序 章② 

文字数 2,187文字

私の料理教室の先生は前希子先生。
50代後半のきれいな人で、
いつも元気です。
クラスメートは、当然ながら、
みんな女子。
一番下は高校1年生のお初ちゃんと
言う女の子。
そして、一番上は77歳の
一人暮らしのおばあちゃんです。
賑やかすぎるような空間で、20名強の
明るいメンバーが、日々、
新しいメニューに挑んでいます。

私は、この教室に、
4か月通わせてもらいました。
4か月間、平日はほぼ毎日、通いました。
そして、ここでは、ただ料理を
学ぶだけではなく、一生ものの
出会いもありました。
同年代の女の子たちと仲良くなれました。
それで、みんなで、料理にトライし、
ある時は相談し合ったり、
悪ふざけしたり、遊びに行ったり……と。

基本、この教室では、4人1組の班に
なって、調理していきます。
私は、いつも、仲良くなった同年代の
子たちと、組んできました。
お初、カノ、そして、新婚さん、です。
ちなみに、お初とカノは、私より年下で、
新婚さんは私の先輩です。

ちょっと話がそれますが、
みんなのことも紹介させてください。
カノは、料理教室のクラスメイトで
あると同時に、職場の同僚でも
ありました。
本名は、彼嶋璃瑚。カノシマと読むので、
みんなから、カノと呼ばれています。
都立高校に通う18歳で、
女の子にしては長身、そして眼鏡が
似合う可愛い子です。
カノは、平日学校が終わったら、すぐに
スーパーに飛んできて、
その日によりますが、2時間、
3時間、4時間とバイトします。
それに、私が出ない土曜日は、
丸一日のシフトで入っているそうです。

そうです、私が、教室に通い出す
キッカケもカノでした。
スーパーの更衣室である日、
カノと話しました。
それから、顔を合わせるうちに、
少しずつ仲良くなっていき、ある時、
誘ってもらったのです。
「もし良かったら、一緒に、
料理教室通いませんか?」と。
それからです、私の料理教室通いが
スタートしたのは。

それから、お初は、教室で
一番若い子です。
本名は、江戸河櫻子。
私も小さな頃からずっと見ている
探偵モノのTVアニメが大好きで、
一番話が合うとすれば、それは
お初です。
いつもお団子ヘアにしている
高校1年生で、本当にかわいい子です。
カノがしっかり者で、何から何まで
きっちりとこなすタイプだとすれば、
お初は、妹キャラで、見てるこっちが
つい手を差し伸ばしたくなるような、
そんな女の子です。
それで、なぜ、
お初と呼ばれているかですが、
とにかく、教室で、やること
なすことの一つ一つが、
すべて初体験なのです。

どうやら、一人っ子で、これまで
お姫様のように育ったらしいので、
まな板、フライパン、ミキサー、
炊飯器、全部初めて触ると言う
感じでした。
「私より下もいるんだ……。」と
ビックリすると同時にちょっと
安心しました、正直。
ちなみに、お初は、いっつも、
「彼氏ほしい!」と言っています。
実は、教室に通うようになった理由も、
「料理上手になったら彼氏できるよ!」
と友達に言われたからだそうです。

私は、不思議で仕方ないのです。
小柄でお姫様のようで、色白で、
まさに『THE・女の子』のような
お初に、何で彼氏が出来ないのか……。
本人曰く、「彼氏いない歴=年齢」
らしいので、今の男の子は行動力が
ないのかな、と思います。
健気なお初は、将来の彼氏を
想像しながら、
「どんな味付けなら、彼が喜ぶかなぁ?」といつも試行錯誤しています。
時々、妄想に没頭しすぎてしまい、
レシピ通り作らなかったり、
先生の指示を聞いていなかったり
するので、お初の担当した料理は、
とんでもない味付けのものに
なったりもしますが、それも、
お初だからこそ許せます。
でも、やっぱり、正直、お初の作ったのを
食べる時は、緊張します。
口に入れるのに勇気が必要です……。
その点、そつなく何でもこなすカノの
料理は、安心です!
あともう一人、新婚さんです。
その呼び名の通り、つい最近
結婚したばっかりです。
本名は、氏家さなみさん。
スゴイ有名な通信販売会社の
コールセンターでオペレーターの
仕事をしています。
そんな仕事をするだけあって、声が
めっちゃキレイな人です‼
もちろん、顔もです。
そう言えば、先日、すごく
ルンルンしていました。
珍しく鼻歌を歌っていたので、
訊いてみました。
すると、「今日ね、電話受けたらね、
一瞬相手がハッて黙っちゃたのよ。
『どうした?』って思ったらね、
2,3秒して『すいません。いやぁ、
すごっくキレイなお声ですね。
ビックリして、声が出なく
なりました。』だって!
嬉しいなぁ。こんなこと
言われたの、初めて‼」と
言っていました。
大袈裟ではなく、本当に、
聞いていて癒される声なんです。
ありとあらゆる意味で、
私の先輩的存在で、尊敬している
女性です!

私は、最近思います。このタイミングで、
新婚さんと出会えていて、新婚さんと
仲良くなれていて、本当に良かったと。
新婚さんには、準備のことで相談に
乗ってもらったり、今後新しく始まる
生活のことでアドバイスもらったり、
いっぱい助けてもらっていますから……。

お初、カノ、新婚さん。
みんな、素晴らしい人です。
本当に会えて、良かった。

でも、お初やカノと一緒に
料理教室で笑い、しゃべり、
共同作業をして、完成したものを
食べる…そんな時間は、今日で、
終わりです。
カノと一緒にスーパーで働くのも、
今日が最後になってしまいます。
なぜなら、私、柳沼真子の生活は
あと数日をもって終了するからです。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み