじゃないからね。
ただ、おじいちゃんたちも定美さんたちも
九州に、新婚旅行に行った……って聞いた
からさ」
それで推理したんだよと、真子は言う。
義時は、ドンピシャだと、恐れ入った。
さすが……!!
あと、「女の勘は、怖いな!」と改めて
思う…。
そんな義時の前に、真子は、清書した
リストを差し出した。
定美か教わって、書きまくった、
おススメのスポットと、巡り方とかの
一覧だ。
「話を聞くうちに、九州も良いなぁって
思えてきて……。
それに、やっぱり、おじいちゃんたちも
お父さんたちもそうだから、九州に
行きたいんでしょ?
だから、私も、九州に賛成だから!
見て!
こんなに、定美さんが、教えてくれたん
だよ」
嬉しそうに語る彼女を見て、安心した。
そして、ホッとする。
別に、自分に合わせてとかでもなく、
また、母―定美―に何か言われて嫌々
でもなくて、本心から、『九州案』に
賛成してくれたと、分かったから。
「どんな意図で、どんな感じで話したかは
知らんけど、よく、やってくれたなぁ」と
母の顔を思い浮かべながら、考える。
輝くような笑顔で、彼女が言ってくれた。
「じゃ、海外も、北海道もなくして、
九州で決定ね!!
このリストを参考に、色々考えよッ!」
最高の彼女―婚約者―で、俺は幸せ者
だなぁと、心底、思った。
で、その日。
2人は、すべての予定をキャンセルして。
デートの8割5分をそのカフェで過ごした。
没頭した。
九州への新婚旅行のプラン作成に。
真子は、彼と2人で、こうやって考えて、
まとめて、書き上げていくことができて、
メチャクチャ幸せだった。
何だかんだあったけど、九州に決まって
本当に良かった、と思う。
2人の周りを静かな時間が過ぎていく…。
カフェのオーナー、店員の迷惑気な視線を
のぞけば……。
(著作権は、篠原元にあります)