第十七章 ㊶

文字数 1,719文字

新婚旅行二日目(火曜日)の朝。
 真子は、朝から、超ご機嫌だった!

だから、義時も、嬉しいし、幸せな
気分だ。
でも、何で、こんなにご機嫌なのかまでは
分からない。
でも、まぁ、良い……。

 真子は……。
人生史上初めて、『奥様』と呼ばれたので、
メチャクチャ嬉しくて、ご機嫌で、ルンルン
だった。
朝食会場―レストラン―で、自分の母親
世代位のスタッフが、そう呼んでくれた。
 新鮮だ…………!!!


義時が、見てると。
 妻は、食事中も、部屋での荷物の整理中も
あとチェックアウトの時も、終始、
ご機嫌だった…。
 でも、奥様と呼ばれたのが初めてで、
それに興奮して、喜んでるとまでは、
彼には推理できなかった……。

で、ホテルを出て、1,2分歩いたところに
あるバス停に行く途中。
珍しく、彼女―妻―の方から、手を握って
きた。
 ドキッとする。
可愛らしい表情で、こっちを見上げて、
「ダメかな?」と訊いてくる。
もちろん、ダメなわけない……!

で、バスに乗った。
当然隣同士だけど、妻は、ずっと手を
離さなかった。
 幸せだ。
まさに、これこそ、新婚旅行。
世では、時間が経ったら、熟年になったら
……どうのこうのとか言うけれど、自分達
には、そんなの『関係ない!』と、義時は
思う―いや、強く、そうであってほしいと
願う―。

2人は、バスを乗り継いで。
 長崎市に、出た。
かなりの長距離の移動だったけれど、
結婚直後の新婚ホヤホヤさんには、一瞬
だった。
 2人で話しながら、あと車窓からの
キレイな風景を眺めながら、それから、
義時が妻の写真を撮りながら……で、
一瞬だった、本当。


長崎市到着後、まずは、公園に行った。
もちろん、そこらへんの児童公園とか
ではなくて。
歴史的に有名な公園。
昔、殉教があった、史跡。
義時と真子は、何百年も前に起こった
事実を振り返り、静かに祈った……。
 長崎の夏風が2人を暖かく包み込む。

で、その後。
やっぱり、長崎だ。
突然の土砂降りの雨、スコールが…。
中華街に向かいながら、新婚の2人で、
長崎の街をダッシュした。
 びしょ濡れになりながら、初めての街を
愛する人と走りぬく…。
良い思い出になるなぁ、と義時は思った。


びしょ濡れになってしまい、透けてないか
とかいろいろ心配になっていたけれど、
若い女性店員が、笑顔で迎え入れてくれ、
それに、タオルまで持ってきてくれたし、
「トイレで着替えれますよ……」と
教えてくれた。
 お目当ての店に入り、まず、真子は、
トイレに向かった。
 ボストンバッグから着替えを取って…。


ホッと落ち着いた頃に、出てきた
名物『長崎ちゃんぽん』。
 噂通り、最高だった!!
でも、アツアツで……。
 ゆっくりと、食べ進める。
そのうち、汗が出てきた。
九州に来た感、満ちあふれた感が、
すごい。
 大満足だ!味にも、お店にも……。

満腹になって、2人は、中華街の有名店を
出た。
 店を出た時、空は、青空で。
カラッと晴れていた。
暑いくらいだ……。
さっきまでの大雨がウソみたい。
義時がケースを引きずり、真子がボストン
バッグを持ち、進んでいく。
 目指すは、目金橋、ガリバー園、それから
有名なカトリックの教会。

真子は、面白かった。
実際に満喫すれば良いのに、彼は、ずっと
カメラを構えている。
 写真撮影に必死で、夢中なのだ。
もっと、落ち着いて、自然に身を浸したり、
非日常的な雰囲気を楽しめば良いのに……
と、思う。
 けど、まぁ良いか…と考える。
「彼は、カメラが趣味なんだから」と。
 無趣味で、つまらない男よりは、
マシだ……。
それに、変なことに金を使うわけでも
ないし。あと、そういう―女、酒、
ギャンブル―に、金を使われる心配も
ない。

 カメラの趣味は、大目に見る。
見てあげる。
それに、被写体は、自分なんだから。
これが、自分じゃなく、ほかの女性、
また、ほかの女の子たちになると、
問題だから、すぐに、ボコるけど……。

 シャッターを切りまくる、彼を、
真子は、愛おし気に見つめ続ける。
長崎の空の下、ゆったりと、真子の周りで
時間が過ぎていく…………。







(・著作権は、篠原元にあります

・長崎在住の皆さん、おススメスポット
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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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