第7話 連鎖倒産(その3)
文字数 1,707文字
(7) 連鎖倒産 <続き>
俺はエミリーと会った時のことを思い出した。
「エミリーに話を聞きに行った時に、内部調査部がいつ調査に入るかを聞いてきたよね。初めから、内部調査部にジャービット・エクスチェンジの調査をさせるように誘導していたのか・・・」
「その可能性はありますね。投資家にジャービット・エクスチェンジの口座を解約させて、フォーレンダム証券の商品を売り込もうとしていたのかもしれません」
それにしても、余計な風評を立ててくれたものだ。
エミリーを呼びつけて説教するか?
投資サロンに集まる個人投資家に内部調査部の情報をリークして、ジャービット・コインを売らせている。暗号資産は今のところインサイダー取引には該当しないとは言え、卑怯なやり方には違いない。
それにしても、エミリーはXデーをいつと言っているのだろう?
俺が一人で考えていると、スミスが話しかけてきた。
「エミリーに連絡をとって、状況を確認しましょうか?」
確かに、エミリーに確認しておくべきだろう。
投資家をどのように誘導しているか知る必要がある。
「そうだね。どれくらいのジャービット・コイン(金額)を、いつまでに売却させようとしているか聞いてほしい」と俺は言った。
俺が言うと直ぐに、スミスはエミリーの名刺に書いている連絡先に電話し始めた。
他のメンバーも、全員各社の状況を確認するために、電話している。
今日は、内部調査部始まって以来一番騒がしい日になりそうだ。
活気がある、と言って良いかは不明だが・・・。
暗号資産が暴落すると個人投資家が損する。
そうだとしても、俺たちが暗号資産交換業者を助けるというのはちょっと違う。
投資は自己責任だし、国外に流れていく資金を国が補填する必要はない。
今回は、暗号資産の状況を調査してできる範囲で動くことにした。
俺が一人思い耽っていたら、スミスが話しかけてきた。
どうやら、エミリーと電話で話せたらしい。
「部長、エミリーに状況を聞きました。1週間前に投資サロンを開催した際に、エミリーは参加者にジャービット・コインの調査を我々が開始することを伝えたようです」
「やっぱり」
「ただ、その時は誰もが半信半疑だったようです。直ぐにジャービット・コインを売却した投資家はいなかったようですね」
「そりゃそうだ。内部調査部が調査するだけで、ジャービット・コインが値下がりするわけでも、ジャービット・エクスチェンジが破産するわけでもないからね」
「ただ、エミリーが参加者に伝えた内部調査部の調査日が、偶然にもXFTが破産した日だったんです」
「え? そうだっけ?」
「私もエミリーから聞くまで忘れていました。投資サロンの参加者の1人が、偶然重なった内部調査部の調査日とXFTの破産日を何か意味ありげに解釈したようです。その参加者がエミリーの話をインターネットで拡散しました」
「余計なことをする奴がいるんだな・・・」
「そして、ジャービット・コインが無価値になる日を『Xデー』として予想するサイトも出てきました」
「そうすると、エミリーが1週間前に投資サロンで話した内容が、XFTの破産で尾鰭がついて、ジャービット・コインに売りが殺到している。そういうこと?」
「信じ難いことですが、そうみたいです・・・。エミリーは投資サロンの参加者にジャービット・コインを売らせて、自社の投資信託を販売したかったようです。でも、今のところ投資サロンの参加者には投資信託を販売できていません」
「自業自得だなー」
「1週間前の投資サロンで参加者の不安を煽ったから、今日は終日電話が鳴り止まないようです。投資家はエミリーがジャービット・エクスチェンジの内部情報を知っているんじゃないかと思っています。投資家からいろいろ聞かれて、どう対応したらいいのか困っている様子でした」
「余計なことするから、こういうのはことになるんだよ」
そう俺は言ったものの、良い解決策は思いつかない。
結局、その日は暗号資産交換業者の情報収集だけで終わった。
XFTの倒産騒ぎは数日で落ち着くだろう。
現時点の対応としてはマーケットの状況をウォッチする方針でいこう、と俺は考えた。
俺はエミリーと会った時のことを思い出した。
「エミリーに話を聞きに行った時に、内部調査部がいつ調査に入るかを聞いてきたよね。初めから、内部調査部にジャービット・エクスチェンジの調査をさせるように誘導していたのか・・・」
「その可能性はありますね。投資家にジャービット・エクスチェンジの口座を解約させて、フォーレンダム証券の商品を売り込もうとしていたのかもしれません」
それにしても、余計な風評を立ててくれたものだ。
エミリーを呼びつけて説教するか?
