第十五章 ⑫

文字数 2,455文字

「いやぁ、こんなさ、アンビリバボーなこと
ってさ、本当にあるんだねぇ!」。
これが、一通り、私とやよいちゃんの話を
聞き終えたみどりちゃんの第一声でした。
って言っても、みどりちゃんは、何度も、
「お姉ちゃん!ウルサイよ!!」とか、
「ちょっと、黙って!口挟まないでいる
こと、できないの!?」とか言われて
いましたけどね、こしまちゃんに。

で、みどりちゃんは、続けて言いました。
「これさ、ピート竹嶋の『超絶体験!
アンビリーピーポー』に出れんじゃない
かなぁ!!ってかさ、絶対に、真子ちゃん
レベルならさ、取り上げられるよ!
すごいコト、いっぱい体験してるもん!」。


まぁ、私は、TⅤに取り上げてもらう
なんて、ちょっとアレなんで、はぐらかし
ましたけど、自分の人生が、大袈裟でなく
スゴイことの連続であることは、認めます。
辛いコトもたくさんですけどね……。


あぁ、そうだ。みどりちゃんの妹のこしま
ちゃんは、こんな感想を言ってくれました。
「二人が小学生時代、奈良で一緒だったん
ですよね?
それで、ずっと会っていなかったのが、
こんな大都会東京で、こんな風に再会できる
って、これ、キセキですね!」。
そうだね、と私もやよいちゃんも同意。
そして、みどりちゃんも頷きながら言います。
「その立役者がさ、私ってわけだよねぇ。
こしま!!
ちょっとはさ、見直すんだよ!
この自慢の姉をさ!!」
「お姉ちゃん、ちょっと、黙ってて!
良い感じなのに……。
ってか、お姉ちゃんは、ただ強引に、
やよいを引っ張って来ただけでしょ。
アレ、傍から見ても、誰が見ても、迷惑で
空気読めない行動だよ。
自慢って言うより、恥ずかしい
から……!」。
「おぉ、反抗期かぁ、こしまぁ!」
バコン……。
こしまちゃんが、パンチを、軽くですけどね。
本当に、仲の良い姉妹です。


でも、実際、私とやよいちゃんの再会に、
みどりちゃんとこしまちゃんが大きな貢献を
してくれたのは事実です。
2人がいなければ、私とこしまちゃんの
再会はなかったのですから……。




それから、私たちは、みどりちゃんの音頭で
『2人の再会を祝って』乾杯しました。
まだアイテム作りとか作業をしていないのに
……と思いましたけど、この点では、
みどりちゃん&こしまちゃん姉妹が、同意
していて、積極的に動いていたので、
流れに従うことに。


で、久しぶりの、お酒……。
缶ビールですけどね。
「この1杯だけに、しよ」と決めて
飲みました。
久しぶりなので、気をつけます。
それに、ここで酔ってしまったら、アイテム
どころじゃなくなりますから。
前を見ると、映画とかTⅤとか漫画みたいに
「プァーッ!!
この1杯、サイコー!
コレがあると思うとさ、どんなヤな仕事も
頑張れるわぁ!!」とやってる、
みどり刑事。
早くも、2缶目の、今度は、チューハイ缶に
手をやっています。

こしまちゃんが何かいうかな、止めるかな、
と思いましたけど、そのこしまちゃんも、
そして、やよいちゃんも、女子だけの空間
だからでしょうか……、美味しそうに、
ゴクッゴクッと喉をならしながら、しかも、
一気に、飲んでいます!
驚きました!!!
まだまだ、『子ども』だと思っていました
から。
学生=子ども、って感じ。

でも、計算してみれば、2人とも、もう
二十歳の大学生……。
お酒を飲んでも、何の問題もないし、
もう、『大人』なわけです。


でも、アレですね。
にやけたオジサンが飲んでいる姿とか、
女たちに囲まれながらガンガン飲む
男性連中、そして、それを周りで煽る
騒がしいピーナの女共……、
そう言うのは、いっぱい見てきました
けど、女子大生が美味しそうに、家で、
缶ビールを飲む光景を見るのは、初めて
でした。
不思議な感じでした。
「あぁ、久しぶりのアルコール、美味しい
なぁ」と思えたのは、きっと、そのせいで
しょう。
それと、おそらく、お酒を飲んで、そう
思えたのも、私の人生で初めてだったと
思います。
それまでは、金を奪うためだけに飲み、
寂しさを紛らわすためだけに家で飲んで
いただけですから……。



で、肝心なのはここからです。
みどりちゃんは、すでに、2缶目に突入
していました。
その妹のこしまちゃんも、どれにしようかな
と迷っている……、その時でした。
やよいちゃんが、声を上げてくれました!
「ねぇ、こしま!そんなに飲んでないで、
ちゃんと、メインのお手伝いしないと!」。
ハッとするこしまちゃん。
言いたかったことをやよいちゃんが言って
くれたのでホッとする私。
ちょっと赤ら顔でへッとしてる、
不動みどりちゃん。


おかげで、『宴会タイム』突入は免れて、
アイテム作りができることになりました。
あそこで、やよいちゃんが言ってくれな
かったら、単なる『女子飲み会』で終わって
たかもしれないので、やよいちゃんナイス、
ですね!


それで、作業の時間が始まると、さすが、
女子大生達です……。
手先が器用で、しかも、スピードもあって、
目を瞠るものがありました。
それに比べて、2缶を飲み干したせいなのか、
いや、おそらく、仕事の疲れ……ってことに
しておきましょう。
みどりちゃんは、ちょっと……。
こしまちゃんが、「お姉ちゃん!しっかり
やって!!それじゃあ、お姉ちゃんだっけ、
役立たずだよ」と言ってハッパをかけて
あげていました。
まぁ、やり続ける中で、徐々に徐々に、
みどりちゃんのペースも上がって来て、
「こしまさぁ。うちはねぇ、しりあがり
タイプなんだよ!」と自慢してましたっけ。

そんな感じで、みどりちゃんとこしまちゃん
姉妹がワーワー言いながらの、賑やかな
時間になりました。
いつもは、婚約者と一緒の時は例外として、
一人でやっていたので、「何か良いなぁ。
こういう雰囲気……」と思いました。

あと、そうだ……。
比較的静かだったやよいちゃんも、手は
動かしながらですけど、昔の思い出を
話してくれました。
私も、みどりちゃんも、こしまちゃんも
聞き入ってしまった……、思わず、私も
自分の手が止まっていたことに気づいた
ほど……、それはそれは印象深い
『想い出のはなし』だったのです。
しかも、私も深く関わっている……。







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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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