第十七章 ㉞
文字数 926文字
時々あどけない笑顔を見せる彼女の
ことを考えてしまうと……!!
どうしても、九州にこだわる理由…、
それを言い出せなかった。
いや、言えるはずがないじゃないか!?
そう。自分は、祖父母たちも健在で、
親戚たちも多くいる。
言うならば、何不自由なく生きてきたし、
金のことで困ったことも、家族がなくて
孤独感を味わったこともない。
でも……。
彼女は!!
もう母親もこの世にはいない。
父というべき―言いたくないが―存在は、
最悪のレイプ犯ときている。
それに、母方の祖父母も、もういない。
当然だが、父方の祖父母なんて存在すら
分からないだろう。
唯一の身寄りは、愛媛県にいる雪子さん
だけ。
ここに至るまで、家族を失い、希望を
失い、そして、自分のせいで学校生活も
滅茶苦茶にされ、孤独と絶望の日々を
歩んできた女性だ、彼女は……。
そんな彼女に、幸せそうな顔で、
テレながら、「実はさぁ、うちの父方の
祖父母も、両親も、九州に新婚旅行行って
んだよね。
だから、俺たちも九州が良いな!」とは
言えない。
彼女は……。
そう、彼女の母親は。
レイプされて妊娠して、彼女を産んだんだ。
当然、彼女の母親に、新婚旅行、いや、
結婚生活すら、ありえない!
真子に、そんなことを考えさせたく
なくて。
だから、義時は、本当の理由、
つまり、九州にこだわる理由を言い出せ
なかったのだ。
だけど、やっぱり、行くならば、
尊敬する父も祖父も、新婚旅行先に選んだ
九州に行きたい……その思いは変わらない。
そして。
次に、2人が会う日…。
義時は、自分の人生経験のなさを
痛感していた。
どうしたら良いのかが分からないの
だから……。
九州に絶対こだわりたい。
でも、彼女を悲しませるようなことは
言いたくない。
で、一方、真子の方は。
なんと、こちらは、こう決めていた。
「開口一番、『九州で良いよ!』って言って
あげよう。驚くだろうなぁ!」
ワクワクしながら歩く、彼女だった……。
(・著作権は、篠原元にあります
・今日も読んでいただきありがとう
ございます。
YouTubeじゃないのでチャンネル登録や
高評価ボタンないですが、それに
かわるモノ、お待ちしていま~す!
・真子の心境の変化の理由は、次話で!
お楽しみに~ )