第6話 底地を買取ろう!(その2)

文字数 1,794文字

(6)底地を買取ろう! <続き>

※本話では紛らわしい名前がいくつも登場します。間違わないように書いているつもりですが、間違っていたらすいません。

 俺はルイーザという聞き覚えのない名前をチャールズから聞いた。
 ルイーズは俺の隣にいる。だがルイーズはチャールズの言葉に反応していない。
 だから、チャールズはルイーズではなくルイーザと言ったのだ!

 それに、ルイーズが目の前にいるのに、ルイーズの予定をスミスに聞くのは常識的におかしい。

 つまり・・・、
 俺の推理によればルイーザとルイーズは別人だ!

 俺がルイーザのことを考えているとスミスは「多分、参加すると思います」とチャールズに答えた。俺は衝撃の事実を知る。

―― スミスはルイーザを知っている!

 俺は状況を悟った。今のところルイーザを知っているのはスミスとチャールズの二人だ。
 今この会議スペースには4人。もし、ルイーズが知っていたらルイーザを知らないのは俺だけになってしまう。俺を無視して3人でルイーザの話で盛り上がるだろう。
 そうしたら、すっごい疎外感が・・・

 俺が仲間外れにはらないために把握すべきことは・・・

―― ルイーズはルイーザを知っているのだろうか?

 ルイーズはいつも無表情だから何を考えているか分かりにくい。
 ルイーズはルイーザを知っているかもしれないし、ルイーザを知らないかもしれない。
 どっちだ?

 俺はルイーズにカマを掛けることにした。

「今日、ルイーザに会った?」と俺は小声でルイーズに質問する。

「何を言ってるの? さっきまで会議スペースで話していたじゃない。ボケた?」

 さすがにその言い方はないと思う。
 酷い言い方をされた俺だが、ルイーズは重要なヒントを俺にくれたようだ。

 ルイーズはさっきまで会議スペースでルイーザと話していたらしい。
 その会議スペースに俺もいた。だから、俺も今日ルイーザに会っている。

 俺は推理する。つまり・・・

―― ルイーザは内部調査部の誰かだ!

 俺はさらに推理する。
 冒頭、スミスのことを無視して話始めたチャールズが、男性の慰労会の参加の可否を聞いてくるはずはない。内部調査部に女性は2人、ルイーズとロイだ。
 ルイーズはルイーザではないのだから、自ずと答えは導かれる。

―― ルイーザはロイだ!

 はーん、そういうことか。俺はさらに推理を進める。

 短い方がニックネームだろうから、ロイはルイーザのニックネームなんだな。
 いや、逆かな?
 ルイーザがロイのニックネームか?

 俺は自分の推理が正しいかを確かめるため、再びルイーズに小声で質問する。推理小説の解決編みたいに。

「なんでルイーザって言うの?」
 念のために説明しておくと、ルイーザがロイじゃなかったら恥ずかしい。だから、俺はわざとロイではなくルイーザと質問した。

「逆じゃない? なんでロイって言うのだったら分かるけど」

「ごめん、間違えた。逆だった。なんで?」

「ルイーザ(Louisa)のニックネームは『ルー(Lu)』が多いんだけど、子供の時に周りにいっぱい『ルー』がいたんだって。私(Louise)も『ルー』だしね。だから『ロイ』にしたんだって」

「それにしても、男の子っぽいニックネームだね」

「大きかったしショートカットだったから、違和感はなかったらしいよ。それで今もロイを使ってるんだって」

「へー、そうなんだ」

 見事にルイーザの謎を解決した俺。

―― 俺の推理も捨てたもんじゃないな・・・

 見事に事件を解決した俺。事件解決に満足した俺は、内部調査部に戻ろうかと思って席を立った。
 チャールズの執務室から出ようとしたら、ルイーズが言った。

「どこいくの?」

 どこにいくって? 内部調査部に決まってるじゃないか!
 だって、事件を解決した探偵は去っていくものだろう?

 当のルイーズは俺を睨んでいる。何か悪いことをしたのだろうか?

 しかたないから俺はルイーズに「どうしたの?」と尋ねた。

「そこち」とルイーズは小声で俺に言う。

 そこち(底地)?

―― あ、忘れてた!

 俺は底地の買取資金を確保するために、チャールズに相談にきたことを思い出した。
 気まずいから「ちょっとトイレ」と言ってチャールズの執務室を出た後、俺は外で2~3分待ってから執務室に戻った。

 執務室に戻ってきた俺は、気を取り直して底地買取資金の調達のために、チャールズに説明することにした。


<続く>
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登場人物紹介

ダニエル:ジャービス王国の第4王子。総務大臣。

ルイーズ:総務省 内部調査部 課長代理

ジェームス:ジャービス王国第1王子。軍本部 総司令

チャールズ:ジャービス王国の第2王子。内務大臣。

アンドリュー:ジャービス王国の第3王子。外務大臣。

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