第十六章 ㊷

文字数 3,427文字

そうなのです…。
なぜならば、長い間、経口避妊薬を服用
してきたのですから、どんなに服用を
完全に止めたからと言っても、すぐに
妊娠できる身体なのでは、なかったの
です……。
それに、私は、絶対に解決しなければ
いけない問題を、未だ抱えたままの状態
でした。
でも、そのことは、すっかりと頭から
抜け落ちていたのです。




さて、それらを解決するための
第二の『人生のターニングポイント』は、
あるレストランだったのですが…。
その前に、私達は……と言うより、私の
我儘を聞いてくれた雪子さんと真子ちゃん
のおかげで、道後温泉に行くことができ
ました。
やはり、愛媛、松山と言えば、道後温泉
です!
期待通り、素晴らしい温泉街でした。
商店街も、足湯も、素敵な駅も、最高
でした。
で、日帰り旅行なので、時間が限られて
いますから、まさに、『烏の行水』では
あったのですが、ちゃんと、道後温泉も
満喫することができました!!

雪子さんは「私は、温泉にはいると、
すぐにのぼせちゃうから……」と言って、
そして、真子ちゃんは、「ゴメン。私、
ちょっと、近くに、どうしても行きたい
とこあるから」と言うので、結局、温泉に
はいったのは、私だけでしたが…。
でも、1人でゆっくりと……、って言っても
ほんのわずかな時間ですが、温泉で
ゆったりできたのは事実です。
温泉に浸りながら、「いつか、子どもも
連れて、ここに戻って来たいなぁ」と
思いました。


私が、温泉の建物を出ると、すでに、
雪子さんと真子ちゃんが待ってくれて
いました。
真子ちゃんは、アイスクリームを食べて
います。
2人が、「どうだった?」と訊いてきた
ので、正直に、「最高でした!」と
答えました。
すると、何故か、真子ちゃんは意外そうな
顔をしていました……。


で、そこから、私達は、レストランへ
向かったのです。
私にとって、『人生のターニングポイント』
となる出来事が起こる、場所です。

運転する雪子さんに、真子ちゃんが、
「最終便だけどさ…。そんな余裕ないから
飛ばしてよ!」と何度も急かします。
警察官たる者として注意しようかなぁと
思ったのですが、「はいはい」と言うけど
結局雪子さんが、法定速度以上は出さない
人だったので、ホッとしました。
まぁ、真子ちゃんが焦る気持ちも分かる
のですけどね……。
私たちが乗ることになっていた飛行機は
最終便で、松山空港を夜の8時前に出発
する便でした。


それでですね、何だかんだありましたが、
市駅近くのレストランに到着しました。
真っ先に、車を降りたのは、真子ちゃん。
時間をかなり気にしていてるのが、誰から
見ても明らかです。
で、真っ先に、お店の中へ消えて行きました。
月光仮面みたいだな、って思いましたね。
それと、「真子ちゃんて、絶対、空港とかに
予定の何十分も前に着いていないと、
落ち着かないタイプなんだろうなぁ」と
……。
逆に、どちらかと言うと、私は、
「ちゃんと乗れる時間までに着ければ、
それで、良い。
それまで、家でゆっくりしたい」って言う
タイプなのです。
だから……。真子ちゃんと同じタイプである
母から、よく「早く、早く!!」と子どもの
頃は、言われたものです。


で、そんな話は良いのですけど…。
とにかく、私と雪子さんも中に入るべく
向かいます。
「あそこが、市駅ですよ。
それでね、昔、よく、真子と、
こっちの方に来るたびに、ここで、ご飯
食べたんですよ」と、雪子さんが教えて
くれました
あと、そうだ…。
「ここはねぇ、釜飯が、本当に美味しいの。
絶対におススメ!」とも。
なので、もうお店の中に入る前から、
私は、注文するものを決めていました。

そして。
お店の入口を開ける前から、それはそれは
香ばしい匂いが……。
もう、お腹が鳴りそうになるほどの。
「あッ!ここ、絶対、ウマいな」って
分かりました。
それに、地元の雪子さんもお墨付きなの
ですからね。


中に入ると、高校生くらいの店員さんと
真子ちゃんが待っています。
真子ちゃんが、「遅いよぉ!飛行機の時間
あるんだから、早く。あ、掘り炬燵で良い
よね」と……。
「そう。掘り炬燵のお部屋空いてるの?
お願いします」と雪子さん。

そして、私達3人は、そのおかっぱ頭の
可愛らしい店員さんに案内され、奥の
掘り炬燵の部屋に。

奥に、真子ちゃんがドカッと。
雪子さんは、「あなたも、あっちに、
どうぞ」と言ってくれたのですが、
遠慮して、そこは雪子さんに…。
なので、奥に、真子ちゃんと雪子さん。
手前に私という感じで座りました。

目の前に座る2人。
大伯母と……。なんて言うのだろう?
姪の娘…。
分からないけれど、1つは分かります。
顔が、どことなく似ているのです、2人
とも。
完全にそっくりってわけではないのです
けど、どことなく似ている、雪子さんと
真子ちゃん。
まぁ、あえて、それは言いませんでした
けどね……。


それで…。
私は、雪子さんが、教えてくれた、
釜飯のセットにしました。
そして、やはり、愛媛ですから、鯛の
釜飯です!!
しかも、事前調査済みの『じゃこ天』
までついてくる!
豪華過ぎる!!

