第6話 個人投資家(その3)
文字数 1,498文字
(6) 個人投資家 <続き>
「譲渡担保の件ですね。確か、Lシリーズを10物件取得して、借入金が1億5,000万JDになってから、3年が経過したころだったと思います。無理をして借入をしていたので、元利金の返済ができなくなりました」とディーンは言った。
「3年間もよく払えましたね。収入からするとかなり大変だったでしょう」と俺はディーンに聞いた。
「本当に大変でした。給与だけでは賄えないので、貯蓄を取崩しながら払っていました」
ディーンは当時を思い出しながら言った。
「払えなくなった後、何か動きがありましたか?」と俺は聞いた。
「元利金が払えずに延滞した後、ロワール銀行の担当者のスティーブンから連絡がありました。スティーブンが言ってきたのは『ローンを全額一括返済してほしい』でした。もし一括返済できない場合は『追加の担保を入れてほしい』とも言われました」
「それでどうしましたか?」
「全額一括返済でるはずありませんから、自宅を追加担保にしました。20年前に購入した物件でしたが、市場価値として5,000万JD近くあったので、借入金の担保として使えると思ったからです。ただ、今思えば、初めから自宅の担保を狙っていたのではないかと思います」
「というのは?」
「ロワール銀行に追加担保を入れても私の収入が増える訳ではありません。借入金の返済が楽になるわけもなく、しばらくすると、また延滞しました」
「まあ、そうなりますね・・・」
俺はだんだんディーンのことが可哀そうになってきた。
「延滞したら、ロワール銀行のスティーブンは前回と同じようなことを言ってきました。『担保物件を売却して借入金を返済する』か『追加担保を入れる』かです」
「大変でしたね」
「ええ。ロワール銀行からの借入金は少しずつ元本返済していたものの、その時の残高1億2,000万JDです。全額一括で払えるはずがありません。せっかく手に入れた投資不動産だったので担保物件を売却したくありません。さらに、追加担保にできる物件もありませんでした」
「それは難しい選択でしたね・・・」
「ええ。私がその2択で悩んでいた時、レンソイス不動産のリードが私のところに電話をしてきました」
「リードが?」
「ええ。リードは、『レンソイス不動産の系列のLファイナンスで1億2,000万JDを借換えしてはどうか?』と提案してきました」
Lファイナンスはレンソイス不動産からの紹介だったようだ。
やっとLファイナンスが登場した。
「Lファイナンスのローンの条件はどういうものでしたか?」と俺は質問した。
「Lファイナンスのローンは、返済期間が1年でした。返済期間が短いものの、期中の元本返済はありません。期限一括返済という元本返済条件です。借入期間は利息だけ支払えばいいんです」
「ただ、借入期間が1年だと短すぎますよね?」
「短いとは思いました。でも、リードは『1年の返済期限が到来した時に担保不動産に問題がなければ、借換えすることができる』と言いました。その話を聞いた私は、1年自動更新のローンだと認識しました。でも、実際は自動更新のローンではなかったわけです」
自動更新のローンのわけがないが、リードはディーンにそう誤解させるような説明をしたのだろう。
俺は顛末をディーンに確認する。
「何があったのですか?」
「Lファイナンスから借入をして1年が経過して期日がきました。そうしたら、Lファイナンスの担当者のジョーから、『担保不動産の価値が下がっているから、借換えはできない』と言われました」
予想通りだ・・・
可哀そうなディーン・・・
俺はディーンのことが可哀そうになってきた。
<続く>
「譲渡担保の件ですね。確か、Lシリーズを10物件取得して、借入金が1億5,000万JDになってから、3年が経過したころだったと思います。無理をして借入をしていたので、元利金の返済ができなくなりました」とディーンは言った。
「3年間もよく払えましたね。収入からするとかなり大変だったでしょう」と俺はディーンに聞いた。
「本当に大変でした。給与だけでは賄えないので、貯蓄を取崩しながら払っていました」
ディーンは当時を思い出しながら言った。
「払えなくなった後、何か動きがありましたか?」と俺は聞いた。
「元利金が払えずに延滞した後、ロワール銀行の担当者のスティーブンから連絡がありました。スティーブンが言ってきたのは『ローンを全額一括返済してほしい』でした。もし一括返済できない場合は『追加の担保を入れてほしい』とも言われました」
「それでどうしましたか?」
「全額一括返済でるはずありませんから、自宅を追加担保にしました。20年前に購入した物件でしたが、市場価値として5,000万JD近くあったので、借入金の担保として使えると思ったからです。ただ、今思えば、初めから自宅の担保を狙っていたのではないかと思います」
「というのは?」
「ロワール銀行に追加担保を入れても私の収入が増える訳ではありません。借入金の返済が楽になるわけもなく、しばらくすると、また延滞しました」
「まあ、そうなりますね・・・」
俺はだんだんディーンのことが可哀そうになってきた。
「延滞したら、ロワール銀行のスティーブンは前回と同じようなことを言ってきました。『担保物件を売却して借入金を返済する』か『追加担保を入れる』かです」
「大変でしたね」
「ええ。ロワール銀行からの借入金は少しずつ元本返済していたものの、その時の残高1億2,000万JDです。全額一括で払えるはずがありません。せっかく手に入れた投資不動産だったので担保物件を売却したくありません。さらに、追加担保にできる物件もありませんでした」
「それは難しい選択でしたね・・・」
「ええ。私がその2択で悩んでいた時、レンソイス不動産のリードが私のところに電話をしてきました」
「リードが?」
「ええ。リードは、『レンソイス不動産の系列のLファイナンスで1億2,000万JDを借換えしてはどうか?』と提案してきました」
Lファイナンスはレンソイス不動産からの紹介だったようだ。
やっとLファイナンスが登場した。
「Lファイナンスのローンの条件はどういうものでしたか?」と俺は質問した。
「Lファイナンスのローンは、返済期間が1年でした。返済期間が短いものの、期中の元本返済はありません。期限一括返済という元本返済条件です。借入期間は利息だけ支払えばいいんです」
「ただ、借入期間が1年だと短すぎますよね?」
「短いとは思いました。でも、リードは『1年の返済期限が到来した時に担保不動産に問題がなければ、借換えすることができる』と言いました。その話を聞いた私は、1年自動更新のローンだと認識しました。でも、実際は自動更新のローンではなかったわけです」
自動更新のローンのわけがないが、リードはディーンにそう誤解させるような説明をしたのだろう。
俺は顛末をディーンに確認する。
「何があったのですか?」
「Lファイナンスから借入をして1年が経過して期日がきました。そうしたら、Lファイナンスの担当者のジョーから、『担保不動産の価値が下がっているから、借換えはできない』と言われました」
予想通りだ・・・
可哀そうなディーン・・・
俺はディーンのことが可哀そうになってきた。
<続く>