第十七章 ㉜
文字数 1,274文字
昔、志与―しーちゃん―と巡った
北海道!
まだまだ広いし、あっちの方―つまる
ところ知床方面―も行ってみたい!
大自然、クルーズ、海の幸……!!
考えるだけで、素晴らしいッ!
そう考えているだけで、我慢できなく
なり。
真子は、言ってみた……いや、言っていた。
「ねぇ!北海道なんて、良いんじゃない!!
知床の方とか、湿原のある釧路とか、あの
刑務所の網走とか。カニ、ウニ、とにかく
美味しいのもいっぱ~いあるしさァ!!」
もう、自分でも、自分の目が輝いて
いるのがわかる。
でも、返ってきた反応は……。
予想外の。
そして、真子を、キレさせるのには
十分なものだった。
なぜって、即時に否定された、水を
かけられたから……。
「北海道かぁ…。なんか、寒いのはイヤ
だなぁ」と。
正直、自分の顔の上の方に血管が浮かび
上がってるな、と思った……真子は。
それと、もう一言返ってきた。
「そっちの方……。つまりさ、釧路とか
網走だとさ、旭川とか札幌と違って
そんなに飛行機出てないだろうからさ…。
行くのも帰るのも時間かかるよ、多分。
面倒くさいなぁ……」
正直、恋の火が、消えかけた。
「ここまで、ものぐさかぁ!」と、
違う意味で感心した。
実際、彼の意見通り―じゃんけんで
負けたからだけど―、新婚旅行先を
海外から国内に見直した。
ついでに、結婚そのものも見直した方が
良いのかな、と本気で、思ってしまう。
そんな彼女に、彼氏が言う。
「九州なんて、良いなぁ!
どの県にも飛行機がちゃんと飛んでるし、
何なら、新幹線でも行けるし、温泉も
あるし、山もあるし、酒も美味いし……」
思わず声が出た。
はぁ……!?
そして、正直、思う。
「喧嘩、売ってんの、コイツ……!」
だって、だって!!
行先の選択権をゆずって―負けたから
だけど―、国内にしてあげたんだから。
ここは、普通の男性―婚約者―なら、
「じゃあ、そうだね。行先は、北海道に
しよっか」って言うところでは…?
それが、よりによって、北海道に
難色を示し、そして、なんと、九州!?
「北海道と九州?真逆じゃないッ!?」
突っ込みたくなった。
でも、それ以前に、怒りで……。
声が出なかったけど。
海外という選択肢だけでなく、北海道
という意見まで一瞬で奪い去るのかよ、
真子は、そう思い、婚約者に対する不信感
が体の底から湧いてくるのを感じた。
義時は、正直、彼女の顔がスンと
冷たくなったので、ヤバい……と直感
した。
これ以上は、本当に、いろんな意味で
マズいかもしれない。
でも、どうしても、新婚旅行は九州が
良い!
自分なりに、仕事・式準備と忙しく
両立しながら、「行くなら九州だな」と
考えていたから。
でも、なかなか、彼女には言い出せなかった
なのだけれど…。
それに……、九州にこだわるには、ちゃんと
した、重大な意味もある。
結局…。
その日。
答えは、出なかった……。
双方、イラついてしまっていて、
引かなかったことが原因。
ともかく、「国内ってことは、決まり。
あとは、候補地を、次までに各自出して、
ちゃんと、まとめて、それで、
その日、決めよう、冷静に……」で、
別れた。
(著作権は、篠原元にあります)