第3話 オフサイト・モニタリング(その4)
文字数 1,802文字
(3)オフサイト・モニタリング <続き>
ルイーズとアドルフの口論により険悪な雰囲気が滞る会議室。
そして、俺たちは予想外の事実を知ってしまう。
―― ルイーズとアドルフは親子?
スミス、ポール、ダビドはこの場の微妙な空気を読んで一言も発しない。俺も黙っておきたいところだが、このままだとセレナ銀行の調査が進まない。
しかたなく俺は事実関係を確認することにした。
「今、アドルフは『父』って言ったよね。二人は親子なの?」
「そうだけど。それが何か?」ルイーズは当然のように言った。
ルイーズの言い方からイライラしているのが分かる。
「へー、初耳なんだけど・・・」
「え? そうだっけ?」
「ルイーズの父親は銀行員、としか聞いてなかったかな・・・」
「銀行員でしょ。嘘は付いてない」
「そうだけどさ・・・」
一方のアドルフはルイーズに侮辱されたことに腹を立てているようだ。
「ルイーズ、聞いてるのか? お前はいつからそんなに偉くなったんだ?」
「うるさいわね! 私が偉いかどうかは関係ないでしょ。今はアンタの仕事がいい加減だと言ってるのよ!」
二人とも矛を収めようとしない。
もはや俺たちが会議室にいるのは気になる素振りもない。
このままだとセレナ銀行の件が進まないから、俺は2人の仲裁に入ることにした。
「まあまあ、お父さん。気持ちも分かりますけど、一旦冷静になりましょう」
「ふん、お前なんかに『お父さん』と言われる筋合いはない。お前のことを息子と認めたわけではないからな!」アドルフは大声で言った。
―― 息子ってなんだよ・・・
俺が『お父さん』と言ったのが気に食わないのか、特に大意はないのかは分からない。
しかたがないから、次はルイーズを止めに入る俺。
「ルイーズも落ち着いて! 今日はセレナ銀行の件で来たんでしょ。このままだと、調査が開始できないよ」
「ダニエルはあのクソ野郎の味方をするの?」
「敵も味方もないから・・・。とりあえず冷静になろうよ」俺は諭すように言った。
「うちの娘に気安く話しかけるな!」
なぜか俺とルイーズの会話に乱入するアドルフ。
「いやいや、お父さん。ルイーズは内部調査部のメンバーですから。話くらいしますよ」
何もやましいことをしていないはずなのに、なぜか言い訳することになる俺。
「だから、お前に『お父さん』と言われる筋合いはない。そもそも、うちに挨拶に来ないような奴に『お父さん』と言われたくない!」
―― 何か誤解があるようだな・・・
俺の推理が正しければ、こいつ(アドルフは)は俺とルイーズが付き合っていると勘違いしている。
アドルフのルイーズに対する怒りの矛先が、俺に向けられているような気がする。
俺がアドルフに『俺たちは付き合ってませんよ!』と言っても説得力がないと思ったので、俺はスミスに「誤解を解いてほしい!」という趣旨のアイコンタクトをした。
俺の趣旨を理解したかは分からないが、スミスが発言した。
「お父さん、聞いてください。少し誤解があるように思いましたので、老婆心ながら私からご説明させていただきます」
「なんだ、お前も『お父さん』と言うのか?」
今日のアドルフは『お父さん』に敏感に反応する。
スミスは返答に困りながらも任務を全うするために言った。
「この際、呼び方は気にしないで下さい。重要なのは『あの二人は付き合っているわけではない』ということです」
「付き合っていない?」
「はい。私の理解では、あの二人はそういう関係ではありません」
「え? ルイーズ、そうなのか?」アドルフはルイーズに確認する。
「何のこと?」
「だから、お前と部長は付き合っているんじゃないのか?」
「付き合ってないわね」
「え? そうなのか? みんな『お前とダニエル王子が付き合ってる』と言っとるぞ」
俺は「うぉほん」と咳払いをした。
「だから、お父さん。セレナ銀行の話を続けましょう」と俺はアドルフに優しく言った。
アドルフは我に返ったようだ。周囲の目を気にして、恥ずかしそうにしている。
その後、俺たちはアドルフとダビドからセレナ銀行の内情をヒアリングした。
また、有難いことにセレナ銀行の調査にダビドも同行してくれることになった。
恥ずかしい対応をしてしまったアドルフのせめてもの罪滅ぼしだ。
内部調査部は人手が足りないから、ダビドを派遣してくれるのは助かる。
さて、これで準備は整った。
セレナ銀行に乗り込むぞ!
