第十六章 ㉖
文字数 2,747文字
のは、お初とカノだけではありません。
料理教室から、もう2人来てくれました。
お初とカノは『未婚者テーブル』ですけど、
前先生と新婚さんこと氏家さんは、
当然、『既婚者テーブル』です。
ちなみに、そのテーブルも、既婚男性4人と
既婚女性4人の組み合わせ……。
で、みんな配偶者とは来ていない人達です。
それと、女性陣は、前先生、新婚さん、
そして、今日はエスコート役や『新郎新婦
紹介』で大活躍してくれたみどりちゃん。
あと、もう1人若い女性……が赤ちゃんと
一緒に。
まぁ、その女性は、新婦側……と言うより、
そのテーブルに座っている既婚者の皆さん、
全員が、新婦側の招待客なのですが……。
前先生、みどりちゃん、新婚さんと
一緒に座る女性と赤ちゃんについては、
また、後程…。
それで…、そうです。
料理教室の皆さんを招くとなると、それ
だけで、20人枠になります。
そうなると、いろいろと……なので、
教室の皆さんには、また別の日に、
どこかレストランで……と言うことに、
前先生と相談して、そうしてもらいました。
それで、式には、教室を代表して、前先生
と、私と同じ班だった新婚さんとお初と
カノだけ来てもらうことに……。
そうなっていたのです。
そして、今日、来てくれました、4人は。
でも……。
先生たちは、教室のみんなからの愛情と
優しさに満ちた『お祝いのケーキ』を
持って来てくれたのです!
そうです。
私を除く、前先生&約20人の教室生の
みんなが、私達夫婦のために前夜必死に
手作りで完成してくれた、『約束の
ウェディングケーキ』です……。
その大きな大きなウェディングケーキを
4人はタクシーに乗って、式の2時間半前に
ホテルに届けてくれたのです。
そして、それから、ずっと、ホテルで待機、
あと準備を……。
本当に、頭が下がります。
そうなのです。結婚式のことを相談して、
先生から、「そうですね。じゃあ、私達
4人だけ参列させてもらいますね。
他の皆さんとは、また別の日に、ぜひ、
お食事会でもさせてくださいね」と、
ご返事いただいた、次の日……。
料理も実食も後片付けも全部終わり、
皆が帰り出していたのですが、私だけが、
前先生から止められました。
「ちょっと……。柳沼さん、お話が
あるので」と。
それで、お初やカノも、先輩方もいなく
なって…、ついに、先生と私だけになる
教室。
いつもは、騒がしすぎて、先生が、
「静かに!」とか「皆さん、よく聞いて
くださいね!」と叫んでるほどなのに、
シーンと……。
何か不思議な感じがしました。
で、それは良いとして、その夜、
先生が言ってくださったんです。
あのね柳沼さん……と。
それで、先生が伝えてくださったのは、
感動的内容でした。
同時に、恐縮して、遠慮してしまい
ました、咄嗟に私は。
でもね……と、先生は言います。
「柳沼さん。これはね、一部の古参の
方々とお話したんだけど。
皆さん、是非って……!
他のね、結婚式には参列できない皆さんも
同じだと思うわ。
だからね、是非、私達にね、お二人のため
の、ウェディングケーキをつくらせて
ほしいの。
迷惑でなかったら……」。
迷惑なんて……!!!
そんなこと絶対にありません!
ただ、嬉しくて、喜ばしい。
「そこまでしてくれるの!?」と。
1年も在籍していない私なんかのために
……。
それで、その日、決まったのです。
私達夫婦の結婚披露宴のウェディング
ケーキは、前先生と教室の皆さんが
作ってくださるということが……。
すぐに……、翌日ですが、婚約者と
居村さんに連絡したのを憶えています。
婚約者は、最初戸惑っていました。
あと、やっぱり驚き……。
でも、最終的には喜んでくれて、
「材料費とかは払わないとね。
それは、伝えといて」と。
そして、居村さんは……。
こちらも、驚いていましたが、
すぐに、「分かりました。それでは、
調理部に、この後、伝えます」と
言ってくれました。
そして……。
昨日の夜までかけて……、私は、
婚約者の家族との食事のため加わりません
でしたし、仮に加わろうとしても、絶対に、
「あなたが来てどうするの!?」と追い
出されるだけだったでしょうが……、
教室の皆さんは、さっき、お初が言って
いましたが、日付が変わるギリギリまで
私達夫婦のために頑張って、顔をクリーム
だらけにしながら、今日この日のための
ウェディングケーキを完成させてくださり
……、朝早くから、前先生たちが運んで
来てくださったのです!!
ちょっと……と、カノとお初に呼ばれて、
見に行って、私は、大袈裟でなく、
卒倒しそうになりました。
その、豪華さ、大きさ、美しさ…!!
まさに、壮大なウェディングケーキです。
どっからどう見ても、手作りには見え
ません……。
一流ホテルの、そうです、つまり、列席者
の方に、何も言わなければ、普通にホテル
が用意したケーキだ……と思うだけか、
もしくは、何も考えないで食べて、
「美味しい!」と唸るだけでしょう。
でも、まさに、教室のみんなが、前日の
スケジュールを全部取止めて、深夜まで
かけて、私達夫婦のために手作りで完成
させてくれた、『約束のウェディング
ケーキ』なのです!
婚約者もやって来て、思わず「オォ!!」
と唸っていました。
で、大好きで、趣味であるカメラで撮影を
始めていました。
「何枚撮るんだよ。私のウエディング
ドレス姿、さっき撮ってた時以上に、
撮ってんじゃん」と思う程(笑)。
居村さんと、総料理長、それから調理部の
次長さんも、驚いていましたね。
ちなみに、ここまでの面々が出てきている
のは、ひとえに、婚約者の父が、総支配人
の大親友であるからで……。
まぁ、それは良いとして、総料理長さんが、
「このケーキを……。皆さんで、お作りに
……?」と前先生と3人に質問してました。
震える声で…。
そして、調理部次長さんも、しきりに、
「スゴイなぁ、スゴイなぁ」と。
居村さんは、私と前先生に断った上です
けど、私の婚約者同様、写真を撮って
いました、何枚も何枚も。
「結婚披露宴のウェディングケーキが、
このように準備されたのは、
初めてです!」と言いながら……。
いつになく興奮している居村さんを見て、
私も、興奮してきました。
「本当に、これってスゴイこと
だよなぁ!」と……。
そして……。
私が指示していました、気づいたら、
婚約者に…。
「こっちからも撮って!」、「先生達
とケーキを一緒に写して!」と。
総料理長が笑いながら、前先生に、
「こりゃ、本当に、我々顔負けですわ
!!」と言っているのが聞こえましたが、
それは、本心からの……、そう、
本当に、一流ホテルの総料理長に
認めさせるほどの手作りウェディング
ケーキが、料理教室の皆さんの手で
完成させられて、今日、ここに、私達夫婦
のために用意されたのです!
心から、料理教室の皆に感謝です……。
(著作権は、篠原元にあります)