第十五章 ⑦
文字数 2,976文字
人生って、「偶然だなぁ」とか「ついて
るなぁ」とかで済ますか、それとも、
「目に見えないけれど、神様のおかげ
なんだなぁ」と考えるかで、大きく
変わるものだなぁと……。
私は、後者です。
それで、後者のような考え方、思い方で
生きていると、どんどん、素晴らしいコトが
起こって来るんです。
そのことに、最近、気づきました。
さて、季節は、結婚式を目前にした
3月半ばになりました。
式まで、あと3か月……。
あの頃は、毎日、自然と頬が緩む、
そんな日々でした。
やっと大好きな男性と一緒になれるんです
から!
今まで一人ぼっちだった夜。
自分一人で慰めるしかない空虚な日々、
そして、それが永遠に続くんだろうなぁと
諦めていた女として枯れた毎日だったのに
夫に抱かれる日が近づいているのです。
変な意味にとられちゃうかもしれませんが
楽しみで、楽しみで、夜は胸がいつも
ドキドキ状態でした……。
もう、虚しく、自分一人でそういうことを
するということも、なくなっていました。
あともう少しで、ちゃんとした行為、夫婦
として自然なことをする日が来るのです
からね!
すみません。ちょっと、大人の内容、
きわどいお話をしてしまっていました…。
今になって恥ずかしくなって、顔が真っ赤
になっています。
えっと、それで、3月半ばはですね……。
婚約者と二人で、千葉県のホテルに出かけ
て担当者の方と打ち合わせたり、彼の
アパートや私のマンションを交互に行き来
して、式のための作業に二人で没頭したり
という、結婚に向けた二人での時間。
そして、私個人で言えば、スーパーでの
バイトと料理教室通い…。
かなり、忙しかったですね、あの頃は。
そんな3月の出来事として、一番印象深い
のは、祝日に起こったあることでした…。
私は、彼と一緒に過ごしたかったのです。
デート……って言っても、式の準備やらで、
それどころじゃありませんから、
『デート気分』の作業&打合せとかに、
その日を充てたかった。
でも、彼から、その日は、どうしても、
仕事を休めないという連絡が……!!
「しょうがないわね。仕事じゃ……」と
すぐに割り切りました……って、ウソです。
すぐに、割り切れるわけないじゃナイです
か!?
私たち、遠距離ですよ!?
なかなか、会えない!
会社帰りに、「やぁ!」、「お待たせ~」
で会えて、そのまま、どっかに飲みに
行くカップルたちとは、違うんです!!
正直、「祝日よ!?私、休もうと思って
たのに……。普段なかなか会えないから、
二人で色々やろうっと、思って!
ねぇ、仕事と私、どっちが大事なの!?」
と詰問するために、電話を掛け直して
やろうかと……思いましたが、結局は、
自制心をフル稼働させて、やめました…。
でも、そんな傷心の2歩手前位の私に
ですね、その祝日の前日(前夜)、電話が
かかってきたのです!!
皆さん、誰からだと思います?
婚約者から、「おい!やっぱり、明日、
会えることになったヨ!!」という電話
だったと思いますか?
答えは、残念ながら、違いま~す!
電話をかけてきた相手は、刑事であり、
既婚者でもある、みどりちゃんでした。
みどりちゃんは、言いました。
「明日さ、義時と会うの?
……あっ。そう、会わないんだ。
じゃあさ、夕方さ、仕事終わりに、
そのまま、そっち行くよ!
結婚式の準備、大変でしょ。
色々手伝うからさ……!」。
ありがとうと、即答しました、もちろん。
でも、みどりちゃんは、あっそうだ……と
言って、続けたんです。
「それでさ……。明日、ちょうどさ、妹と
野暮用でちょっと会うことになっててさ…。
署の仕事終わって、すぐ妹とちょっこと
会ってさ、そのまま、妹も連れて行くよ。
案外、あの子、手先器用だから、良いように
使って良いからさ!」。
正直、戸惑いました。
嬉しいと言うより、心配の方が大きかった
ですね。
確かに、人手は、あったらあるだけ、良い!
