第1話 名探偵を採用しよう!(その1)
文字数 1,855文字
俺の名前はダニエル。ジャービス王国という小さな国の第4王子だ。
俺はジャービス王国で起こった事件を解決するために、探偵をしている。
本当は内部調査部の部長なのだが、探偵の方がやる気が出るから、そういう設定にしている。
***
幾つかの事件を通して俺には分かったことがある。
『俺は名探偵ではない』という事実だ。
まず、推理は惜しいところまでいくのだが当たらない。
推理は当たらなくても事件は解決している。
すなわち、俺の目指すべき探偵スタイルは毛利小五郎(先生)なのだ。
毛利先生は凡人ながらに名探偵としての名声を得ている。
俺の仮説によれば、毛利先生が名探偵たる条件は3つだ。
【条件1】毛利先生は事件を自ら解決することはない。
なぜなら、コナン君(本物の名探偵)が解決するから。
【条件2】毛利先生は事件を解決しなくても名探偵と呼ばれる。
なぜなら、毛利先生は強運を持っているから。
【条件3】毛利先生は相手が格上(名探偵)でも怯まない。
なぜなら、毛利先生は自分のことを100%信じているから。
これを俺に当てはめて考えてみよう。
俺の場合、なんやかんやで事件は解決している。
だから強運は持っている。
何なら、俺の強運は毛利先生を超えているかもしれない。
つまり【条件2】はクリアしている。
次に【条件3】はメンタルのトレーニングだ。
自己啓発セミナーに参加すれば何とかりそうな気がする。
さっそく後で探してみよう。
そうすると、俺が何とかしないといけないのは【条件1】だ。
凡人の俺が名探偵になるためには、本物の名探偵を助手として手に入れなければならない。
役所はチームプレーだ。
俺は内部調査部の部長だ。
部下の名探偵の手柄は、上司の俺の手柄だ!
クズな人間の発想で申し訳ないのだが、俺は戦略を『名探偵を採用しよう』に舵を切った。
(1)名探偵を採用しよう!
名探偵を採用するために、俺は内部調査部のメンバーを招集した。
ついでに、隣の部屋で働いていているジャービット・エクスチェンジの役員も道連れにした。
人数が多い方がアイデアも出るはずだ。
全員が会議室に着席したことを確認した俺は、この会議の趣旨を説明する。
「みんな、今日は集まってくれてありがとう。この会議は内部調査部の将来を左右する、重要な会議だ」
「もったいぶって何なの?」とルイーズが言った。
「じゃあ、言うよ。いいかな?」と俺はメンバーに確認する。
「いいから。早く言って! 忙しいんだから」
今日のルイーズはいつもよりもイライラしている。生理前なのだろうか?
俺は重要事項を伝えるつもりだが、ルイーズに恫喝されて少し萎縮してしまった。
俺は勇気を振り絞ったのだが、緊張して小声になった。
「名探偵を雇いたい・・・」
メンバーを見たが、みんな聞き取れなかったようだ。
「なんて?」ルイーズがメンバーを代表して俺に言った。
「だから、名探偵を雇いたいんだ」
「名探偵?」ルイーズが吐き捨てるように言った。
「そう、名探偵。今までの案件を通して、俺は内部調査部に足りないものが分かったんだ」
「何が足りないんですか?」今度はミゲルが言った。
「推理力・・・」と俺は答えた。
「推理力?」またルイーズが喧嘩腰になってきた。
「そうだよ。推理力だ。例えば、劣後社債の買取りをした第3回調査を思い出してほしい」
「i3で劣後社債を買取った件ね」
「俺たちは、この件は劣後社債を使った高齢者向けの投資詐欺事件だと思っていた。そして怪しいと思っていた証券会社は犯人じゃなかった。次に怪しいと思った運用会社も犯人じゃなかった。最後に疑ったIFAも犯人じゃなかった」
俺はここまで言ってメンバーを見渡した。全員恥ずかしそうな表情をしている。
「動機は違ったし、容疑者3人も外した。俺たちの推理は何も当たらなかった。つまり、俺たちはポンコツ探偵だ」
「ポンコツ探偵・・・」ルイーズがボソッと言った。
「そうだ! 俺たちは正真正銘のポンコツ探偵だ!」
メンバーを見ると全員恥ずかしそうな表情をしている。
「私たちがポンコツ探偵だったとしても、事件は解決していますよね?」ミゲルが言った。
「そう、事件は解決している」と俺は静かに言った。
「じゃあ、何が問題なんですか?」ミゲルが言った。
「もし内部調査部に名探偵がいて、第3回の事件の全容が予め分かっていたら、どうだっただろう?」と俺はメンバーを見た。
「効率的に調査ができたでしょうね」とルイーズは言った。
