第十七章 ㉛

文字数 2,646文字

で、次に会ったとき。
彼に言ってみた。
「友達み~んな海外だよ。
熱海とか、国内とかは昔の話だよ!」と。

 正直、ここまで結構ゆずってきたと
言う自負がある。
それに、式の準備だって、彼は3,自分が
7くらいやっている。
絶対に、『海外』を死守したかった!!
というより、国内が絶対にイヤってわけ
ではなく、あまりにも、自分勝手な意見
だったので、そんなのに、負けたくない、
そんな【女の意地】があった……わけ。

でも、彼も、普段と違って、頑固だった。
普段なら、いつもなら……。
こっちが少し粘れば、すぐに引いてくれる
のに……。
時にはズルいけれど、それは分かってる
けど、【女の涙】使う時もある。
そうしたら、効果抜群!
まぁ、絶対、言わないけれど……。

でも、この日、彼は、全然、「じゃ、
海外にしよっか」とは言ってくれなかった。

「別に、みんなの真似して、
海外に行かなくて良いじゃん」
「日本にも、君がまだ知らない、
良い風景、良い街並み、良い温泉が
あるんだよ」と……。

でも、真子も引けない。
と言うより、こっちの方が、頑固な性格だ。
「絶対、国外に行きたい!
これ、引けないヨ!!」


実に、栄義時と柳沼真子が付き合って、
初めての【喧嘩】だった。
結婚前の。
婚約後の。
結婚式準備期間中の。
新婚旅行に関しての……。



で。
言い合い&喧嘩状態に疲れた、義時が
歩み寄る。
 もちろん。彼氏君も引く気はないけど。
とにかく、言ってみる。
「じゃあさ、これ、平行線が続くからさ、
このままだと。
だから、いっそ、もう、じゃんけんで、
恨みっこなしで決めよう?」
言うからには、勝算があった……。
で、真子が喰らいついてくるということも
分かっていた。
案の定……。


真子は、義時に、そう言われて。
心の中でガッツポーズした。
「良いよ!じゃ、1回勝負、文句なし
だヨ!!
ウソは絶対なしだかんねっ!!」
 勝算は確実にある。
っていうか、彼、正直、めちゃくちゃ、
じゃんけん弱い……。
と言うか、こっちは、見抜いている!
時々、『おごり』をかけてじゃんけんする
けど、90%自分が、勝ってる。
なぜなら、クセがあるから…。
絶対に、チョキを出す癖。
だから、本気で勝ちに行くとき、真子は、
グーを出す。
 で、本気でない時やたまに―そうで
ないと義時が気づくかもしれないから―
真子は、パーを出して負けてあげるわけだ。
だから……。
「この戦い、もらったぁぁ~!」と
思った。
で、必死になって、笑顔になりそうなのを
我慢する。
冷静に、冷静に……。
ここで、変なことすると、バレるかも
しれない。
 真子は、普段通りを装いながら、
心の中で、「余裕、余裕。海外決定」と
つぶやきながら、前に出た。





そして……!!!
結婚前の婚約者同士の【熱いバトル】が
始まる……!!
もちろん、服は着たままで―当然―。
で、真面目な表情で、両者睨み合う。
双方、自分が勝つと信じ切っている。



結果。
真子は、愕然としていた。
義時は、笑顔で、そして、宣言した。
「国内、決定、万歳!!」

真子は、恋人―婚約者―に、完敗した。
なんで、なんで……!?

義時は、チョキではなくて、
パーを出してきた……。
で、自分が、一回戦って言ってしまって
いたから、即終了…。


項垂れる真子を見ながら、
いつもなら、ちょっと引け目を感じて
しまうであろう義時も、この時ばかりは
勝利の喜びに浸った。
そして、安堵感。
それから、自分の読みの正しさ。
「やっぱ、乗ってきたよな。
で、やっぱ、グーを出して来たな。
やっぱ、俺が、わざとヤッてたって
気づいてなかったな」

そう。
つまり……。
真子が、「見抜いているんだ!」と
高ぶっていた、彼氏君のクセは。
ようするに、一番最初にチョキを出すと
いう、義時の癖というのは。
義時の作戦、もっと言えば、負けてあげる
ための【方法】だった。
 つまり、彼はもともとは優しい性格。
で、彼女―真子―を喜ばせたい。
だから、自分で、わざと、彼女と
じゃんけんをする時は、ほぼ、チョキを
出して、負けてあげていたわけだ。
まぁ、時には、勝ってしまう時もあった
けれど、その方が都合が良い……、
疑われないから。
当然、本気で…、と言うか、姪や甥とかと
『フェア』にじゃんけんをする時は、
そんな【小細工】しないわけ。
 ただ、彼女と、する時だけは……。
で、義時は分かっていた。
真子が、本気で、自分に勝ちに来るときは、
おそらく、彼女は、自分のチョチを出す
のを癖だと知って―考えて―いて、絶対に、
グーを出して、勝ちにくると。

 だから、義時は、勝つために、
じゃんけんを提案した。
本気で勝ちに来る真子がグーを出すのを
分かっていて。
で、自分は、絶対に、チョチではなく、
パーを出す、と決めて。




だから。
結果は、義時に、軍配が上がった。
まぁ、当然の話だけど。
 で、真子は、ずっと、「何で、何で?」と。

普段なら、「まぁ、じゃあ、海外でも…」
って感じになるけど、今回は、そうしない、
義時。
ちゃんと、ちょっと冷酷だけど、言った。
「国内だよ!?
良いね?!」
 「うん……」と頷くしかない、彼女ちゃん。

「うわぁ!信じらんないッ!!
まさか、こんな大事な時に、
負けるなんて!」
真子が悔しそうに言いながら、
こっちを見て、で、続ける。
「分かった!まぁ、正々堂々の勝負の結果
だからね。じゃ、国内で、いこう!」

 こういう、スッキリした彼女の性格が、
義時は大好きだった。
中には、「もう1回やろっ!」とか、
「でも、やっぱり、海外がい~いぃ」とか
グズる女もいるだろう……。
ってか、女ってそういう奴が多いイメージ
だ―あくまで義時の主観―。
 でも、真子は、そういう意味では、
潔い。
絶対に、約束は守る。
まさに、目の前の彼女を見ながら思った。
「真子に、二言はナシだな。女だけど」



そんなことを考えてる義時に、真子は
言った。
「じゃ、国内のプランを立てるから…。
何個か候補上がったら、相談するよ」と。
決まった以上は、国内限定だ。
でも、考えれば、自分は、47都道府県の
うち、行ったことのあるのは、ほんの
わずか……。
日本も広いんだし。
未知の秘境とか、世界遺産とかを見に行く
のも良いじゃない……!!
なんだか、ワクワクしてきた…。









(・著作権は、篠原元にあります


・今日も読んでいただきありがとう
ございます。感想、コメント、高評価など
お待ちしています。


・既婚者のみなさま。どこに新婚旅行
行かれたか、あと、国内―九州限定―で
おススメの場所とかあったらコメント等で
教えてください。

・未婚者のみなさま。憧れる新婚旅行地、
憧れる新婚旅行先での遊び、体験とか
あったら、教えてください!      )
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み