第十五章 ⑥

文字数 2,361文字

あと、私は、今では、こうも思えています。
「この、真子と言う名前こそ母が遺して
くれた最大の贈り物なんだ」と。


母は早く死んでしまいました。
その母は、ある程度のお金も娘である私の
ために遺してくれました。
でも、草は枯れ、花が散っていくように、
お金もいつかは無価値なものになります。
死んでしまえば、一円だって、天国には
持っていけないのです。
だけど、母が、どんな理由からであれ、
たとえ偶発的出来事からであれ、
私に名付けてくれた、真子と言う
私の名前は、私が死んだとしても、その名を
憶えていてくれる人もいるだろうし、
記念碑であるお墓にも、その名は刻まれる
のです。
何より、私の名前は、最初の最初から
あるものに書き記されている……。




それと、もう1つ。
亡き母が遺してくれたもの。
その一番大きくて、最重要で、最高なのは、
この私自身なのです!
強姦犯というクズで、呪いで、ピーナ共と
同等のヤツに酷い目にあわされ、妊娠して
しまった母は、すぐに、そんなクズの
赤ん坊なんて殺してしまっても良かった
のです。
でも、産んで、その後殺すもしくは売る
ためとは言え、確かに、この私を、
苦しみ悶えながらも産んでくれました。

母が、まさに、命をかけて産み出し、
命をかけ育て、命をかけて遺してくれた
もの……、それは、私自身なんだ…。
こう思い当たった日には、もう、1日中
泣いて過ごしました。
嬉しくて、感動してしまって……。


そして、その日、深く考えましたね。
それで、結論も出ました。
それから、ずっと、今でも……、思って
います。
このように……。
「やっぱり、神様っているなぁ」と。


皆さん。
私は、昔から、宗教は大嫌いです。
母もそうでした。
だから、宗教に入信しているつもりはない
のですし、また、絶対に宗教団体に入信は
しません!


だって、宗教と神様って、別だと思うん
です。
私は、別に、ある宗教団体やら、神社やら、
お寺やらのおかげで、ここまで幸せになった
わけじゃありません。

ある日、好きだった同級生に裏切られ、
大嫌いな同級生に追いかけ回され、そいつに
学校の廊下で押し倒され、多くの子の前で
恥辱を味わわされ、不登校になり、
その後も、その事件のトラウマ、心の傷を
負い続けて生きていく。
それだけでなく、中3の時に、母を亡くし、
それだけでなく、そのすぐ後には、
自分が強姦犯の娘だと知ってしまい、復讐
だけに生きるようになる。
殺人を誓い、殺人計画のために生きるような
女になり、日々を過ごすも、対象を発見
できずに、遂には『夜の世界』に堕ちた……。


皆さん!!
これが、私です。


でも、こんな私が、です。
ある日、最悪最大のピンチを、元同級生
だった不動刑事と、私を貶めた張本人の
栄義時に助けられ、そこから、不動みどり
との友人関係も回復し、なんと、栄義時と
つきあうようになり、遂には婚約……。
それだけでなく、求職活動もせずに新しい
スーパーと言う職場まで与えられる……。
こんなスゴイ奇跡が、私に起こったんです!


で、重要なのは、この『大逆転物語』の
ようなことが、私の努力・頑張りとか、
私が某宗教団体に入信して何か修行を積む
とか、または、私が毎日神社仏閣とかに参拝
し続けて起こったことではない、という
ことです。


ありとあらゆることが、スムーズに起こり、
私の生き方、人生、思考回路が変革された
のですが……、私の努力、奮闘によるもの
でもなく、宗教の力を借りたとか、神社や
寺とかのご利益によるものでもない。
だって、あの頃の私は、願うことすら
なかったのですから……。
もう、人生に失望し、ほぼ、諦めていた
のですから。


だから、思うんです。
これは、神様という存在がいて、
その神様という存在が、私を憐れんで、
一方的に何か手を差し伸べてくれたんでは
ないかと……。
だって、そうじゃないと、私の人生に
起こって来た数々の奇跡、そして、
『大逆転』を説明できないじゃないですか。


それらは、私の奮闘・努力にもよらないし、
私が毎朝毎夜神社仏閣に参拝して必死に
祈願して起こったわけでもないし、
私が宗教団体に入信したという事実も全く
ないのですから!!


だから、私は、別に、何か洗脳されている
わけでもありませんので、このように
理論的に考えて、そして、自分自身の
これまでを振り返って、総合的に答えを
出したのです。
「神様のおかげだなぁ」と。
目に見えない、神様という存在がいて、
『夜の世界』に沈み、平戸というクソに
追われていた私を、不動刑事と栄義時を
送って、助けてくれたんだ……、と信じ
ているのです。

そうです。
「神様のおかげだなぁ」ということに
すれば、辻褄が合うし、自分を納得させ
られるのです。


どん底の状況下、最悪の日々の中での
超奇跡的な不動みどり、栄義時との再会。
また、『夜の世界』の中でもギリギリの
ところ、しーちゃんがいてくれたという
事実。
それから、こんな私が、いすみ市の
法人関係者や警察関係者なら知らぬものが
いない【栄家】に嫁ぐという事実。
これらは、絶対に、「偶然ですね」とか
「ウンが良かったですね」では済まされない
レベルのはず……、いえ、レベルです。



こんなこと、できるのって、もう、
神様しか、いないじゃないですか。

あのイヤなので、言いますけど、別に、
私は宗教を宣伝しているわけじゃ
ありません。
「宗教に染まってるヤツ」と思われたく
ありません。
昔から、今も、宗教は、嫌いです。
仏教も、イスラム教も、キリスト教も、
その他の宗教団体も大嫌いです。


そうじゃなくて、宗教とか宗教団体とかと
全く関係なく、目に見えない偉大な神様と
言う存在は、いるのだと、私は信じて
います。
そうじゃないと、学歴ナシ、家族ナシ、
誇れる職歴ナシの、自分で言うのも
何ですが『最底辺に堕ちた女』であった
私が、こんな幸せな身になれるなんて……
絶対にありえないし、説明が不可能です!









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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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