第9話 国債を発行しよう(その1)

文字数 1,559文字

 (9) 国債を発行しよう

 IFAの3人から聞いた話の信憑性を確かめるため、俺たちは、劣後社債をIFAに売却した人たちと会うことにした。
 これは調査の基本だが、IFAの3人が嘘を付いていないか裏を取る必要がある。

 フォーレンダム証券に社債管理簿を開示してもらい、劣後社債を売却した保有者をランダムに20人ピックアップし、社債管理簿に記載されていた住所に訪問した。
 内部調査部のメンバーで手分けして20人を訪問して話を聞いたところ、IFAの3人が言っていた内容に間違いはないようだった。

 これで確定した。

 どうやらIFAは犯人ではないらしい・・・。

 俺は既に2つ外している。

 ・フォーレンダム証券は犯人ではないらしい・・・。

 ・トルネアセットマネジメントは犯人ではないらしい・・・。

 俺の3度目の推理も当たらなかった。
 ここまで当たらないと、モチベーションが保てない。

 きっとChatGPTに聞いた方が、正しい答えを返してくれそうだ。

 ※ChatGPTは、OpenAIが公開しているチャットボット。人間のテキストを学習し、それに基づいて新しいテキストを生成する人工知能モデルです。


 今後の捜査はChatGPTに任せて、俺は探偵を引退した方がいいのかもしれない・・・。

 俺は既に毛利小五郎の域に達している。
 もちろん、悪い意味で。

 毛利小五郎は俺と同じレベルだったとしても、楽しそうに探偵を続けている。
 事件に対するモチベーションも高い。自分では事件を解決できないのに・・・。

 なぜだ?

 毛利小五郎は凡人なのに名探偵の地位と名声を持つ。
 すなわち、毛利小五郎が持っているのは探偵の能力ではなく、自分を名探偵と周囲に認識させる能力なのではないか。

 俺は今までの事件を通して自分の実力を理解している。
 俺は探偵の才能が無い凡人だ。
 お世辞にも名探偵と言えるレベルにはないだろう。
 凡人の俺が名探偵となるためには、探偵の才能ではなく、毛利小五郎が有する能力なのだと悟った。

 つまり、俺は毛利小五郎を研究する必要があるのだ。
 まず、毛利小五郎の事例を整理してみようと俺は考えた。


 【事例1】毛利小五郎は事件を解決しない。でも、名探偵と言われている。

 なぜなら、コナン君がいるからだ。
 ここから導かれる答は、優秀な助手が必要ということだ。


 【事例2】毛利小五郎はプロフェッショナルとしてのプライドがない。

 プライドだけでは事件は解決できない。
 毛利小五郎は、事件は運で解決できると信じている。
 だから、彼にはプライドが必要ないのだ。


 【事例3】毛利小五郎は相手が格上でも怯まない。

 霊能力がなくても霊能力者を名乗っている奴は多い。
 本当の霊能力者が出てきたら、偽霊能力者は怯むはずだ。
 毛利小五郎は本当の名探偵が出てきても怯まない。
 なぜなら『俺の方が名探偵だ!』と信じているからだ。
 根拠のない自信を継続できる強い意志が必要なのだろう。


 すなわち、凡人が名探偵になるためには以下の3つが必要だ。

 ①凡人は名探偵を雇う必要がある。
 ②凡人は運を味方にする必要がある。
 ③凡人は根拠のない自信を持ち続ける必要がある。

 俺はこの3つが満たされれば、凡人は名探偵に昇華することを理解した。

 今まで俺の推理が当たらなくても事件は解決している。だから俺には運(上記②)はある。
 すなわち、今の俺に欠けているものは、名探偵の助手(上記①)と根拠のない自信(上記③)だ。

 最近は推理が当たらないので弱気になっていたように思う。凡人が名探偵になるためには、弱気は禁物だ。
 つまり、俺は『弱気を見せてはいけない』を常に心がけながら行動していく必要があるのだ。

 俺は凡人が名探偵になるための方法を見つけたので、希望の光が見えたような気がした。

 <続く>
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登場人物紹介

ダニエル:ジャービス王国の第4王子。総務大臣。

ルイーズ:総務省 内部調査部 課長代理

ジェームス:ジャービス王国第1王子。軍本部 総司令

チャールズ:ジャービス王国の第2王子。内務大臣。

アンドリュー:ジャービス王国の第3王子。外務大臣。

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