第十五章㉔
文字数 2,645文字
親を、「自分で全部やるから!」と説得して
こっちに。
入学までも地元で必死にバイトをして、
引っ越し費用、入学に関する費用を得る
ような子だったそうです。
そして、奨学金をもらい、バイトをしな
がらの大学生活。
そんななか、変な男に会ってしまう……。
努力家、純粋な都和ちゃん。
おそらく、いえ、絶対ですが、男を見る目
は、なかったのでしょう。
こっちの男は、本当、クソ共ばっかです
から。
で、結果……。
ソイツの家でレイプされ、妊娠。
で、責任を取れと正当的訴えをしている
最中に、その張本人野郎が自殺。
田舎にいる年老いて、病弱な親に、心配
なんかかけられませんし、反対を説得し
やって来たのです。
今さらノコノコ戻れない……。
つまり、親は頼れない。
そりゃ、ノイローゼになりますよ!
で、そうこうするうちに、
都和ちゃんは、とうとう、中絶を考え出し
ます。
こしまちゃんもやよいちゃんも、
反対も賛成もできなかったみたいです。
どう言うにしろ、無責任だと思って
しまって……。
そして、『その時』が来てしまいます。
都和ちゃんが、大学を、中退してしまう
のです。
こしまちゃんが、電話で聞いたところ、
「大学行きながらの今のバイトじゃ到底
無理だから……。
思い切ってね、大学は中退して、
仕事一本にして、出産費用とか今後の
出t費の準備することに、した。
私、一人で育てないといけないから」と
答えたそうです。
年寄り子の都和ちゃん。
親には、絶対に伝えられない。
そして、そのまま自分が、親にならない
といけない……。
そのためには、金が絶対必要。
だからこそ、大学なんか行ってられ
ない。
どんなに苦しい状態だったことでしょう。
まさに、四面楚歌ですよね。
私は、やよいちゃんとこしまちゃんの
話しを聞きながら、亡き母峯子のことを
思わずにいられませんでした。
亡き母と都和ちゃんが、重なってなら
ないのです!!
こしまちゃんが、さらに、話します。
「都和さぁ、大学やめた直後ね、
『今までの売店のバイトじゃ、全然、
お金が貯まんないから、交通誘導とか
建設現場の作業員とかも考えてる』って
言ってたの。
親友が、それ位、お金が必要なのに、
私、何もできなくて……。
私も、そんなに貸してあげるほど、
お金もないし……。
だから、悔しかった。自分が、情けなく
て……。
『頑張って』とか『あまり無理し過ぎない
でね』っていう事しかできなかったから
ねぇ。
……それで、その後、しばらくして、
電話してみたら、『今は、夜間の交通
誘導、整理のバイトしてる。すごい額
もらえるから』って……。
私、バレないように、泣いた。
悲しくて、悔しくて。
大学の友達だった子が、ここまで、
必死にやってるのに!
都和、妊娠してんのに、出産のため、
夜に寝ないで、お金稼ごうとしてんの
にさ、何にもできない自分が、本当に、
ヤになってさ!!
もうこれくらいだけは、って思って、
『私の貯金、引き出して、送るよ。
そんなにナイけどさ……。
いつでも良いから、返すのは!
使って!!』って言ったの。
貯金って言っても、家賃の3,4か月
位分しかなかったけど。
でも、断られちゃってさ……。
『そこまで、親友のこしまに、
迷惑かけられない』って言って……。
だけど、私、無理にでも、あの時、
お金を受け取らせるようにするべき
だったんだヨ!!
だって、最近、充貴部長が電話したら、
『もうダメだと思います。
このままんじゃ、私が倒れるか、お腹の
子が生まれてこれなくなっちゃうか、
どっちかだと……。
思った以上に、身体もキツイし、天気に
左右されてお金もそんなに堪らないし
……。
正直、もういっそ、時間もそんなに束縛
されないし、重労働でもないんだから、
男の相手でもしようかなって、考え
ちゃっています。
長時間働かなくても、すぐにお金になる
だろうし、今みたいに体がバキバキ言う
ようなこともなくなるでしょうから』
って言ったって!
で、そのあと、部長が、何を言っても、
ほとんど上の空だったみたい。
それに、最近は、部長が電話しても、
私が電話しても……、やよいがしても
だよネ?
誰が、電話しても、ほとんど、出てくれ
ないし……」と。
やよいちゃんも、「うん。私も、何度も
電話してるけど……。電源キレてたり、
ずっとコールが続いたり」と。
部屋中が静まり返ります。
私は、正直、絶望的に思えました。
同じことを、やよいちゃんも、
同じとき、思ったようです。
声に出して、言います、彼女は。
悲痛な声で……。
「都和……。もしかして、もう、風俗の
店で働いてんのかなぁ」。
「やよい!そんなこと言わないでよ!
何で、そんなヒドイこと、ここで、今、
言うの!?」と、ヒステリックな声で、
こしまちゃんが否定するも、彼女の声
から、彼女自身もやよいちゃんと同じ
ようなことを考えてしまっていると
いうことが、私には、分かりました。
「ゴメン……」と、やよいちゃん。
そして、それっきり、誰も口を開きません。
開けないのです。
だって、その場の4人全員が、同じことを
考えてしまっているから。
同じ【最悪の状況】を思い浮かべて
しまっているからです。
皆さんも、私たち女子4人と考えることは
同じだと思います。
だって、そうなるじゃないですか?
都和ちゃんのような境遇の女の子のことを
考えたら、良い方向に、考えられません
よね。
悪い方向に、悪い方向に、どんどん行く
だけです。
最初は、男と酒を飲むだけの仕事だった
のが、遂には、身体を売る仕事になる
かもしれませんし、最悪、とんでもない
トコに沈められるか、映像関係の餌食に
なるでしょう……。
私は、アノ世界に長く身を置いていた
から、特に、分かるのです。
それまで、多くの女の子を見てきたし、
東大阪出身の関西弁キャラのヤツは
沖縄出身の姉妹と一緒に、私を、
ハメようとし、私だって、危なかった
時もあるのですから……。
私は、助かりましたが、そうならず、
『深み』に沈められて、姿を消した
子だって、知っています。
はっきり言えば、こしまちゃんたちの
話しを聞いていて、見えました……。
田舎から出て来た、親に連絡できない、
大金を必要としている、若い、女性…。
奴等からすれば、『最高のカモ』です。
条件は、完全に、揃ってしまって
います。
嫌でも、見えてしまいます。
否定したいけれど、否定できない。
騙されて、最終的には、奴等に、
最悪地点まで落とされ、沈められる……
そんな、一人の不幸な女の子の末路が。
それに、もしかしたら、もうすでに、
その毒牙に、都和ちゃんは、かかって
しまっているかもしれない、のです…。
(著作権は、篠原元にあります)