そうだ、俺が言いたいのは調査の効率性だ。
<続く>
俺はジャービス王国で起こった事件を解決するために、探偵をしている。
本当は内部調査部の部長なのだが、探偵の方がやる気が出るから、そういう設定にしている。
***
幾つかの事件を通して俺には分かったことがある。
『俺は名探偵ではない』という事実だ。
まず、推理は惜しいところまでいくのだが当たらない。
推理は当たらなくても事件は解決している。
すなわち、俺の目指すべき探偵スタイルは毛利小五郎(先生)なのだ。
毛利先生は凡人ながらに名探偵としての名声を得ている。
俺の仮説によれば、毛利先生が名探偵たる条件は3つだ。
【条件1】毛利先生は事件を自ら解決することはない。
なぜなら、コナン君(本物の名探偵)が解決するから。
【条件2】毛利先生は事件を解決しなくても名探偵と呼ばれる。
なぜなら、毛利先生は強運を持っているから。
【条件3】毛利先生は相手が格上(名探偵)でも怯まない。
なぜなら、毛利先生は自分のことを100%信じているから。
これを俺に当てはめて考えてみよう。
俺の場合、なんやかんやで事件は解決している。
だから強運は持っている。
何なら、俺の強運は毛利先生を超えているかもしれない。
つまり【条件2】はクリアしている。
次に【条件3】はメンタルのトレーニングだ。
自己啓発セミナーに参加すれば何とかりそうな気がする。
さっそく後で探してみよう。
そうすると、俺が何とかしないといけないのは【条件1】だ。
凡人の俺が名探偵になるためには、本物の名探偵を助手として手に入れなければならない。
役所はチームプレーだ。
俺は内部調査部の部長だ。
部下の名探偵の手柄は、上司の俺の手柄だ!
クズな人間の発想で申し訳ないのだが、俺は戦略を『名探偵を採用しよう』に舵を切った。
(1)名探偵を採用しよう!
名探偵を採用するために、俺は内部調査部のメンバーを招集した。
ついでに、隣の部屋で働いていているジャービット・エクスチェンジの役員も道連れにした。
人数が多い方がアイデアも出るはずだ。
全員が会議室に着席したことを確認した俺は、この会議の趣旨を説明する。
「みんな、今日は集まってくれてありがとう。この会議は内部調査部の将来を左右する、重要な会議だ」
「もったいぶって何なの?」とルイーズが言った。
「じゃあ、言うよ。いいかな?」と俺はメンバーに確認する。
「いいから。早く言って! 忙しいんだから」
今日のルイーズはいつもよりもイライラしている。生理前なのだろうか?
俺は重要事項を伝えるつもりだが、ルイーズに恫喝されて少し萎縮してしまった。
俺は勇気を振り絞ったのだが、緊張して小声になった。
「名探偵を雇いたい・・・」
メンバーを見たが、みんな聞き取れなかったようだ。
「なんて?」ルイーズがメンバーを代表して俺に言った。
「だから、名探偵を雇いたいんだ」
「名探偵?」ルイーズが吐き捨てるように言った。
「そう、名探偵。今までの案件を通して、俺は内部調査部に足りないものが分かったんだ」
「何が足りないんですか?」今度はミゲルが言った。
「推理力・・・」と俺は答えた。
「推理力?」またルイーズが喧嘩腰になってきた。
「そうだよ。推理力だ。例えば、劣後社債の買取りをした第3回調査を思い出してほしい」
「i3で劣後社債を買取った件ね」
「俺たちは、この件は劣後社債を使った高齢者向けの投資詐欺事件だと思っていた。そして怪しいと思っていた証券会社は犯人じゃなかった。次に怪しいと思った運用会社も犯人じゃなかった。最後に疑ったIFAも犯人じゃなかった」
俺はここまで言ってメンバーを見渡した。全員恥ずかしそうな表情をしている。
「動機は違ったし、容疑者3人も外した。俺たちの推理は何も当たらなかった。つまり、俺たちはポンコツ探偵だ」
「ポンコツ探偵・・・」ルイーズがボソッと言った。
「そうだ! 俺たちは正真正銘のポンコツ探偵だ!」
メンバーを見ると全員恥ずかしそうな表情をしている。
「私たちがポンコツ探偵だったとしても、事件は解決していますよね?」ミゲルが言った。
「そう、事件は解決している」と俺は静かに言った。
「じゃあ、何が問題なんですか?」ミゲルが言った。
「もし内部調査部に名探偵がいて、第3回の事件の全容が予め分かっていたら、どうだっただろう?」と俺はメンバーを見た。
「効率的に調査ができたでしょうね」とルイーズは言った。
そうだ、俺が言いたいのは調査の効率性だ。
<続く>