第十六章 51

文字数 1,727文字

まるで、嵐のような時間。
この表現に、尽きます。
終わった時、私の全身は、汗だらけで、
当然、彼もそうで…。

お互いベッドに背をあずけて。
手をつないで、私たちは、荒い息で
……暗い中、つながっていました。
身体の『深い結合』は解きましたが、
私の全身は彼と私の汗、体液だらけ
ですし、下半身は熱く熱く疼くし、
それに……、私の子宮に、
彼の子たちが満ちていくのを感じて。
私は、ずっと夫に抱かれ続けている
ような、そんな気分でした。
なんか、宙に漂っているような、
今までに感じたこともないような
快感……!!

クセになりそう、と思いました。




それで……。
夫とは、かなり『時間の差』は
ありましたが、
女である私も、落ち着いてきて。
でも、隣にいる夫の体温はひしひしと
感じれて……。


訊いたんです。
どうしても、彼の意見を訊きたかった
から…。
「ねぇ、あのさ……。
お義父さん、お義母さんにも、
正直に、話して、謝った方がいいかな?」


嫁である私は、不動家の両親をずっと
騙し、彼らの『嫁への善意』を踏み躙って
きたのですから……!

「赤ちゃんは、まだかしら?
あ……。もしかして、まだ、赤ちゃんは
いいって、二人で話し合ってるの?」と、
訊いてきた姑に、「そんなこと、
ありませんけど……。
でも、こればかりは、授かりもの
ですから……」と、恥ずかしがる新妻を
演じて、『嘘』を言ったことも。
そして、これは、夫も知らないはずです
けど、「妊娠するために、良いのよ」と、
義父母が送ってくれたお茶、サプリ
メントも、無駄にしていました。
翌日の燃えるごみと一緒に……。
何せ、あの時の私には、妊娠するつもり
が皆無でしたから…。




夫に告白するのだって、死ぬほど
辛かったし、ヤクでイカれて凶器を
持って立てこもるクズを追い詰める
時以上の勇気がいりました、正直……。
これが、義父母へ打ち明けるとなると、
おそらく、防弾チョッキも着用せず
丸腰で、ただ1人、ライフル持った
クソ野郎が立てこもる銀行内に向かう
ようなもの……です。
解決、つまり、確保できる確率なんて
米粒の半分程度しかないでしょう。
ヘタしたら、人質が増えてしまい、
「交渉役として銀行内に入って行った
女性警官が、犯人に拘束されてしまった
模様です!」と報道されるようなもの
……。
運悪ければ、見せしめに、警察官として
殺されるか、クソに身体を弄ばれるか、
です。
すいません。話が比喩的になりましたが、
それほど、恐ろしいことのように、
思えたのです。
義父母への告白は……。


でも、良心が痛くて痛くて。
それに、「こんなに愛してくれてる彼の
ご両親を騙し続けていたんだ!!
これで、良いの!?
このままで、良いわけ!?」……、と
自分の中で思いが大きくなっていって…。


それで、訊いてしまったんですね。
だけど、訊いて、すぐに後悔しました。
でも、もう遅い。


隣で、手をつないだまま横になっている
夫は、黙ったままです。
私の心臓の音が聞こえるだけ…。
思いました。
「否って答えてほしい。でも……、
そうでなくても、彼の意見に従おう」と。
まぁ、決意したわけです。
彼と一緒に、初めて『子作り』に励んだ
直後の私は……。



そして、彼の答えは。
夫は、横になったまま、ゴロッと
身体を回転させ、こっちを向いて、
優しく言ってくれたものです。
「いや…。別に、二人には、何も
言わないで良いと思うよ。
知らない方が、あの二人にとっても
良いことだと思うしさ……。
それに…、一日も早く『妊娠しました!』
って、みどから、連絡してあげるのが、
最高の親孝行、恩返しだから……。
さ、がんばろっ!」
そう言って、すぐ、夫は、私を、強く
抱きしめてくれて…。
それで、私は、彼の下半身の熱さと硬さを
感じて、驚いたのですが、驚くのも
束の間……、私と彼は、その日2度目のに
突入して。

その夜、……と、多分、日付も変わって
いたと思いますが。
夫は、4度も私を愛してくれて。

私は、彼の逞しさと強靭さに驚きながら
も、この上もなく幸せでした。
彼の妻であることに……。
『最後の回』は。
もう体は、へとへとでしたが、
求めてくる彼に、理性では拒みたくも
あったのですが、身体は正直で……。
そして、初めて、私は、彼の身体の上で
果てることが、できてしまい……。
燃え盛った夜、でした。








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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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