第十六章 ②

文字数 1,487文字

そう。
あの2組は、どうなったのかな?
もう式を挙げたのかな……。

自分たちと一緒に、もう2組のカップル
が受講していた。
だから、3組で同時進行だった。
そう言えば、女子3人は結構仲良く
なってたなぁ。
で、3人とも真剣に受講してたなぁ。

けど、自分も含め、もう2人の男は、
そんなに真剣じゃなかった……。
それに、男同士で連絡先交換とかも
しなかったよな……。

「やっぱ、男と女って、違うなぁ」と、
義時は思う。



そうだ!
思い出した。
2回目のセミナーが終わった後、
みんなで食事に行った。


あれは、小滝牧師が、3組を……、
つまり6人を誘ってくれたんだ。
「超大物牧師と食事……。
どんな店に、連れて行かれるん
だろう?」と緊張した。
真子も小声で訊いてきた。
「ねぇ、高いお店かなぁ?
ちょっと、財布の中身少ないんだけど、
そっち大丈夫?」と。

周りのカップルも、期待半分と不安
半分な感じだった。
で、司式してもらう牧師からのお誘い
だから断るわけにもいかない……。

なので、若い男女6人は、初老の小滝
牧師について、ゾロゾロと歩いて
行く……。


だが!
小滝牧師に連れて行かれたのは、
繁華街の中にあるファミレスだった。
某有名チェーン店。
安くて、有名。
高校生のたまり場的、存在。
家族連れも多いイタリアン。
小滝牧師が、「よく来る店でねぇ…。
サッサッ、皆さん、入って!」と、
ドアを開けてくれたのは、そんな店
だった……。

正直、ホッとした。
ここなら、仮に、こっちが払うことに
なったとしても財布にダメージはない
と思う。
で、その反面、「え……。ここ?」
とも。
ネットで調べても、その知名度は
想像以上だった小滝牧師。
もっと、スゴイ店に連れてってくれる
かと……。


そんな安心と拍子抜けの2つの感情
を抱きながら、男性陣に交じり、
店内に入っていく。
女性陣と小滝牧師は、スタスタと、
先を進む。


で、そうだ。
女性陣と小滝牧師がソファー席側に、
男性陣は反対側に座った後の、
小滝牧師の発言にも、驚かされた
ものだった……。
「あっ!私の分はね、私が払います
からご心配なくね。
で、それぞれ各カップルの分は、
各カップルで払うってことで、
行きましょうねぇ!」。

静寂……。
「……!」。
「うん……?!」。
若い男女6人が、固まる。
どれも考えることは同じ顔だ。

小滝牧師が誘ってくれた。
受講者の自分たちを。
このお手頃価格のファミレスに。

「それで、割り勘!?」。
まぁ、みんな口からは出さないが、
そんな感じだろう。
両隣の男たち、目の前の真子や、
その他女性陣を見て、そう思った。

で、その場は、当然、
「は、はい……!」だ。
異論を言える人間はなし。


そうだなぁ。
その後も、ビックリさせられたな!
注文の時、小滝牧師の第一声が、
「生ビール!ジョッキでね、お姉さん」
だったから。
料理の注文の前に……?
え、しかも、ビール!?


「俺の耳、疲れてんのかな」と、
疑った。
でも、周囲の顔も驚きで満ちていた。
あ、マジだ……。
耳を疑った。



それで、その後……。
小滝牧師は、笑って、飲んで、食べて、
よく語った……!!
正直、「うるさすぎじゃね?」、「うわ
ぁ!周囲の目が……!!」と思った。
注意されるんじゃないかと気が気じゃ
なかった。


これは絶対だ。
最初オーダー取りに来た高校生
くらいの女子店員も、
その他の、やや顔が引き攣ってた
店員たちも、そして、周りの客たちも、
『あの賑やかなテーブルで一番愉快に
しゃべってるオジサン』が、
実は、超有名で、日本を代表する
牧師で、しかも著書多数、TV出演
多数、それだけでなく、博士号を
持ってて、政界やら経済界との
凄いパイプを持ってる人だとは、
思わなかっただろうなぁ……。










(著作権は、篠原元にあります)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み