で……。
真子ちゃんは、真剣にメニューを眺めて
います。
ここぞとばかりに、雪子さんが言って
やってましたね(笑)
「良いの?時間ないんでしょう?
早く決めんと……」って。
笑いをこらえました、私は…。


で、結局は、真子ちゃんも、私達と同じ
釜飯のセット。
でも……、それだけじゃなく、
色々と注文していましたね。
雪子さんは、私にも、「好きなのあったら、
遠慮なく頼んでくださいね。まだ、二人とも
若いんだからね」と言ってくれましたが、
遠慮しました……って言うより、親友が
あまりにも、どんどん頼んでいるのを見て、
「あ…。真子ちゃんの頼んだの、みんなで
食べれば良いんだ!」って思えたわけです。
それに、雪子さん、言ってましたから。
「ここ、釜飯がね、最初から大盛なの。
他のお店の倍くらいの量だから……。
2人に、最後は、手伝ってもらうことに
なるわ」と……。
だから、私は、あえて、サイドは注文せず
で行くことに……。


結局…。
あの、さっきのおかっぱの店員さんが復唱
するのを聞いたら!!
当然の釜飯セットが3つ。
1つは、大盛…!?
「えッ!普通でも、他所の大盛サイズ
なのに……」と耳を疑いました。
当然ですけど、それは、真子ちゃんの分。
あと、真子ちゃんがオーダーしてたのが、
じゃこてんサラダ、じゃこカツ、鯛の
カルパッチョ、あと、お刺身盛り合わせ、
そして、唐揚げとポテトフライ……!!
満足気な笑顔を浮かべる、真子ちゃん。
雪子さんがいなければ、「頼み過ぎッ!
そんなに食べれんの!?」と突っ込む
のですけど……やめました。


で……。
待ち時間。
料理が出て来るまで。
雪子さんと色々お話しました。

雪子さんが、「ここはねぇ、美味しくて、
うちの教会にも近いのでねぇ……。
時々、牧師先生や教会の皆でも、来るのよ」
と。
その時、思い出しました。
そう言えば、真子ちゃんが言っていました。
「雪子おばさんは、クリスチャンだから
……」と。

そうか……。
「だからか……。目が澄んでて、全身から
優しい雰囲気が出てて、それと、何だか
分かんないけど、聖なるオーラが、いつも
出てるんだ」と。
これ、率直な感想でした。


さて、真子ちゃんは……と言えば、
壁にもたれかけながら、携帯電話を操作
したりしています。
ピンときます。
「義時に、メールしてるな」。
結婚式を直前に控えるカップルです。
丸1日会えなければ、かなり、キクことで
しょう。
私たち夫婦みたいに結婚して何年も経てば
別ですけどね……。
なので、何も言わず、黙っておいてあげる
ことにしました。
雪子さんも、あえてなのか、何も
言いません。

携帯をいじる真子ちゃんを見て、思った
のを憶えています。
「本当、スタイルも良いし、美人だよ
ねぇ。
まぁ、だから、お水で稼げてたってのも
あるけどな……。
ま、結婚したら、スタイル維持は不可能
だけどね」と。
実際、私もそうでしたから。
結婚して、私も夫も、数キロ増えましたね。
理由は何点かありますが、一番の理由は、
多分ですけど、もう、『獲物を釣った』
ので、そんなに外見気にしないで良いから
……。
って、そんな、私たち夫婦の話は別として
…。
真子ちゃんを見ながら、思ったのは事実
です。
「いや、絶対、結婚したら太るよ」と。
勿論、声には出しませんけどね。
だって……。あんなに、つまり、大盛+
サイド多数を注文したんですから!










