第12話 会社に提案しにいこう(その4)
文字数 1,793文字
(12)会社に提案しにいこう <続き>
私は役員留任の依頼について話を移した。
「それとは別に、もう一つ依頼事項があります」
「提案事項の【その他】ですね?」
「はい、その部分です。我々は、少なくとも1人以上の役員に、ジャービット・エクスチェンジの社長として留任をお願いしたいと考えています。長期間は年齢的に難しいと代理人弁護士のビルから聞いています。だから、2年間だけ引受けてもらえませんか?」
ホセは少し考えてから私に言った。
「それでは、私たちが判断する事項は、御社からの提案のうち1つを選ぶこと、2年間の留任を受入れるかどうか、の2点でよろしいですか?」
「そうです。その2点が当社からの提案です」
「分かりました。」とホセは言った。
続いて、私はジャービット・エクスチェンジの資金繰りについてホセたちに説明した。
「ちなみに、i5からの出資額はこの書面では5億JDと記載しています。これは、全ての顧客からジャービット・コインを2万JDで買取った場合にジャービットに追加で必要な資金が5億JDだからです。実際にはジャービット・コインを売却しない顧客もいるでしょうから、買取資金に追加で必要となるのは、5億JDを下回るとは思いますが」と私はi5からジャービットへの出資額の根拠を説明した。
「足りない場合は、追加出資してもらえますか?」と弁護士のビルが聞いてきた。
もう一度倒産すると困るからだろう。申請代理人としては当然の質問だ。
「それはご心配なく。もし運転資金など追加の資金が必要な場合は、i5からジャービットに対して、融資するか出資して資金不足額を補填する予定です」と私は質問に答えた。
これで私の提案の説明は終わった。
ホセたちは私たちからの提案について考えている。
すぐに結論は出ないかも知れないな・・・
私の説明が終わってしばらく経ったがホセたちはまだ考えている。
判断材料が十分かどうか分からないので、私はホセたちが他に知りたい情報が無いかを確認する。
「考える時間が必要でしょうから、結論をこの場で出していただく必要はありません。それで、当社の提案を判断するにあたって、何かご質問はありますか?」
ホセは少し考えてから、私に言った。
「そうですね。御社が当社のスポンサーになる理由は何ですか?」
「理由ですか?」
「つまり、御社がスポンサーになった後、当社はどのような業務を行うことになりますか?」
どう答えたらいいのだろう。
私がチャールズから聞いたことを、そのままホセたちに伝えてよいものだろうか?
悩ましいところだ。
ちらっとダニエルの方を見たら『俺に任せろ!』のようなジェスチャーをしている。
私は面倒に巻き込まれるのを避けるため、ダニエルに説明を任せることにした。
私が小さく頷くと「その点については、私からお答えします」とダニエルが切り出した。
「まず、スポンサーになる理由は、ジャービットとジャービット・エクスチェンジを取得すると、暗号資産を発行してその暗号資産を流通させることができるからです」
「暗号資産の発行と流通ですか?」
「ええ。具体的に暗号資産を何に利用するかというと、ジャービス王国の公共サービスの決済に利用したいと考えています。例えば、税金、社会保険料などの支払いです」とダニエルは言った。
「暗号資産を使って、ジャービス王国の税金を支払うということですか?」
「そうです。暗号資産で税金を支払えるようにします」とダニエルは言った。
「デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)を発行する訳ではありませんよね?」ホセはダニエルに確認した。
「デジタル通貨は発行しません。デジタル通貨を発行するとマネーストック(市中に流通する通貨量。マネーサプライともいう。)が増加します。そして、マネーストックが増えるとインフレが発生します」
「貨幣価値が下がりますからね」
「そうです。マネーストックを増やさないためにも、発行するのはデジタル通貨(CBDC)ではなく、純粋な暗号資産という位置付けにしないといけません」
「あくまで、普通の暗号資産を発行するのですか?」
「そうです。デジタル通貨ではないので、ジャービス王国の決済は従来通り法定通貨であるジャービス・ドルを利用します」
ダニエルの言いたいことがよく分からないホセたち。
