第6話 底地を買取ろう!(その1)
文字数 1,980文字
(6)底地を買取ろう!
俺は底地の買取りのために新会社を作ろうと思ったのが、よくよく考えてみると、内部調査部には不動産の競売物件を買取る会社(i4)が既にある。i4の社長はガブリエルがしていて、ガブリエルは底地の買取りにも興味をもっているから今回の件を任せるのに適任だ。だから、i4を底地買取りに利用することにした。
※詳しくは『第4回活動報告:不正融資を取り締まれ』をご覧下さい。
i4はジャービス国内の競売物件の調査や販売で不動産仲介会社と取引している。だから、俺たちが買取対象とする底地についても、取引のある不動産仲介会社に探してもらうことにした。
念のために説明しておくと、俺たちが買取対象とする底地はグロス利回り(物件費用控除前の利回り)が10%以上のものとする。
※不動産の物件利回りをグロス利回り、ネット利回りという場合があり、それぞれ以下のように計算します。
グロス利回り(年率)=年間賃料(地代)÷物件価格
ネット利回り(年率)=(年間賃料―年間賃貸費用等)÷物件価格
実勢価格が路線価より高すぎると物件利回りが低くなりすぎる。ジャービス王国の地代は固定資産税の3倍に設定されるケースが多い。固定資産税は路線価の約2%であるから、地代は路線価の6%だ。
民間企業の物件純収益は地代から固定資産税等を差引いた金額だから、民間企業の物件利回りはネット利回りで判断するのが正しい。しかし、俺たちは総務省(ジャービス王国)だから固定資産税の支払いは費用にならない。だから、i4の物件純収益は地代、物件利回りはグロス利回りで判断するのが妥当だ。
なお、底地の価格は借地権割合に影響されるから、借地権割合によって底地投資の物件利回りは変わってくる。例えば、路線価と実勢価格が等しい場合、借地権割合50%(底地の価値が土地全体の50%)のグロス利回りは12%(=6%÷50%)、借地権割合70%(底地が価値が土地全体の30%)の場合は20%(=6%÷30%)だ。
ちなみに、取得する底地の場所(都会、地方)と借地権割合の関係を示したものは図表10-17のような感じだ。
【図表10-17:借地権割合と底地利回り】
※ここでは、都会の実勢価格=路線価×2、地方の実勢価格=路線価、固定資産税=路線価×2%、地代=固定資産税×3として計算しています。
俺たちが取得する底地のグロス利回りは10%以上としているから、都会の場合は借地権割合が70%以上の底地、地方の場合は借地権割合が40%以上の底地を取得すればいいことになる。
今まさにガブリエルが中心となって買取り対象となる底地をジャービス王国内からかき集めている最中だ。その間に、俺はチャールズにお金の相談をしにいくことにした。
***
俺はルイーズ、スミスと内務省に訪問した。訪問目的はチャールズに底地の買取資金を出してもらうためだ。
俺たちが執務室に入ると、鼻歌まじりで机上の書類を確認しているチャールズがいた。
―― めずらしく機嫌がいいな・・・
ここ最近は困った顔か疲れた顔をしているチャールズしか見ていなかったので、機嫌のいいチャールズを久しぶりに見た気がする。俺は本題(お金の相談)の前にチャールズに尋ねた。
「何かいいことあった?」
「いや、別にないけど。今日はルイーズと一緒なんだね」
スミスが忘れられているのだが、そこは大した問題ではない。俺は話を続ける。
「いやー、鼻歌なんて珍しいと思ってさ。通貨危機になったり、銀行が破綻しそうになったりしていたから、心に余裕のないチャールズ兄さんしか見ていなかったような気がして」
「危機は過ぎ去ったから、心に余裕が生まれたんじゃないかな?」
「そんなもんかね」
「そういえば、来週のパーティー、内部調査部は全員参加するの?」
―― パーティー?
何のことかすっかり忘れている俺に「国王主催の慰労会のことですよ」とスミスが教えてくれた。そういえば、通貨危機と銀行破綻を食い止めた功労者を労うために慰労会をしようと国王が言い出したのを思い出した。
通貨危機のときに俺たちがかなり稼いだから予算は潤沢にある。それに、たまには職員に還元する機会も必要だ。今回の慰労会は主に内務省と総務省を対象としているから、内部調査部のメンバーも慰労会に呼ばれている。
「どうだったかな? スミス、聞いてる?」俺は内部調査部のメンバーが慰労会に参加するかどうかを把握していなかったから、スミスに聞いた。
「ミゲルは警察の捜査協力でどうなるか分かりません。でも、他のメンバーは急ぎの案件が入っているわけではないから参加できると思いますよ」
「じゃあ、ルイーザも来るのかな?」チャールズはスミスに聞いている。
―― ルイーザ? 誰それ?
俺の知らない名前が出てきた。
ルイーズの聞き間違いじゃないよね?
