第十六章 ⑯
文字数 1,973文字
時間枠が一致するので、
交互に読まれることをすすめる)
司会の村山さんに促されて、こしまちゃんが
マイクを手に取ります。
交互に、短く自己紹介をする2人。
ちょっと、いつもと違って、あの葦田
こしまちゃんが、緊張しているのが分かり、
不思議な感じでした。
で、逆に、やよいちゃんの方が、堂々って
言うか、場慣れした感じで……。
その場の全ての目が、女子大生2人に注がれ
ます。
純粋に、「可愛い!」、「キレイ!」って
いう目もあれば、そうでない視線も一部の
男性陣から注がれているような…。
メインテーブルの隣に座っている夫が
口をポカーンと開けて、見入っていたので
列席者各位には分からないように、蹴って
やりました……。
でも、私の目から見ても、2人は、
これまで以上にキレイでしたね、はい。
で、それで、そうです。
私は、こしまちゃんとやよいちゃんを
招待したのです。
そして、2人からは、「2人でデキる、
そして、盛り上がる感じのやるんで、
期待していてくださいネ!」と言われて
いたのです。
だから、詳しい内容は知りませんでした。
で、2人&みどりちゃんによる、ある
【計画】のことも全然知りませんでした。
……夫の脛のあたりを、笑顔を皆さんに
向けたまま、蹴り上げた後あたりから、
やよいちゃんたちが動き出したんです!
そう。
最初は、やよいちゃんが、言い出したん
でした。
「……それで、えっと。
今日は、とっておきのサプライズを、
新婦の真子さんのために用意して
きました!
実は、真子さんからは、私と、この葦田の
2人での『余興』を頼まれていたのですが
……。
でも、やっぱり、思ったんです。
新婦・真子さんにも一緒に加わって
いただきたいなって……」。
そう言って、私の方を向いて、ニコッと
笑ってくるやよいちゃん。
え……何?
そんなの聞いてないよ……。
と、視線で訊きます。
でも!!
その視線、スルーされました。
すぐに、列席者の方々に顔を向けて、
やよいちゃんが言うのです!
「この会場に列席の皆様。
これは、本当に、真子さんにとっては、
サプライズなのですが……。
実は、新婦の真子さんが前にポロっと
もらしていたんです。
『私は、大学に行ってないから、
大学生生活に、すごっく憧れるなぁ』と。
それで、新婦の真子さんが、大学等に
いけなかった理由は、先ほど、ここにいる
葦田のお姉さんである不動さんが、
『新郎新婦紹介』で話された通りです。
本当に本当に、新婦の真子さんは、
大学生の私達なんかが想像できない程の
苦しいところを通って、ここまで来られ、
今日、この日、ご結婚、これから幸せ
いっぱいのご家庭を築かれていくわけ
です。
そして、幸せ溢れるお母さんに、
それから、お祖母ちゃんになられる
ことでしょう。
ですので、今日は、この素晴らしき日、
お祝いの日に、新婦・真子さんには、
ぜひ、1日だけですが、そして、一瞬
だけではありますが、『女子大生』に
なっていただければと、思います!!」。
ここで、こしまちゃんにバトンタッチ。
「私達なりに、新婦・真子さんに、
念願の女子大生気分を味わってもらえる
ように、『1日女子大生』になって
もらえるように、考えて来ました、
新婦には内緒で、今日まで」。
ここで、こしまちゃんが、一呼吸
置きました。
そして、隣で、白い紙袋の中をガサゴソ
していた、やよいちゃんから……、
何か畳まれているモノを受けとりました。
ソレは……!!
ソレをパッと広げながら、こしまちゃんが
言います。
「この、私達と同じ、チアのユニフォームを
新婦にも、今から着ていただいて、明慈の
女子大生、チアリーディング部員に、
なっていただきま~~~す!!」。
はぁ…………!!!!????
「聞いてない!?ってか、無理!!」と
叫びたい……し、実際、本能的に否定しよう
として、声が出ました。
が……。
もう、披露宴会場中がスゴイことに。
溢れる拍手、鳴り響く口笛、嵐のような
指笛!!!
正直、花嫁姿のままですが、逃げたく
なりました!
何で、私がチアの衣装を……!?
いろんな意味で無理です。
必死に、考えます。
どうしよう……、と。
そんな冷や汗、本当に冷や汗ダラダラの
私のところに、まるで、【死の使者】の
ように、最高の笑顔で、やよいちゃんが、
ソレ、つまり、チアの衣装を持って、
走り寄ってきました……。
で、こしまちゃんがマイクを手に、
私に話しかけるんです。
とか、半ば強制的口調。
「さあ。どうぞ、真子さん。
丸瀬と一緒に、控室に……。
もう、着替えのお手伝いの方もスタンバイ
していますから!どうど~~~!!」と。
披露宴会場内がさらに、オォォォォと。
だけど、私は、どうしても動けません、
と言うより、動きたくなかった。
何とか、この『危機』を回避したかった
のです……。
でも、そんな私を見て、こしまちゃんが、
さらに、言うのです。
なんと、今度は、列席者の方々に向けて!
(著作権は、篠原元にあります)