投資サロンに集まる個人投資家に内部調査部の情報をリークして、ジャービット・コインを売らせている。暗号資産は今のところインサイダー取引には該当しないとは言え、卑怯なやり方には違いない。
それにしても、エミリーはXデーをいつと言っているのだろう?
俺が一人で考えていると、スミスが話しかけてきた。
「エミリーに連絡をとって、状況を確認しましょうか?」
確かに、エミリーに確認しておくべきだろう。
投資家をどのように誘導しているか知る必要がある。
「そうだね。どれくらいのジャービット・コイン(金額)を、いつまでに売却させようとしているか聞いてほしい」と俺は言った。
俺が言うと直ぐに、スミスはエミリーの名刺に書いている連絡先に電話し始めた。
他のメンバーも、全員各社の状況を確認するために、電話している。
今日は、内部調査部始まって以来一番騒がしい日になりそうだ。
活気がある、と言って良いかは不明だが・・・。
暗号資産が暴落すると個人投資家が損する。
そうだとしても、俺たちが暗号資産交換業者を助けるというのはちょっと違う。
投資は自己責任だし、国外に流れていく資金を国が補填する必要はない。
今回は、暗号資産の状況を調査してできる範囲で動くことにした。
俺が一人思い耽っていたら、スミスが話しかけてきた。
どうやら、エミリーと電話で話せたらしい。
「部長、エミリーに状況を聞きました。1週間前に投資サロンを開催した際に、エミリーは参加者にジャービット・コインの調査を我々が開始することを伝えたようです」
「やっぱり」
「ただ、その時は誰もが半信半疑だったようです。直ぐにジャービット・コインを売却した投資家はいなかったようですね」
「そりゃそうだ。内部調査部が調査するだけで、ジャービット・コインが値下がりするわけでも、ジャービット・エクスチェンジが破産するわけでもないからね」
「ただ、エミリーが参加者に伝えた内部調査部の調査日が、偶然にもXFTが破産した日だったんです」
「え? そうだっけ?」
「私もエミリーから聞くまで忘れていました。投資サロンの参加者の1人が、偶然重なった内部調査部の調査日とXFTの破産日を何か意味ありげに解釈したようです。その参加者がエミリーの話をインターネットで拡散しました」
「余計なことをする奴がいるんだな・・・」
「そして、ジャービット・コインが無価値になる日を『Xデー』として予想するサイトも出てきました」
「そうすると、エミリーが1週間前に投資サロンで話した内容が、XFTの破産で尾鰭がついて、ジャービット・コインに売りが殺到している。そういうこと?」
「信じ難いことですが、そうみたいです・・・。エミリーは投資サロンの参加者にジャービット・コインを売らせて、自社の投資信託を販売したかったようです。でも、今のところ投資サロンの参加者には投資信託を販売できていません」
「自業自得だなー」
「1週間前の投資サロンで参加者の不安を煽ったから、今日は終日電話が鳴り止まないようです。投資家はエミリーがジャービット・エクスチェンジの内部情報を知っているんじゃないかと思っています。投資家からいろいろ聞かれて、どう対応したらいいのか困っている様子でした」
「余計なことするから、こういうのはことになるんだよ」
そう俺は言ったものの、良い解決策は思いつかない。
結局、その日は暗号資産交換業者の情報収集だけで終わった。
XFTの倒産騒ぎは数日で落ち着くだろう。
現時点の対応としてはマーケットの状況をウォッチする方針でいこう、と俺は考えた。