第4話 退職者から話を聞こう(その1)
文字数 1,554文字
(4)退職者から話を聞こう
俺たちはダウラファンドに買収された会社がどうなったのか調べていたのだが、俺は公表資料から調べても限界があることを悟った。
何とかダウラファンドの内部情報を入手する方法は無いかと探していると、ポールがホラント証券の元同僚からダウラアセットマネジメントを退職したルーカスを紹介してもらえることになった。
上手くいけばダウラファンドの内部情報を聞けるかもしれない。有難いことだ。
ポールがルーカスに連絡すると、ルーカスが総務省に来てくれることになり、面談にはルイーズとポールが出ることになった。
俺も参加したかったのだが、ポールに「ルーカスが緊張するかもしれない」と言われたので参加を見送った。
決して、仲間外れにされた訳ではない。
ルイーズとポールが会議室に入ったら、ルーカスは窓の外を見ていた。
ルーカスは2人の気配に気付かず長い時間外にある何かを凝視している。
よほど気になることがあるのだろう。
ポールはルーカスに話しかけた。
「何か気になることでもあります?」
「あそこを歩いているアロハシャツと短パンの人、国王ですか?」とルーカスが言った。
ルイーズが窓の外を見ると、国王がアイスを食べながら歩いていた。
お気に入りのガリガリ君を嬉しそうに食べている。
「そうね。あのアイス食べているのが国王。この時間に売店でアイスを買うのが日課なの」とルイーズが言った。
「テレビでしか見たことなかったんですけど、国王はスーツ着ないんですね」とルーカスは言った。
「記者会見が無い時は、だいたいあの格好ですね。他の王族もスーツは着ていませんし、働いている職員(公務員)も全員カジュアルです」とポールが説明した。
「へー。イメージとは違うなー。窓の外を見たら、アロハシャツの国王が歩いていたので、ビックリしました」
「そうですよねー。私も初めは驚きました。ちなみに、僕たちの部署は第4王子のダニエルが部長を兼務しています。私は部長がスーツを着ているところを見たことがありません」
「王族カレンダーの人たちが、身近にいるんですね」
「いますね。部長はこの会議に参加したいと言ったのですが、ルーカスが緊張すると思ったので断りました。なので、今日は不参加です」とポールは答えた。
「そうそう、自己紹介が遅くなりました。私の名前は既にご存じだと思いますが、ルーカスです。前職はダウラアセットマネジメントで、現在はトルネアセットマネジメントで働いています」とルーカスは言った。
トルネアセットマネジメントは劣後社債の買取りで内部調査部がやり取りしている運用会社だ。
「あっ、シモ社長のところですか?」とポールが聞いた。
「そうです。劣後社債の買取りでご尽力いただいたので、社長のシモから内部調査部のみなさんに協力するように言われています」
「世間は狭いですね。今回、ホラント証券の元同僚からルーカスを紹介してもらいましたが、トルネアセットマネジメントに直接聞けば良かったですね」
「そうかもしれませんね」
「それで、具体的に聞きたいのはダウラファンドの企業買収についてです」
「買収ファンドの方ですか?」
「ええ。ダウラファンドはアクティビストとして知られていますが、約2年前から買収ファンドの運用をスタートしています。買収ファンドの運用がどういう経緯で始まって、買収した会社をどこに売却しているのかを、教えてほしいんです」とポールは言った。
「まず、私にはダウラアセットマネジメントの退職時に締結した合意書で守秘義務がありますから、具体的な会社名をお教えすることはできません。守秘義務契約に抵触しない範囲内で、概要をお伝えすることでよろしいですか?」とルーカスは言った。
「もちろんです。概要だけで結構です」とポールは答えた。
<続く>
俺たちはダウラファンドに買収された会社がどうなったのか調べていたのだが、俺は公表資料から調べても限界があることを悟った。
何とかダウラファンドの内部情報を入手する方法は無いかと探していると、ポールがホラント証券の元同僚からダウラアセットマネジメントを退職したルーカスを紹介してもらえることになった。
上手くいけばダウラファンドの内部情報を聞けるかもしれない。有難いことだ。
ポールがルーカスに連絡すると、ルーカスが総務省に来てくれることになり、面談にはルイーズとポールが出ることになった。
俺も参加したかったのだが、ポールに「ルーカスが緊張するかもしれない」と言われたので参加を見送った。
決して、仲間外れにされた訳ではない。
ルイーズとポールが会議室に入ったら、ルーカスは窓の外を見ていた。
ルーカスは2人の気配に気付かず長い時間外にある何かを凝視している。
よほど気になることがあるのだろう。
ポールはルーカスに話しかけた。
「何か気になることでもあります?」
「あそこを歩いているアロハシャツと短パンの人、国王ですか?」とルーカスが言った。
ルイーズが窓の外を見ると、国王がアイスを食べながら歩いていた。
お気に入りのガリガリ君を嬉しそうに食べている。
「そうね。あのアイス食べているのが国王。この時間に売店でアイスを買うのが日課なの」とルイーズが言った。
「テレビでしか見たことなかったんですけど、国王はスーツ着ないんですね」とルーカスは言った。
「記者会見が無い時は、だいたいあの格好ですね。他の王族もスーツは着ていませんし、働いている職員(公務員)も全員カジュアルです」とポールが説明した。
「へー。イメージとは違うなー。窓の外を見たら、アロハシャツの国王が歩いていたので、ビックリしました」
「そうですよねー。私も初めは驚きました。ちなみに、僕たちの部署は第4王子のダニエルが部長を兼務しています。私は部長がスーツを着ているところを見たことがありません」
「王族カレンダーの人たちが、身近にいるんですね」
「いますね。部長はこの会議に参加したいと言ったのですが、ルーカスが緊張すると思ったので断りました。なので、今日は不参加です」とポールは答えた。
「そうそう、自己紹介が遅くなりました。私の名前は既にご存じだと思いますが、ルーカスです。前職はダウラアセットマネジメントで、現在はトルネアセットマネジメントで働いています」とルーカスは言った。
トルネアセットマネジメントは劣後社債の買取りで内部調査部がやり取りしている運用会社だ。
「あっ、シモ社長のところですか?」とポールが聞いた。
「そうです。劣後社債の買取りでご尽力いただいたので、社長のシモから内部調査部のみなさんに協力するように言われています」
「世間は狭いですね。今回、ホラント証券の元同僚からルーカスを紹介してもらいましたが、トルネアセットマネジメントに直接聞けば良かったですね」
「そうかもしれませんね」
「それで、具体的に聞きたいのはダウラファンドの企業買収についてです」
「買収ファンドの方ですか?」
「ええ。ダウラファンドはアクティビストとして知られていますが、約2年前から買収ファンドの運用をスタートしています。買収ファンドの運用がどういう経緯で始まって、買収した会社をどこに売却しているのかを、教えてほしいんです」とポールは言った。
「まず、私にはダウラアセットマネジメントの退職時に締結した合意書で守秘義務がありますから、具体的な会社名をお教えすることはできません。守秘義務契約に抵触しない範囲内で、概要をお伝えすることでよろしいですか?」とルーカスは言った。
「もちろんです。概要だけで結構です」とポールは答えた。
<続く>