第7話 銀行はシロかクロか(その1)
文字数 1,554文字
(7) 銀行はシロかクロか
ディーンの話を聞いて内部調査部に戻った俺は、残り4人についても個別に事情を聞くことにした。1人だけだと、不動産会社の手口が確かめられないからだ。
事情を聞いた4人からも、不動産会社が使った手口はディーンの話と同じような内容だった。
ディーンを含めた被害者5人に共通していることは、高収入で資産背景があることだった。
そして、5人全員が不動産に詳しくなかった。
つまり、不動産会社がカモにしやすいターゲットということだ。
共通している不動産販売方法は、まず節税目的でLシリーズの1部屋を買わせる。そして、個人投資家が節税効果を実感した後、さらなる節税対策としてLシリーズの追加購入を勧める。
Lシリーズを何件か販売した後、個人投資家に給与収入で返済できる以上の借入をさせて、借入金の元利金返済が滞るように仕向ける。
銀行からの借入金の元利金返済が延滞した段階で、Lファイナンスが登場する。
銀行借入の返済をするために、Lファイナンスは譲渡担保で借入期間1年間の期限一括返済の融資を個人投資家に提案する。5人の個人投資家は1年後の返済期日に借換えができると思っていたようだ。
そして、Lファイナンスは1年後の返済期日に借入金を借換えさせない。個人投資家は借入金を全額一括返済できないから、Lファイナンスは担保不動産を安値でレンソイス不動産に売却する。
これが5人に共通した取引の流れだった。
5人の話に共通して出てきたのは、レンソイス不動産のリード、ロワール銀行のスティーブン、偽造業者のジョン、Lファイナンスのジョーの4人だ。
ただし、不動産会社のリードがLシリーズの1件目の販売から関わっていないケースもあった。これは当然だろう。Lシリーズの販売件数は多いから、一人で全ての販売をしているわけがない。
個人投資家にLシリーズの1件目をリードが販売していなくても、書類偽造を持ちかける時にはリードが登場していた。
このことから、書類偽造については、レンソイス不動産の営業部の全員が関わっているわけではなさそうだ。
偽造業者のジョンは、毎回違う携帯電話の番号でやり取りしているようだ。
5人に聞いた携帯電話に内部調査部のメンバーが掛けてみたが、携帯番号は既に使われていなかった。短期間で携帯電話番号を変更しているのだろう。
総務省で全ての電話番号の契約情報を調べたものの、でたらめな情報しか出てこなかった。跡が付かないように、電話屋から携帯番号を入手しているのだと思う。
そもそも、こいつのジョンという名前も本名かどうかも分からない。
レンソイス不動産のリードとLファイナンスのジョーはグループ会社なので、お互いに協力して一連の取引をしていると考えて良いだろう。
一方、ロワール銀行のスティーブンは、一連の取引に関わっているのだろうか?
俺たちが話を聞いた個人投資家は5人だけなので、たまたま同じ担当者だった可能性がある。
それに、全てのローン審査書類と収入証明が偽造されているわけではない。
ディーンの場合は、借入が1億JDを超えた段階から偽造していたらしい。つまり、ロワール銀行の個人投資家への融資のほとんどは書類の偽造は行われていない。総融資件数のうち、書類を偽造してローン申請した割合は低いはずだ。
全ての不動産投資ローンをスティーブンが担当することは現実的ではないから、ロワール銀行が個人投資家に融資する際にはスティーブン以外の担当者も関わっているはずだ。
ロワール銀行のスティーブンは、虚偽の情報でローン申請されていることを、知っているかもしれないし、知らないかもしれない。
どちらだろう?
俺の推理は外れることが多い。だから、メンバーにも聞いてみることにした。
<続く>
ディーンの話を聞いて内部調査部に戻った俺は、残り4人についても個別に事情を聞くことにした。1人だけだと、不動産会社の手口が確かめられないからだ。
事情を聞いた4人からも、不動産会社が使った手口はディーンの話と同じような内容だった。
ディーンを含めた被害者5人に共通していることは、高収入で資産背景があることだった。
そして、5人全員が不動産に詳しくなかった。
つまり、不動産会社がカモにしやすいターゲットということだ。
共通している不動産販売方法は、まず節税目的でLシリーズの1部屋を買わせる。そして、個人投資家が節税効果を実感した後、さらなる節税対策としてLシリーズの追加購入を勧める。
Lシリーズを何件か販売した後、個人投資家に給与収入で返済できる以上の借入をさせて、借入金の元利金返済が滞るように仕向ける。
銀行からの借入金の元利金返済が延滞した段階で、Lファイナンスが登場する。
銀行借入の返済をするために、Lファイナンスは譲渡担保で借入期間1年間の期限一括返済の融資を個人投資家に提案する。5人の個人投資家は1年後の返済期日に借換えができると思っていたようだ。
そして、Lファイナンスは1年後の返済期日に借入金を借換えさせない。個人投資家は借入金を全額一括返済できないから、Lファイナンスは担保不動産を安値でレンソイス不動産に売却する。
これが5人に共通した取引の流れだった。
5人の話に共通して出てきたのは、レンソイス不動産のリード、ロワール銀行のスティーブン、偽造業者のジョン、Lファイナンスのジョーの4人だ。
ただし、不動産会社のリードがLシリーズの1件目の販売から関わっていないケースもあった。これは当然だろう。Lシリーズの販売件数は多いから、一人で全ての販売をしているわけがない。
個人投資家にLシリーズの1件目をリードが販売していなくても、書類偽造を持ちかける時にはリードが登場していた。
このことから、書類偽造については、レンソイス不動産の営業部の全員が関わっているわけではなさそうだ。
偽造業者のジョンは、毎回違う携帯電話の番号でやり取りしているようだ。
5人に聞いた携帯電話に内部調査部のメンバーが掛けてみたが、携帯番号は既に使われていなかった。短期間で携帯電話番号を変更しているのだろう。
総務省で全ての電話番号の契約情報を調べたものの、でたらめな情報しか出てこなかった。跡が付かないように、電話屋から携帯番号を入手しているのだと思う。
そもそも、こいつのジョンという名前も本名かどうかも分からない。
レンソイス不動産のリードとLファイナンスのジョーはグループ会社なので、お互いに協力して一連の取引をしていると考えて良いだろう。
一方、ロワール銀行のスティーブンは、一連の取引に関わっているのだろうか?
俺たちが話を聞いた個人投資家は5人だけなので、たまたま同じ担当者だった可能性がある。
それに、全てのローン審査書類と収入証明が偽造されているわけではない。
ディーンの場合は、借入が1億JDを超えた段階から偽造していたらしい。つまり、ロワール銀行の個人投資家への融資のほとんどは書類の偽造は行われていない。総融資件数のうち、書類を偽造してローン申請した割合は低いはずだ。
全ての不動産投資ローンをスティーブンが担当することは現実的ではないから、ロワール銀行が個人投資家に融資する際にはスティーブン以外の担当者も関わっているはずだ。
ロワール銀行のスティーブンは、虚偽の情報でローン申請されていることを、知っているかもしれないし、知らないかもしれない。
どちらだろう?
俺の推理は外れることが多い。だから、メンバーにも聞いてみることにした。
<続く>