第十五章 ⑩
文字数 1,242文字
時間枠が一致するので、
交互に読まれることをすすめる)
さて、私が『自主的』に運んで持ってきた、
2杯目のリンゴジュースも飲み終え、
クッキーも食べ、満足した、みどりちゃん。
アッと声を上げます。
「そう言えばさ、こしまとやよいちゃんさ。
まだ、自己紹介してないよね?
はい、はい。こしまから、早くやってよ!」。
「いやいや、さっき自己紹介の雰囲気だった
んをお姉ちゃんが潰したんだよ!?
ってか、お姉ちゃんが、騒いでるから、
できないじゃん!」。
そんな、こしまちゃんの肩を、まぁまぁと、
なだめるように、もう一人の女の子
こしまちゃんと言う子が、さすります。
みどりちゃんの妹の葦田こしまちゃんは、
色白で、ポニーテールの女の子。
やっぱり、大学生でした。
「お久しぶりです。
姉が、いつもお世話になっています」と
丁寧に、言ってくれました。
そう言えば、みどりちゃんが言っていた
ように、昔、かなりの昔ですが、私が小学生
時代に、みどりちゃんの家に遊びに行った
時に、何度か会っているはずです。
時が過ぎ去るのは、早いものですね。
大人らしく、しっかり者のこしまちゃんを
見て、そう思いました。
ちなみに、葦田こしまちゃんは、三女。
結婚していて、もう家を出ている、
みどりちゃんが、長女。
そして、みどりちゃんとこしまちゃんの間に
次女で、こしまちゃんの双子のお姉ちゃんが
います。
そのお姉ちゃん、つまり、みどりちゃんの
すぐ下の妹で、こしまちゃんのすぐ上の
姉は、北海道の大学で勉強しているんだと、
みどりちゃんが説明します。
「あっちはさ、親から遠く離れて、一人で
しっかり勉強して、バイトもして、ほぼ
自立してるけどさ、こっちはさ、親と同じ
関東だからさ、まだまだ、うちの両親に、
甘えてさ、お金出してもらったりしてるん
だ。で、芸能人が行っている店とかを、
入れもしないのに見にいくとかさ、
フラフラしてんだよねぇ」と、付け加えて…。
案の定、こしまちゃんに怒られています。
もう、本当に仲の良い姉妹なことです。
私は思いました。
「じゃあ、もう1人のこの子は、誰?
みどりちゃんとこしまちゃんの姉妹
じゃないってことよね」と。
こしまちゃんが、顔を真っ赤にして、
言います。
「やよい!
お姉ちゃんは、放っておこッ!
良いから、やよい、話して」。
こしまちゃんよりも小柄で、
ショートヘア。
やよい、と呼ばれた女の子が、
私を見つめて話出します。
で、驚きました。
まず、第一声が、質問だったから……。
「あのぅ……。
もし間違っていたらすみませんが、
もしかして、昔、奈良の方に住んで
いましたか?」。
すぐに、答えれません。
「なぜ分かったの?」と言う困惑。
あっちの訛りなんて、もう、ないはず
なのに……。
答える代わりに、彼女の顔をじっくりと
見てみます。
彼女も無言で、こっちを見つめています。
記憶をフル回転させます。
「どこかで会ったことある?」。
「思い出せ、思い出すんだ!」。
でも、思い出せません……。
記憶のどこにもヒットしないのです……。
(著作権は、篠原元にあります)