(・著作権は、篠原元にあります

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登場人物紹介


奥中(おくなか) 真子(まこ)のちに(養子縁組により)(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)栄真子




 本書の主人公。小学校3年生のあの日 、学校のクラスメートや上級生、下級生の見ている前で、屈辱的な体験をしてしまう。その後不登校に。その記憶に苛まれながら過ごすことになる。青春時代は、母の想像を絶する黒歴史、苦悩を引継いでしまうことなる、悲しみ多き女性である。





(あし)() みどり



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、大親友。



しかし、小学校3年生のあの日 、学校の廊下を走る真子の足止めをし、真子が屈辱的な体験を味わうきっかけをつくってしまう。



その後、真子との関係は断絶する。










(よし)(とき)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメート。葦田みどりの幼馴染。



小学校3年生のあの日 、学校の廊下で真子に屈辱的な体験をさせる張本人。











奥中(おくなか) 峯子(みねこ)



本書の主人公、真子の母。スーパーや郵便局で働きながら、女手ひとつで真子を育てる。誰にも言えない悲しみと痛みの歴史がある。








雪子(ゆきこ)



本書の主人公、真子の大伯母であり、真子の母奥中峯子の伯母。


愛媛県松山市在住。







銀髪で左目に眼帯をした男



本書の主人公、真子が学校の廊下で屈辱的な体験をするあの日 、真子たちの



住む町で交通事故死した身元不明の謎の男性。



所持品は腕時計、小銭、数枚の写真。










定美(さだみ)(通称『サダミン』)



本書の主人公、真子が初めて就職したスーパーの先輩。



優しく、世話好き。



だが、真子は「ウザ」と言うあだ名をつける。









不動刑事



本書の主人公、真子が身の危険を感じ、警察署に駆け込んだ際に、対応してくれた女刑事。



正義感に溢れ、真面目で、これと決めたら周囲を気にせず駆け抜けるタイプである。



あだ名は、『不動産』。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課巡査部長。
















平戸



本書の主人公、真子につきまとう男。



また、真子の母の人生にも大きく関わっていた。






愛川のり子



子役モデル出身の国民的大女優。



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌などで大活躍中。







石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子の小学校時代のクラスメートであり、幼馴染。小学校3年生のあの日 、真子を裏切る。




(やぎ)(ぬま) 真子のちに(結婚により)(さかえ) 真子



 本書の主人公。旧姓は、奥中。



小学校3年生の時、学校中の見ている前で屈辱的体験をし、不登校に。



その後は、まさに人生は転落、夜の世界へと流れていく。



だが、22歳の時小学時代の同級生二人と再会し、和解。回復への一歩を歩みだす。

(さかえ)(よし)(とき)



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をさせた張本人。



そして、真子が22歳の時、男に追われているところを助けた人物でもある。



その後、真子の人生に大きく関わり、味方、何より人生の伴侶となる。

柳沼雪子



本書の主人公、真子の大伯母。養子縁組により、真子の母となる。



夫は眼科医であったが、すでに他界。愛媛県松山市で一人暮らしをする愛の女性である。

定美(さだみ)(通称・『サダミン』)



本書の主人公、真子が大事にしているキーホルダーをプレゼントしてくれた女性。



真子が川崎市を飛び出して来てから長いこと音信不通だったが、思いもしないきっかけで、真子と再会することになる。

不動みどり



本書の主人公、真子が小学校3年生の時、屈辱的体験をするきっかけを作ってしまう。



そして、真子が22歳の時、再会。つきまとい行為を続ける男から真子を助ける。



旧姓は、葦田。警視庁阿佐ヶ谷中央警察署生活安全課・巡査部長。

都和(とわ)



明慈大学理工学部で学んでいた女性。DVによる妊娠、恋人の自殺、大学中退……と、真子のように転落人生を歩みかけるが、寸前を真子に助けられる。

愛川のり子



〔あいのん〕の愛称で、幅広い世代から人気。



映画、テレビ、雑誌、海外でのドラマ出演など活躍の場を広げる国民的大女優である一方、息子の『いじめ報道』に心を痛め、また後悔する母親。



本名は、哀川憲子。

()(おり)



結婚した真子の義姉となる女性。



真子との初対面時は、性格上、真子を嫌っていたが、



後には、真子と大の仲良し、何でも言い合える仲になる。



名家の出身。



 

石出(いしで) 生男(いくお)



本書の主人公、真子を裏切った人物。



真子が小学時代の同級生二人と再会し、和解した夜に自殺。



第二巻では、彼の娘の名前が明かされる。

新名 志与


旧姓、長谷島。

第一章では、主人公に、『しーちゃん』と呼ばれている。

夜の世界で働いていた真子にとって、唯一の親友と

呼べる存在、姉的存在だった…。


ある出来事をきっかけに、真子と再会する(第二章)


小羽


 真子の中学生時代(奈良校)の同級生だったが…。


第二章で登場する時には、医療従事者になっている。

居村


 義時と真子が結婚式を挙げるホテルの担当者。

ブライダル事業部所属、入社3年目の若手。

 

真子曰く、未婚、彼氏募集中。

不動刑事


主人公の親友である不動みどりの夫。


石出生男の自殺現場に出動した刑事課員の1人。



最愛の妻、同じ署に勤務する警官のみどりが、

自分に隠れ、長年自宅に『クスリ』を保管、しかも、

所持だけではなく、使用していた事実を知った

彼は……。

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