第十五章 ㉘

文字数 1,646文字

キッチンを覗いてみると……、みどりちゃん
でした。

私に気づいた、みどりちゃんが、振り返って
「アッ。おはよう!3人ともさ、ぐっすり
寝てたからさ、勝手にだけど、冷蔵庫の中
ので作らせてもらってるからさ!」と、
パッパッとキッチンで動きながら……。


えッ!?!?
「見られたの?!大したもの入ってないし、
グチャグチャ……」、でも後悔しても、
もう遅いのです。
恥しい気持ちでいっぱいになりましたが、
みどりちゃんは、全然気にしていない
感じで、鼻歌をフンフンやりながら
家主の女性のように動いています。

立ちすくむ、家主の私……。
申し訳なさと感謝と驚きです。


そんな私の方を、みどりちゃんが、
また振り向いて、「あ、あとさ。これ、
勝手にだけどさ、使わせてもらってる
からね」と。
私のエプロンです。
身長も体格も同じくらいなので、
みどりちゃんにもピッタリでした。


その時、ハッと気づいて、言うべきことを
言いました。
「あッ!みどりちゃん、私も、手伝うね」。
家主であるなら当然です。
って言うか、私が、3人のために、ご飯を
用意しないといけない身なのです、本当
は……。

で、みどりちゃんからの返答は、
「大丈夫、大丈夫だからさ!
真子ちゃん、ここはさ、私に任せて、
もうさ、ほとんど出来てるからさ。
そうだなぁ……。
真子ちゃんはさ、あの2人を起こして来て
もらえる?」でした。

勿論了解です。

歯磨きも何もせずに、急いで、昨晩の
『仮寝室』に向かいます。


まだ、中では、2人の女子大生が熟睡中
でした。
やよいちゃんの方は、声をかけると、
すぐに起きてくれました。
2,3秒で……。

でも……。
こしまちゃんは……!
確かに、キッチンからこっちに向かう私に
みどりちゃんは叫んだんです。
「こしまのやつさ、メッチャ厄介だから!
並大抵じゃないからさ!
グダグダ言ってたら遠慮なくさ、叩いて
やって良いよ!」と。

それは、本当でした!
大袈裟なお姉さんだなぁ……と思って
いたのですが、大袈裟でなく事実だった
のです。
声を何度かけても起きない。
見かねた、やよいちゃんが手伝ってくれて
2人で声をかけてもうんともすんとも…。
体をゆすっても……。
やよいちゃんが、ツンツンしても、
手で払いのけてきて、そのまんま……。

悟りました、私たち2人は。
ダメだ、こりゃ……と。
やよいちゃんが、私の方を向いて、
言います。
「無理みたいですね。初めて、一緒に
寝たんで、知らなかったんですけど、
こしまって、こうなんですね。
これ、お姉さん、呼ばないとですね」。
私も同感でした。
これは、小学生時代も大変だっただろう
と思います。
遅刻しまくってたんじゃ……。
って言うか、大学では、大丈夫なの?

と考えてたら、やよいちゃんが、
「私、呼んできますね」と言って、
小走りで出て行きました。


そして……。
すぐに、キッチンの方から、「こしまぁ!
すぐ、起きろぉぉ!!」という叫び声が
……!!
こっちが、ビクッとしてしまいます。
が、当のこしまちゃんは、それでも、
スヤスヤしています。
ちょっと、感心しちゃいました。
「どこでも寝れるな、こしまちゃん。
うん、絶対に、どこに行っても、生きて
いけるよ」と。


で、すぐに、姉のみどりちゃんが
鬼のような形相で入ってきました。
そして、遠慮なく、なんと……、
現職の刑事さんが、寝ている女の子に
ケリをいれて……。

一瞬目を疑いましたが、事実でした。
しかも、かなり、強いケリ……。

瞬時に、ガバッと起き上がる、こしま
ちゃん。
「イッてぇぇ!!」と叫びながら。
で、周りをキョロキョロ。
何が起こったのか、ここがどこなのかも
分かってないような感じ……。

でも、すぐに、察します。
「お姉ちゃん!何すんのさ!?
今、蹴ったでしょ!!」。
「当たり前でしょ!あんたさ、真子ちゃんと
やよいちゃんに迷惑かけてるんだよ!
だから、蹴って、起こしたのさ!」と
仁王立ちで答える、みどりちゃん。


また朝から始まったか……と思いました。
もう慣れましたけどね……。

まぁ、そんな感じで、賑やかな朝が
始まったのです。
女子会、お泊り会2日目です!









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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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