ルイーズとアドルフの口論により険悪な雰囲気が滞る会議室。
そして、俺たちは予想外の事実を知ってしまう。
―― ルイーズとアドルフは親子?
スミス、ポール、ダビドはこの場の微妙な空気を読んで一言も発しない。俺も黙っておきたいところだが、このままだとセレナ銀行の調査が進まない。
しかたなく俺は事実関係を確認することにした。
「今、アドルフは『父』って言ったよね。二人は親子なの?」
「そうだけど。それが何か?」ルイーズは当然のように言った。
ルイーズの言い方からイライラしているのが分かる。
「へー、初耳なんだけど・・・」
「え? そうだっけ?」
「ルイーズの父親は銀行員、としか聞いてなかったかな・・・」
「銀行員でしょ。嘘は付いてない」
「そうだけどさ・・・」
一方のアドルフはルイーズに侮辱されたことに腹を立てているようだ。
「ルイーズ、聞いてるのか? お前はいつからそんなに偉くなったんだ?」
「うるさいわね! 私が偉いかどうかは関係ないでしょ。今はアンタの仕事がいい加減だと言ってるのよ!」
二人とも矛を収めようとしない。
もはや俺たちが会議室にいるのは気になる素振りもない。
このままだとセレナ銀行の件が進まないから、俺は2人の仲裁に入ることにした。
「まあまあ、お父さん。気持ちも分かりますけど、一旦冷静になりましょう」
「ふん、お前なんかに『お父さん』と言われる筋合いはない。お前のことを息子と認めたわけではないからな!」アドルフは大声で言った。
―― 息子ってなんだよ・・・
俺が『お父さん』と言ったのが気に食わないのか、特に大意はないのかは分からない。
しかたがないから、次はルイーズを止めに入る俺。
「ルイーズも落ち着いて! 今日はセレナ銀行の件で来たんでしょ。このままだと、調査が開始できないよ」
「ダニエルはあのクソ野郎の味方をするの?」
「敵も味方もないから・・・。とりあえず冷静になろうよ」俺は諭すように言った。
「うちの娘に気安く話しかけるな!」
なぜか俺とルイーズの会話に乱入するアドルフ。
「いやいや、お父さん。ルイーズは内部調査部のメンバーですから。話くらいしますよ」
何もやましいことをしていないはずなのに、なぜか言い訳することになる俺。
「だから、お前に『お父さん』と言われる筋合いはない。そもそも、うちに挨拶に来ないような奴に『お父さん』と言われたくない!」
―― 何か誤解があるようだな・・・
俺の推理が正しければ、こいつ(アドルフは)は俺とルイーズが付き合っていると勘違いしている。
アドルフのルイーズに対する怒りの矛先が、俺に向けられているような気がする。
俺がアドルフに『俺たちは付き合ってませんよ!』と言っても説得力がないと思ったので、俺はスミスに「誤解を解いてほしい!」という趣旨のアイコンタクトをした。
俺の趣旨を理解したかは分からないが、スミスが発言した。
「お父さん、聞いてください。少し誤解があるように思いましたので、老婆心ながら私からご説明させていただきます」
「なんだ、お前も『お父さん』と言うのか?」
今日のアドルフは『お父さん』に敏感に反応する。
スミスは返答に困りながらも任務を全うするために言った。
「この際、呼び方は気にしないで下さい。重要なのは『あの二人は付き合っているわけではない』ということです」
「付き合っていない?」
「はい。私の理解では、あの二人はそういう関係ではありません」
「え? ルイーズ、そうなのか?」アドルフはルイーズに確認する。
「何のこと?」
「だから、お前と部長は付き合っているんじゃないのか?」
「付き合ってないわね」
「え? そうなのか? みんな『お前とダニエル王子が付き合ってる』と言っとるぞ」
俺は「うぉほん」と咳払いをした。
「だから、お父さん。セレナ銀行の話を続けましょう」と俺はアドルフに優しく言った。
アドルフは我に返ったようだ。周囲の目を気にして、恥ずかしそうにしている。
その後、俺たちはアドルフとダビドからセレナ銀行の内情をヒアリングした。
また、有難いことにセレナ銀行の調査にダビドも同行してくれることになった。
恥ずかしい対応をしてしまったアドルフのせめてもの罪滅ぼしだ。
内部調査部は人手が足りないから、ダビドを派遣してくれるのは助かる。
さて、これで準備は整った。
セレナ銀行に乗り込むぞ!