<続く>
俺は底地の買取りのために新会社を作ろうと思ったのが、よくよく考えてみると、内部調査部には不動産の競売物件を買取る会社(i4)が既にある。i4の社長はガブリエルがしていて、ガブリエルは底地の買取りにも興味をもっているから今回の件を任せるのに適任だ。だから、i4を底地買取りに利用することにした。
※詳しくは『第4回活動報告:不正融資を取り締まれ』をご覧下さい。
i4はジャービス国内の競売物件の調査や販売で不動産仲介会社と取引している。だから、俺たちが買取対象とする底地についても、取引のある不動産仲介会社に探してもらうことにした。
念のために説明しておくと、俺たちが買取対象とする底地はグロス利回り(物件費用控除前の利回り)が10%以上のものとする。
※不動産の物件利回りをグロス利回り、ネット利回りという場合があり、それぞれ以下のように計算します。
グロス利回り(年率)=年間賃料(地代)÷物件価格
ネット利回り(年率)=(年間賃料―年間賃貸費用等)÷物件価格
実勢価格が路線価より高すぎると物件利回りが低くなりすぎる。ジャービス王国の地代は固定資産税の3倍に設定されるケースが多い。固定資産税は路線価の約2%であるから、地代は路線価の6%だ。
民間企業の物件純収益は地代から固定資産税等を差引いた金額だから、民間企業の物件利回りはネット利回りで判断するのが正しい。しかし、俺たちは総務省(ジャービス王国)だから固定資産税の支払いは費用にならない。だから、i4の物件純収益は地代、物件利回りはグロス利回りで判断するのが妥当だ。
なお、底地の価格は借地権割合に影響されるから、借地権割合によって底地投資の物件利回りは変わってくる。例えば、路線価と実勢価格が等しい場合、借地権割合50%(底地の価値が土地全体の50%)のグロス利回りは12%(=6%÷50%)、借地権割合70%(底地が価値が土地全体の30%)の場合は20%(=6%÷30%)だ。
ちなみに、取得する底地の場所(都会、地方)と借地権割合の関係を示したものは図表10-17のような感じだ。
【図表10-17:借地権割合と底地利回り】
※ここでは、都会の実勢価格=路線価×2、地方の実勢価格=路線価、固定資産税=路線価×2%、地代=固定資産税×3として計算しています。
俺たちが取得する底地のグロス利回りは10%以上としているから、都会の場合は借地権割合が70%以上の底地、地方の場合は借地権割合が40%以上の底地を取得すればいいことになる。
今まさにガブリエルが中心となって買取り対象となる底地をジャービス王国内からかき集めている最中だ。その間に、俺はチャールズにお金の相談をしにいくことにした。
***
俺はルイーズ、スミスと内務省に訪問した。訪問目的はチャールズに底地の買取資金を出してもらうためだ。
俺たちが執務室に入ると、鼻歌まじりで机上の書類を確認しているチャールズがいた。
―― めずらしく機嫌がいいな・・・
ここ最近は困った顔か疲れた顔をしているチャールズしか見ていなかったので、機嫌のいいチャールズを久しぶりに見た気がする。俺は本題(お金の相談)の前にチャールズに尋ねた。
「何かいいことあった?」
「いや、別にないけど。今日はルイーズと一緒なんだね」
スミスが忘れられているのだが、そこは大した問題ではない。俺は話を続ける。
「いやー、鼻歌なんて珍しいと思ってさ。通貨危機になったり、銀行が破綻しそうになったりしていたから、心に余裕のないチャールズ兄さんしか見ていなかったような気がして」
「危機は過ぎ去ったから、心に余裕が生まれたんじゃないかな?」
「そんなもんかね」
「そういえば、来週のパーティー、内部調査部は全員参加するの?」
―― パーティー?
何のことかすっかり忘れている俺に「国王主催の慰労会のことですよ」とスミスが教えてくれた。そういえば、通貨危機と銀行破綻を食い止めた功労者を労うために慰労会をしようと国王が言い出したのを思い出した。
通貨危機のときに俺たちがかなり稼いだから予算は潤沢にある。それに、たまには職員に還元する機会も必要だ。今回の慰労会は主に内務省と総務省を対象としているから、内部調査部のメンバーも慰労会に呼ばれている。
「どうだったかな? スミス、聞いてる?」俺は内部調査部のメンバーが慰労会に参加するかどうかを把握していなかったから、スミスに聞いた。
「ミゲルは警察の捜査協力でどうなるか分かりません。でも、他のメンバーは急ぎの案件が入っているわけではないから参加できると思いますよ」
「じゃあ、ルイーザも来るのかな?」チャールズはスミスに聞いている。
―― ルイーザ? 誰それ?
俺の知らない名前が出てきた。
ルイーズの聞き間違いじゃないよね?
<続く>