第十五章 ⑱

文字数 2,683文字

(ここでは、第⑪と時間枠が一致するので、
交互に読まれることをすすめる)







みどりちゃんも、女子大生2人も、
ガツガツ食べて、ゴクゴクと飲んで
いました。
「旦那さんの前とか男の子がいるところじゃ
こんなの絶対デキないだろうなぁ」と思い
ながら、私は呆気にとられていました。
それほど、みんな、食べて、飲むんです!

だから、私も、普段以上に食べてしまい
ました。
でも、お酒は、1缶だけにすると決めて
いたので、ガブガブ飲む女子大生や刑事
を目にしながらも、自制しました。

そうだ。やっぱり、若い学生2人は、
スゴイですね!
こしまちゃんとやよいちゃんが口を
そろえて言ったものです。
「ご飯もあるって、さっき……。
ご飯、もらえますか?麻婆豆腐と一緒に
食べたら絶対に美味しいんで!」と。

はい。美味しいのは、分かります。
たしかに、普通は、白米と一緒に食べる
ものでしょう。
でも……。
もう、こんなに、あんのに!?
正直、驚きました。
底なしだなぁ……って。
「私が二十歳の頃、こんなに食べれた
かな?
今の子は、これが普通なのかな……」と。
まぁ、そんなのは口に出さずに、
キッチンに行き、お茶碗にご飯を、
やや多めによそって、持って行って
あげました。

けど……。
結局。若い2人は、お替りまでして、
そして、ピザも中華2品もツマミや
その他もたいらげてましたね。
あれには、内心、たまげました。
それと、あれで、よく体形が維持できる
なぁと思いました。
若さですかね……。
ピチピチの女子大生ですものね。



それで、そう。
もちろん、女子会ですから!
ただ、食べて、飲んで……ってわけじゃ
ないですよね。
当然、ワーワー、キャーキャー……です。
男性の方がいたら、絶対に、耳を塞いで
逃げ出すような賑やかさ。
まぁ、それが良いんですけどね!

で、何かのキッカケで、「修学旅行
とかの想い出を発表し合おう」ってことに
なったんです。
誰が言い出したのかな……。
たしか、こしまちゃんだったかと思います
けど。
とにかく、そんな流れになったんです。

でも……!
実際問題、私は、大学には当然行っていない
ですし、高校にも行かなかった。
中学は、愛媛と奈良の2つの学校に通い
ました。で、どっちとも、そんなに馴染め
ずに、仲が良くなる子もいなかった…。
で、小学生の時に、あの例の事件です!
だから、私は、『学校』とか『修学旅行』
とかいうものに良いイメージが皆無なの
です。
特に、中学時代の記憶の大半が、
「万年生理女」呼ばわりされていた、
ことなのです……。
あの頃の、悔しさ、惨めさ、恥ずかしさ
って言ったら、言葉で言い尽くせるもの
じゃありません!




だから、私は、聞き役に徹することに
しました。
3人ともかなり飲んで、良い気分になって
いるのが分かっていましたから、
その場の雰囲気に合わせていれば大丈夫
です。
それに、持ち上げてあげてれば、問題は
ないのです。
私だって、伊達に、夜の世界で稼いできた
わけじゃないですからね……。
言っちゃ悪いですけど、『酔った人達』
対策とかはバッチリなのです。



でも……。
心配無用でしたね。
私に、バトンが来ることはなかったん
です。
みんな、いい気になっていますし、
ハイ気味でしたから、しゃべるは
しゃべる!
来た時からパーティの開始までは、
やや控えめだった、こしまちゃんも、
男の人の前じゃできないような笑い方
をして笑い、話して、話す。

で、私が、一瞬思い出してしまっていた
暗い記憶も、すぐに消え去りました。
だって、みんなが、話す内容が、
本当に面白くて、面白くて!
みどりちゃん、こしまちゃん、
やよいちゃんもガハガハ笑っていまし
たが、私も、お腹が痛くなるほど笑い
ましたね、あの日は。
あんなに、笑ったのは、久しぶり
です。
それに、女子だけだから、あんなに
盛り上がれるわけです……。


こしまちゃんは、『修学旅行あるある』
的な話をしてくれました。
お酒はやめて麦茶を飲みながら…。
「高校の時、飛騨高山に行ったの。
それでね、何日目だったかな?
アッ!最終日の前の日だ!!
朝食の時にね、男子の一人が、腕に
ギブスしてるの。
前の晩までは、やってなかったのに。
で、どうしたのかって女子たちが
心配して、本人とか他の男子に訊いて
もさ、みんな、はぐらかすわけ……。
変だなぁって思ってたら、真相が判明
してね。
夜に、ソイツさ、他の奴らと一緒に、
男子風呂から女子の露天風呂を覗こう
としたんだって!
それで、何かバランス壊して、男子全員
一気に倒れて、一番下に下敷きになった
ソイツが腕骨折しちゃったんだって!
それで、大騒ぎになって、男子風呂の
方が……。
男のメチャ怖い先生が飛んで来て、
男子全員裸で長時間、正座説教プラス
その骨折したヤツは、そのまんま救急車
で運ばれて病院で説教だって。
美人看護師の前で……。
だから、その日、最終日の前日で、
最後の観光日みたいな日なのにさ、
男子は全員連帯責任で、外出禁止に
なったんだよね!
骨折もして、怒鳴られて、しかも、
観光&外出禁止でしょ。
『これだから、男子ってバカで、
子どもだよねぇ!』って、女子全員で
話したもんだなぁ。
……あ、あとさ。
それで、オチがあってね。
その骨折したヤツ、野球部のエース
だったんだけどさ、そんな骨折した
状況で帰ったでしょ……。
しかも、女風呂覗き未遂で、骨折。
もうさ、野球部の顧問が怒りまくって、
骨折治った後もエース降格処分続いた
んだよねぇ。
いやぁ、本当、男子って、アレだよ
ねぇ……」。

みどりちゃんが、立ち上がって、
お腹を叩いて笑っていました!
やよいちゃんも、「いるいる、そういう
ヤツぅ!」と大笑い。
本当に、こんなマンガみたいな話が、
実際に起こるものなんですねぇ……。


で、みどりちゃんが、こしまちゃんの
肩を叩きながら言っていました。
「こしまぁ!もしかしてさ、その骨折
野郎ってさ、あんたのさ、好きだった
ヤツじゃないの!?」。
一瞬、沈黙する、こしまちゃん。
でも、すぐに、白状。
「そうなんだよねぇ!
いやねぇ、その修学旅行の中で……、
ってか、本当に、その日に、告ろう
って思ってたんだけどさ!
一瞬で、恋心も冷めたヨ!!」。
「良かった、良かった!!
告る前にさ、そんなコト起こって、
良かったじゃんさ、分かって!
そんなダサい男に告る前でさ!」。

そして、涙を浮かべながら大笑いする
みどり&こしま姉妹……。
手を叩きながら大笑いしてました。

そんな2人を見ながら、似てるなぁと、
思いましたね。
口元、そして、やや広めの額のあたり
とかがソックリです。

2人は、本当に、長く長く笑い続けて
いたものです……。
つられて、私とやよいちゃんもその笑い
に巻き込まれます……。
楽しく、賑やかな夜です!








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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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