それは、事実です。
山ほど、残っているのですから、式当日
までにクリアしないといけない課題が…!
でも、知らない人……、が来る??
不安が大きいです。
私の戸惑いや心配を察したのか、
みどりちゃんが、大きな声で言います。
「大丈夫よ!
真子ちゃんさ、あの子に、昔、会ってる
からさ……。
顔見れば、真子ちゃんも、思い出すし、
あっちも真子ちゃんのこと憶えてる
だろうしさ。
ヒマな学生なんだからさ、遠慮なく使って
やってよ」と……。
そこまで言うならと……、私は、
まだちょっと不安がありましたが、
「分かった。待ってるね」と答えたのでした。
そして、その祝日……、当日。
祝日でしたが、お金を貯めないといけない
ので、勤務させてもらいました。
何より、婚約者と会えないなら、
仕事しよう……って気分だったので…。
それで、いつも通りの時間までカノたちと
一緒に働いて、従業員専用駐輪場でカノと
別れました。
いつもなら、そこから、カノと2人で、
料理教室にゴーですが、祝日なので、
教室はお休みです。
「今日は、これから、おばあちゃん家に
行って、おばちゃあんのご馳走をみんなで
食べるんだ!あと、ぼたもちネ!!」。
そう言って、カノは、ギュインーと自転車
を飛ばして、消えて行きました。
思わず、立ち尽くしたまま、「若いなぁ」
と呟いてしまっていました。
こちとら、ずっと働いていて身体が疲れ、
一休みしたいって言うのに……。
20代と高校生の差だなぁ……と思って、
ちょっと、切なくなりかけけました…。
まぁ、私が、カノの真似なんかして、
仕事帰りにあんなに自転車飛ばしたら、
途中で、バテて倒れこんじゃうでしょう。
そんな格好悪いこと、いい年した女が、する
わけにゃいきません。
だから、大人として、自重するのです。
ま、こういう時に、年齢を感じさせられ
るものですね……。
で、話を戻しますね。
私も……、カノほどじゃないけれど、
みどりちゃんたちを迎える準備があるので、
大急ぎで自宅マンションに戻ります。
いつもより飛ばしたので、気づいたら肩で
息をしていました。
カノには、絶対に見られたくない姿でし
たね…。
いつもは、階段ですけど、みどりちゃんたち
を迎えるために、従業員割引で買ってきた
ジュースやお菓子、食材があったので……、
と言うより正直、カノに負けてなるものかと
飛ばし過ぎたせいもあって疲れていたので、
エレベーターを使います。
「手洗い、冷蔵庫、洗濯物…。それから、
アイテム用意と料理か……」。
エレベーターの中で、この後のスケジュール
を思い浮かべます。
玄関に入るなり、猛ダッシュです。
パッパッパと片づけること、片づけて、
朝も掃除をちゃんとしたのですが、最終
確認……。
それから、あっと思い出して、布団の準備
も……。
実はですね、みどりちゃんから出勤前に
連絡があって、
「今日、旦那が宿直だからさ……。
そのまま、泊まっても良いかな?
万事終わったらさ、そのまま女子会しよ!」
と提案されました。
もちろん、即快諾です。
独身女一人で夜を過ごすより、
大親友と一緒に過ごした方が楽しいに
決まってますから!
「こう言うのが、『独身時代を謳歌する』
ってことなのかな?」と思いながら、
布団を敷きます。
それと、マクラ投げでもするかなと、
考えながら枕カバーも……。
そんなかんなで、猛ダッシュで色々と
やっていると、
何か、もう、結婚して家事に励んでいる
奥さんになったかのようで、何だか、
幸せな気分になりました。
(著作権は、篠原元にあります)