第7話 連鎖倒産(その2)
文字数 1,307文字
(7) 連鎖倒産 <続き>
「ホームページに表示されている買い気配が1時間前から暴落していますね。ちなみに、これが本日のジャービット・コインの5分足(あし)の日中チャートです。」
そう言うと、スミスは俺に画面を見せた。
【図表5-4:ジャービット・コインの日中チャート(5分足)】
「あらまあ。1時間前は6万~7万JDだったのに、3万JDまで落ちているね。何かあったのかな?」
※本書では、ジャービス・ドル(JD)は1円としています。
「ちょっと値動きが異常ですね。急に投資家の売りが殺到したんでしょうか? 電話して聞いてみます」
そう言うと、スミスはジャービット・エクスチェンジに電話しはじめた。
俺はその間に、他のメンバーにも状況を聞いた。
どの暗号資産交換業者もなかなか厳しい状況のようだ。
こういう取り付け騒ぎは数日で収まるはずだ。
だから、1週間くらい資金繰りが持てば倒産は回避できるだろう。
大企業の子会社は問題ないと思う。
独立系の暗号資産交換業者は難しいかな?
俺は不安を感じながらも状況を見守ることにした。
しばらくすると、ジャービット・エクスチェンジに電話をしていたスミスが戻ってきた。
「やはり、急にジャービット・コインの保有者が、買取りを求めてきたようです」とスミスは言った。
「やっぱり・・・」
「しばらくは買い気配を引き下げながら、ジャービット・コインを買取っていたようです。それでも売りが収まらなかったため、一旦取引を停止したようです」
「そんなに大量に売りがきたのかな? 資金繰りは大丈夫そうだった?」
「社長のホセが言うには、今のところ問題なさそうです。ジャービット・エクスチェンジの決済資金はまだ余裕がありそうでした。ただ、『ジャービット・コインの時価が下がり過ぎると顧客に迷惑が掛かるから、なるべく下げずに買取りを続けたい』と言っていました」
「顧客に迷惑かけたくないのは分かるけどさ・・・。ジャービット・コインを高く買ってたらジャービット・エクスチェンジの資金が持たないよね?」と俺はスミスに言った。
「そう思います。投資家はジャービット・コインの価格が下がって損するでしょうが」
「だよね」
「ジャービット・エクスチェンジがジャービット・コインを高値で買い支えるだけの資金力があるとは思えません。ジャービット・エクスチェンジが買取りに使える資金は、ジャービット・コインの発行額が上限でしょうから」
「そうだよね。ところで、誰が売ってきているか聞けた?」
「ある投資サロンに参加している人たちが、一斉に売ってきたようです。電話対応した会社の担当者が言うには、その売却した投資家たちは『Xデーが迫っているから』と言っていたらしいです」
「『Xデー』って意味深な言葉だなー。良くないことが起きることが前提だ。その投資サロンの情報は聞けたの?」
「ホセはその投資サロンを知っていました。エミリーが運営している投資サロンだと言っていました」
「エミリーって、フォーレンダム証券のエミリーかな?」
「そうじゃないですかね・・・」とスミスは言った。
― アイツか・・・
俺はエミリーと面談した時のことを思い起こした。
<続く>
「ホームページに表示されている買い気配が1時間前から暴落していますね。ちなみに、これが本日のジャービット・コインの5分足(あし)の日中チャートです。」
そう言うと、スミスは俺に画面を見せた。
【図表5-4:ジャービット・コインの日中チャート(5分足)】
「あらまあ。1時間前は6万~7万JDだったのに、3万JDまで落ちているね。何かあったのかな?」
※本書では、ジャービス・ドル(JD)は1円としています。
「ちょっと値動きが異常ですね。急に投資家の売りが殺到したんでしょうか? 電話して聞いてみます」
そう言うと、スミスはジャービット・エクスチェンジに電話しはじめた。
俺はその間に、他のメンバーにも状況を聞いた。
どの暗号資産交換業者もなかなか厳しい状況のようだ。
こういう取り付け騒ぎは数日で収まるはずだ。
だから、1週間くらい資金繰りが持てば倒産は回避できるだろう。
大企業の子会社は問題ないと思う。
独立系の暗号資産交換業者は難しいかな?
俺は不安を感じながらも状況を見守ることにした。
しばらくすると、ジャービット・エクスチェンジに電話をしていたスミスが戻ってきた。
「やはり、急にジャービット・コインの保有者が、買取りを求めてきたようです」とスミスは言った。
「やっぱり・・・」
「しばらくは買い気配を引き下げながら、ジャービット・コインを買取っていたようです。それでも売りが収まらなかったため、一旦取引を停止したようです」
「そんなに大量に売りがきたのかな? 資金繰りは大丈夫そうだった?」
「社長のホセが言うには、今のところ問題なさそうです。ジャービット・エクスチェンジの決済資金はまだ余裕がありそうでした。ただ、『ジャービット・コインの時価が下がり過ぎると顧客に迷惑が掛かるから、なるべく下げずに買取りを続けたい』と言っていました」
「顧客に迷惑かけたくないのは分かるけどさ・・・。ジャービット・コインを高く買ってたらジャービット・エクスチェンジの資金が持たないよね?」と俺はスミスに言った。
「そう思います。投資家はジャービット・コインの価格が下がって損するでしょうが」
「だよね」
「ジャービット・エクスチェンジがジャービット・コインを高値で買い支えるだけの資金力があるとは思えません。ジャービット・エクスチェンジが買取りに使える資金は、ジャービット・コインの発行額が上限でしょうから」
「そうだよね。ところで、誰が売ってきているか聞けた?」
「ある投資サロンに参加している人たちが、一斉に売ってきたようです。電話対応した会社の担当者が言うには、その売却した投資家たちは『Xデーが迫っているから』と言っていたらしいです」
「『Xデー』って意味深な言葉だなー。良くないことが起きることが前提だ。その投資サロンの情報は聞けたの?」
「ホセはその投資サロンを知っていました。エミリーが運営している投資サロンだと言っていました」
「エミリーって、フォーレンダム証券のエミリーかな?」
「そうじゃないですかね・・・」とスミスは言った。
― アイツか・・・
俺はエミリーと面談した時のことを思い起こした。
<続く>