気のせいか、何人か寝ているような気がする・・・
<続く>
私は役員留任の依頼について話を移した。
「それとは別に、もう一つ依頼事項があります」
「提案事項の【その他】ですね?」
「はい、その部分です。我々は、少なくとも1人以上の役員に、ジャービット・エクスチェンジの社長として留任をお願いしたいと考えています。長期間は年齢的に難しいと代理人弁護士のビルから聞いています。だから、2年間だけ引受けてもらえませんか?」
ホセは少し考えてから私に言った。
「それでは、私たちが判断する事項は、御社からの提案のうち1つを選ぶこと、2年間の留任を受入れるかどうか、の2点でよろしいですか?」
「そうです。その2点が当社からの提案です」
「分かりました。」とホセは言った。
続いて、私はジャービット・エクスチェンジの資金繰りについてホセたちに説明した。
「ちなみに、i5からの出資額はこの書面では5億JDと記載しています。これは、全ての顧客からジャービット・コインを2万JDで買取った場合にジャービットに追加で必要な資金が5億JDだからです。実際にはジャービット・コインを売却しない顧客もいるでしょうから、買取資金に追加で必要となるのは、5億JDを下回るとは思いますが」と私はi5からジャービットへの出資額の根拠を説明した。
「足りない場合は、追加出資してもらえますか?」と弁護士のビルが聞いてきた。
もう一度倒産すると困るからだろう。申請代理人としては当然の質問だ。
「それはご心配なく。もし運転資金など追加の資金が必要な場合は、i5からジャービットに対して、融資するか出資して資金不足額を補填する予定です」と私は質問に答えた。
これで私の提案の説明は終わった。
ホセたちは私たちからの提案について考えている。
すぐに結論は出ないかも知れないな・・・
私の説明が終わってしばらく経ったがホセたちはまだ考えている。
判断材料が十分かどうか分からないので、私はホセたちが他に知りたい情報が無いかを確認する。
「考える時間が必要でしょうから、結論をこの場で出していただく必要はありません。それで、当社の提案を判断するにあたって、何かご質問はありますか?」
ホセは少し考えてから、私に言った。
「そうですね。御社が当社のスポンサーになる理由は何ですか?」
「理由ですか?」
「つまり、御社がスポンサーになった後、当社はどのような業務を行うことになりますか?」
どう答えたらいいのだろう。
私がチャールズから聞いたことを、そのままホセたちに伝えてよいものだろうか?
悩ましいところだ。
ちらっとダニエルの方を見たら『俺に任せろ!』のようなジェスチャーをしている。
私は面倒に巻き込まれるのを避けるため、ダニエルに説明を任せることにした。
私が小さく頷くと「その点については、私からお答えします」とダニエルが切り出した。
「まず、スポンサーになる理由は、ジャービットとジャービット・エクスチェンジを取得すると、暗号資産を発行してその暗号資産を流通させることができるからです」
「暗号資産の発行と流通ですか?」
「ええ。具体的に暗号資産を何に利用するかというと、ジャービス王国の公共サービスの決済に利用したいと考えています。例えば、税金、社会保険料などの支払いです」とダニエルは言った。
「暗号資産を使って、ジャービス王国の税金を支払うということですか?」
「そうです。暗号資産で税金を支払えるようにします」とダニエルは言った。
「デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)を発行する訳ではありませんよね?」ホセはダニエルに確認した。
「デジタル通貨は発行しません。デジタル通貨を発行するとマネーストック(市中に流通する通貨量。マネーサプライともいう。)が増加します。そして、マネーストックが増えるとインフレが発生します」
「貨幣価値が下がりますからね」
「そうです。マネーストックを増やさないためにも、発行するのはデジタル通貨(CBDC)ではなく、純粋な暗号資産という位置付けにしないといけません」
「あくまで、普通の暗号資産を発行するのですか?」
「そうです。デジタル通貨ではないので、ジャービス王国の決済は従来通り法定通貨であるジャービス・ドルを利用します」
ダニエルの言いたいことがよく分からないホセたち。
気のせいか、何人か寝ているような気がする・・・
<続く>