第十五章 ⑨

文字数 2,501文字

だけど、みどりちゃんの後ろに立っていた
女の子が、私の『疑惑』を払拭してくれ
ました。

その子が言います。
「ちょっと、お姉ちゃん!!
ここ、廊下だよ!?
何、お酒飲んだオッサンみたいに騒いで
んの!?近所迷惑だよ、警察官なのに!」。
「は、ハイッ!課長殿~!!」。
「シッ!だから、静かに!!」。
2人のやりとりを聞きながら、
みどりちゃんが、まだお酒を飲んでいない
こと、でも、ふざけていること、それから、
その子とみどりちゃんが大の仲良しなのが
感じられました。

でも、みどりちゃんとやりとりしている
子の他に、もう1人女の子が立っていました。
「えッ?みどりちゃんと、妹……。
2人で来るんじゃなかったの?
3人……。
ってか、どっちか、みどりちゃんの
妹なの?」。
困惑しました。
見てみると、まだギャーギャー、漫才コンビ
のように何か続けているみどりちゃんと
あの子を見つめながら、もう1人の女の子も
困惑しているよう……。

なので、私は、声を上げました。
「あ、あの!みどりちゃん……!!
とにかく、みんな、中に入って
もらおうかな」。
女の子とじゃれ合っていたみどりちゃんが、
ハッと真面目な表情に戻り、
「オッ!そうだね!!」と。


それで、私が招く前に、そのまま、みどり
ちゃんが、中に入ってきました。
「はいはい。二人も入りな~。遠慮なく~」
と言いながら……。
ちょっと、笑っちゃいました。
これが、良くも悪くもみどりちゃんです。
そして、私は、そんな不動みどりちゃんが
大好きです!

「おじゃまします」と丁寧に挨拶しながら、
丁寧に靴を脱ぎ、靴を揃える二人の女の子に、
私は挨拶しました。
そして、軽く自己紹介も。
「こんばんは。今日は、ありがとう
ございます。
みどりちゃんの親友の柳沼真子です」って
程度でしたけど……。

そんな私たちに、奥から、家主ではなく、
客人のはずの不動みどりちゃんが声を
張り上げます。
「お~い!みんなぁ!どうしたのさぁ。
早くあがって、あがって!!」


何か腑に落ちない点を感じましたが、
とにかく、女の子2人と家主である私は
奥へ進みます。
女の子2人が、「広~い」、「キレイ~」
と言ってくれるもので、私は、ちょっと、
鼻が高い気分でした…。
「高校生……って服装じゃないな。
大学生かなぁ」と、私は考えながら先導
します。


そして、リビングに入りました。
そこでは……。
もう、家主でなく客人のはずの
不動みどりちゃんが、寛いでいました。
ソファーに寝っ転がって、絶対に、男性が
いたら出来ないような格好をしてました。
正直、下着が見えるか見えないかギリギリ
でしたので、言ってあげようかと思ってた
ところ、例の女の子が、また、ズバッと
言ってくれました!
でも、刑事のみどりちゃん、
「へいへい。まぁさ、そんな堅いコト言う
なよな……。
別にさ、外でヤって公然わいせつってわけ
でもないしさ、ここ家の中で、女だけ
なんだからさ!」。
何となくここらへんで、分かりかけました。
この、みどりちゃんにやたら絡む方が、
みどりちゃんの妹で、さっきから、静かな
女の子は……誰だろう?


取り敢えず、妹らしき子に注意されても
そのままで、遂には、靴下まで脱ぎ出して
しまったみどりちゃんは、放っておいて、
私は、2人の女の子にも座ってもらう
ことにしました。


あのですね。
『夜の世界』でバンバン儲けていた頃に
買った、一人暮らしの女には絶対に
似合わない、大型&高級&海外輸入の
ソファーです。
女子3人が並んで座るのなんて、何の
問題もありません……。
女子1人が、ゴロ~と寝転んでいなけれ
ばの話ですが……。


だけど、下着も、もはや見えるほど、
ゴロ~と寝っ転がり寛いでいる人が
いるんです。
しかも、ちょっと、スヤスヤしかけて
いる……!?
ここ私ん家なのに!?

「ちょっと……」と言おうとしましたが、
警察官として激務だったんだろうなぁと
考えることにしてあげました。


なので、悪かったですが、女の子2人には
座布団で我慢してもらいました。
「床なんて、申し訳ないなぁ。」と思い
ましたが、
2人とも、「ありがとうございます!
お気遣いなく」と笑顔で言ってくれました。
本当に良い子たちを、みどりちゃんは、
連れてきてくれました……。
もうちょっと、大人らしくしてくれて
れば満点でしたけどね。


で、私は、家主のごとく寛いでいる
みどりちゃんと、2人の女の子をリビング
に残して、キッチンへ急ぎました。
そして、冷蔵庫から、急いで、前に買って
あったリンゴジュースを。
みどりちゃんだけなら紅茶かコーヒー
ですけど、大学生らしき2人もいると
なったらジュースが無難だろうと言う
判断です。


4人分のコップを運んで、リビングに戻ると
みどりちゃんは、完全に、スヤスヤ……
でした。
女の子2人は、キョロキョロと部屋を見渡し
ながら何か落ち着かなそう……。
そんな2人の前に、「どうぞ。リンゴの
ジュースですけど、大丈夫かしら?」と、
みどりちゃんに配慮して小声でジュースを
置きます。
2人とも、「ありがとうございます」と
小声で……。

でも、その瞬間!!
みどりちゃんが、ソファーからガバッと!
「オッ!真子ちゃん、待ってました~!
それはさ、アップルかなぁ?!
まぁ、子どもたちは、それで良いとしてさ、
私は、真子ちゃんの淹れてくれる最高の
味の紅茶がさ、良かったけどさぁ」と。

私が、「じゃあ、今から、淹れるネ」と
答えようとする前に……、
またもやです!!
例の『やり取り』がスタート、です。
「ちょっと!お姉ちゃん!!
失礼でしょ!
それでも、社会人!?
ってか、そっちこそ、子どもじゃん!」。
「うっさいよッ!こしまッ!!
ここはさ、私の第二の家みたいなもん
なんだよ。
大人はさ、外で、あんたみたいな子どもがさ
想像できないほどさ、ヘロヘロになるまで
働いてるからさ、家じゃ、これくらいで
良いんだよ」。
「はぁ~?」。
以下略……。


でも、しばらくして、2人ともおとなしく
なりました。
姉妹そろって、のどが渇いていたのでしょう。
2人そろって、美味しそうに、
リンゴジュースを飲み干します。
で、もう1杯飲みたそうな表情……。
本当に、そっくりでした。
口ではなんだかんだ言い合っているけれど、
「あぁ、姉妹だなぁ」と思いました。





(著作権は、篠原元にあります)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み