第十五章 ③

文字数 1,506文字

(ここでは、序章①、第六章⑩と
時間枠が一致するので、
交互に読まれることをすすめる)





そうだ……。その日、私からの差し入れの
スイカを食べて大満足している倹約家高校生
カノが、言ったんです。気を良くして…。

「あのね、今だから言えるけど……。
ここに、真子さんを誘ったのはね、
体験入学の人を1人連れてきたら、
図書カードを1枚もらえることになってる
からなの……。
それとね、その体験入学の人が正式に
入校したら、誘った方の1か月分が、
無料になるんだ。
だから、真子さんなら……と狙って、声を
かけたんだぁ。
それで、真子さんが、こうして入ったから
図書カード千円分と1か月分の受講料
無料特権を手しましたぁ!!
今まで、言わなかったけど……。
だから、本当は、こっちが、何か、
ご馳走しないといけない立場だね」と。
そして、テヘッと笑います。

そんなこと全く知らなかった私…。
本当に、そんな紹介特典があること
すら知りませんでした。
隣のお初も、驚いた顔して、「そんなの
あったの、ここ!?」と、カノに詰め寄って
います。

まぁ、魂胆はどうであれ、誘ってくれ、
そして、こんなに素晴らしい時間を過ごせる
ようにしてくれたんですから、カノには
感謝しています。
でも、ちゃんと、翌日だったかな……。
アイスを買ってもらいました、彼女には!
節約しまくっているので、お店で一番安い
アイスを従業員割引価格で、買ってくれ
ました(笑)。


さて、そんなこんなで楽しくも、忙しい
毎日でしたが、2月の上旬、もっと大きな
出来事が、私に起こります。

それは、私が、『私の名前』を受け容れる
ことができるようになった、と言うこと
です。

皆さんからすれば、「は?何言ってんの、
コイツ……。名前を受け容れるって、
どういうことだ!」、でしょう。
受け容れるも何も、名前は、小さい頃から
皆さんと一緒で、皆さん自身そのものだった
はずですから……。


でも、私は、『私の名前』が、心底嫌い
でした。
『私の名前』が、私自身を束縛していた
とも言えます。
分かりやすく言えば、私は、『私の名前』の
由来を認めることができず、その名を、
忌み嫌い、その名を嫌悪していました、
ずっと……。





母の死後、私は、母が雪子おばさん宛に
書いたけれど、結局、ポストには投函
できずに、そのままになっていた、
【あの手紙】を読んでしまいます……。
中学生の女子にとって、あの内容は、
まさに、死刑宣告書以上に重いもの
でした……。

【あの手紙】を読んでしまった私は、
自分が強姦犯の娘で、レイプという犯罪
によって、望まれずに地上に生まれ出た
存在なのだ、と知ります。
そして、生まれる前から、いや生まれた後も
愛情ではなく、殺意を注がれて、眠り、
おっぱいを吸い、生きていた……。
そして……、私は、復讐を誓うことになる
のです。

でも、もう一つ、ありました。
【あの手紙】のおかげで、私は、
『私の名前』を心底忌み嫌い、自分自身で
貶し、恥だと思うようになったのでした。


そうです!
【あの手紙】の中で、最後の方でしたが、
母は、『私の名前』……真子と言う名の
意味、由来を書き遺してくれていました。

母は、書いていたのです。
娘である『私の名前』は、
愛から、期待から、希望から
名づけられたものではなく、
ただ単に、偶発的に名付けられたもので
ある、と。

私は、信じていたのです!
あの日までは。
あの中学3年の日まで……。
「私の名前は、お母さんが、正直な子に
なってほしいと、真実なことを言う
子に育ってほしいという願いをこめて、
つけてくれたんだ」と。
だって、小学生の頃に、そのように
母から聞いていましたからね。

でも、全く、真実は、違ったのです!!
そんなの、嘘八百でした!!!!!









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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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